ダイハツ ムーヴ、ムーヴ カスタム試乗評価 軽自動車の枠を超えた? 高い安全性能を得ながら、低燃費&低価格を実現したムーヴの実力を評価する!
もはやフルモデルチェンジともいえる、超大幅マイナーチェンジ
ダイハツ ムーヴが、一般的なマイナーチェンジとは異なる大幅な改良を受けて登場した。ダイハツではビッグマイナーチェンジと呼んでいるが、正にそんな感じの変更だ。
基本プラットホームやパワートレーンの型式が変わらないのでマイナーチェンジなのだが、実質的にはフルモデルチェンジと言っても良いくらいに大幅な改良が加えられた。
フロント回りを中心に外観デザインを変更して空力特性向上させたほか、インテリアでもセンターメーターを運転席前メーターに変更するようなデザイン変更を実施している。
ただ、インパネデザインについてはセンターメターのほうが個性的だったし、さらにいえば、旧型ムーヴのほうがダイナミックなデザインでもっと良かった。
ムーヴのメカニズムの変更のポイントは、イーステクノロジーの進化で、今回はCVTにサーモコントローラーを採用してエンジンとCVTの温度管理を最適化し、燃焼効率や動力伝達効率を高めて燃費を向上させた。ほかにもさまざまな燃費向上技術を盛り込むことで、自然吸気仕様エンジンは29.0km/Lを達成。先にフルモデルチェンジを受けたばかりのワゴンRの燃費をわずかながら上回った。
2011年に、ミライースが達成した30.0km/Lの燃費を、わずか3カ月ほどでアルトエコが0.2km/L上回ったことヘの意趣返しをするかのように、今回はムーヴがワゴンRを0.2km/L上回ってきた。
燃費だけじゃない! は、本当だった!!
燃費よりも大きな進化だと思うのは、足回りのレベルアップだ。全車にスタビライザーを装着するなどしてシャシーの改良し、操縦安定性を大きく向上させている。さらに、スマートアシストと呼ぶ最新の安全装備を軽自動車にも採用してきたことも大きく注目される。
スマートアシストは5万円という低価格で提供されるほか、車両本体価格も引き下げられた。いろいろな意味で大きく変わったのが今回のムーヴだ。
新型ムーヴを走らせると、すぐに走りが良くなったのが分かる。ハンドルを切ったときの操縦安定性が確実に向上しているからだ。新型ムーヴでは全車にローダウンサスペンションを採用した上に、フロントスタビライザー(2WD車はリヤも)を装着したことで、クルマの挙動が安定して落ち着いた感じの走りを実現している。
スラロームのように左右にハンドルを切る走りを試すと、クルマの挙動がとても安定しているのが特に良く分かる。
これまでのムーヴは、乗り心地の良さなどの面で評価されるクルマだったが、操縦安定性やスポーティさという点では競合車に比べて物足りない面もあった。足回りに関してはそれが一気に解消されたのが今回のモデルといっても良い。
また、静粛性の向上もポイントだ。防音材の最適配置やスターターの改良などによって、静粛性のレベルも確実に向上した。最近の軽自動車ではN-ONEの静粛性が高いレベルに達しているが、N-ONEの静粛性はターボ車が中心。自然吸気エンジンの搭載車についてはムーヴのほうが静かに感じられた。
新型ムーヴでは、燃費向上のためにギア比をハイギアード化している。これはある意味で加速の鈍さに通じる要素でもある。現実に、発進加速などは多少なりとも影響を受けているはずだが、実際に走らせたときにそれが感じられるほどではなかった。
副変速機付きのCVTを採用するワゴンRに比べたら、ムーヴのほうが出足がおとなしい感じになるのだが、ムーヴの滑らかな加速フィールもなかなか良い。足回りの良さも含めた走りの質感では、軽自動車の中でもトップといえる水準にあるのが新型ムーヴだ。
ダイハツ ムーヴを買うなら、スマートアシストは絶対おすすめ!
話題のスマートアシストは5万円という低価格で、横滑り防止装置のVSCも一緒に手に入るようになった。この安さは軽自動車用の安全装備としてとても良い。
ただ、対応する速度域が低いのはやや残念なところ。前方の障害物を感知して停止できる速度がわずか20km/hにとどまっている。スバルのアイサイトやボルボのシティ・セーフティ、up!のシティ・エマージェンシー・ブレーキなど、各社のシステム一様に相対速度が時速30km/hまでなら停止できるシステムを採用していて、今後は時速60km/hまで対応しようというのが自動ブレーキの流れだ。
ムーヴのスマートアシストでは、相対速度が15km/hまでなら停車でき、30km/hまでなら減速して被害を軽減するが、それ以上の速度域になると作動しない。もうひと頑張りしてほしいところだ。
このほか、誤発進を抑制する機能や前車発進お知らせ機能なども備えて5万円の価格だから、安いのは間違いない。かつては横滑り防止装置のVSCだけで6万3000円もした時代があった。だから、ムーヴを買うならスマートアシストを必ず装着するようにしたい。
ムーヴ カスタムの仕上がりもチェックする!
ムーヴカスタムもビッグマイナーチェンジによる変更の中身は、基本的に共通だ。内外装のデザインを変更したのを始め、自然吸気エンジンの搭載車はクラストップとなる29.0km/Lの低燃費を実現し、ローダウンサスペンションやスタビライザーの採用で操縦安定性を高め、軽自動車初の追突軽減ブレーキを低価格で採用(ターボ車を除く)するなどの改良を実施した。
外観デザインがエアロバンパーやルーフスポイラーなどの採用で、標準系とは明確に差別化されているのは従来と変わらない。スポーティな差別化された外観のモデルを選ぶのが、今の軽自動車ユーザーの大勢だ。
ムーヴカスタムで新旧を比べると、空力特性やエンジンルーム内の空気の流れに配慮したというフロント回りのデザインはかなり変わった印象がある。LEDの数を増やしたテールランプなども新鮮な印象を与える。
センターメーターを廃止して一般的な運転席前メーターを採用したインテリアなどと合わせ、マイナーチェンジとは思えない変更が行われている。センターメーターに長所と短所があって、単純にどちらが良いとはいえないが、デザイン的な特徴が薄れた感じがあるのは確かだ。
搭載エンジンは自然吸気仕様のほかにターボ仕様の設定もあるが、パワートレーンの改良は自然吸気仕様エンジンの燃費向上を中心にしたもので、動力性能については基本的にこれまでのモデルと変わらない。
より安定したフットワークをもつターボ車、ムーヴカスタムRS
ターボエンジンの元気の良さは相変わらずで、軽自動車のボディに対しては余裕十分というか過剰といえるくらいの性能。特にターボによるトルクの余裕が大きいので、いろいろな走りに対応できる。
ターボ車のRSには、スポーツサスペンションと15インチタイヤが装着されていて、やや硬めでよりしっかりした乗り味を感じさせる。ターボ車以外もこれくらいの硬さでちょうど良いようにも思うが、15インチタイヤを装着すると最小回転半径がやや大きくなるので、単純に広くお勧めするわけにもいかない。
高速走行時にレーンチェンジしたときの安定感も格段に良くなった。高速道路を走る機会の多いユーザーにはRSがお勧めだ。
ただし、残念なのはターボ車にはスマートアシストの設定がないこと。スマートアシスト用のセンサーの装着位置が、インタークーラー用の空気取り入れ口と重なるため、両方を同時に設定できなかったのだ。VSCなどは装着できるのだが、スマートアシストが付かないことを考えると、なかなか微妙な選択になる。
次回以降、フルモデルチェンジのときには、ターボ車もスマートアシストに対応できるはずなので、次期モデルに期待しておこう。
自然吸気エンジンのXリミテッドは、RSに比べると柔らかめながら、従来のモデルに比べると格段に安定感の高まった足回りが採用されている。差別化された外観デザインを含め、ムーヴカスタムのXリミテッドSAを選択する意味は十分にある。
ダイハツ ムーヴ、ムーヴカスタム価格、スペックなど
<ダイハツ ムーブ/ムーブ カスタム価格>
・L 2WD 1,070,000円 4WD 1,191,000円
・L“SA”2WD 1,130,000円 4WD 1,251,000円
・X 2WD 1,200,000円 4WD 1,321,000円
・X“SA” 2WD 1,250,000円 4WD 1,371,000円
・カスタム X 2WD 1,300,000円 4WD 1,421,000円
・カスタムX“SA” 2WD 1,350,000円 4WD 1,471,000円
・カスタム X Limited2WD 1,420,000円 4WD 1,541,000円
・カスタム X Limited SA 2WD 1,470,000円 4WD 1,591,000円
・カスタム RS 2WD 1,430,000円 4WD 1,551,000円
代表グレード | ダイハツ ムーヴXリミテッドSA スペック |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3,395×1,475×1,620mm |
ホイールベース[mm] | 2,455mm |
トレッド前/後[mm] | 1,305/1,295 |
車両重量[kg] | 820kg |
総排気量[cc] | 658cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 52PS(38Kw)/6800rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 60(6.1/5,200rpm |
ミッション | CVT |
タイヤサイズ | 155/65R14 |
JC08モード燃費 | 29.0km/L |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 1,470,000円 |
発売日 | 2012/12/20 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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