乗り心地は、これまた格段に良くなっている。N-BOXの走りは、高めの重心高を意識して硬めの足回りで突っ張り、アンダーステア傾向を強めにして車高が高く高重心であることから起こる横転のリスクを下げていた。

これに対して、N-BOXスラッシュ は、ルーフを下げ全高が下がっているので重心高が低くなった。このためサスペンションが無理に突っ張らなくても良くなる。さらに、ダンパーの直径を拡大。専用にチューニングされたサスペンションにより、快適な乗り心地が実現されているのだ。

チョップドルーフ化により、全高が100mm低くなったことに加えて、サスペンションも10mmのローダウンを図った。低重心化による操縦安定性の向上も大きい。これまでのNシリーズに比べ、ひとクラス上のクルマに乗っているような感覚である。

　N-BOXスラッシュは、インテリアにもいろいろな工夫が凝らされている。インテリアカラーは明るいベージュ系のスポーティなブラック系を基本に、ボディカラーに応じて３種類のカラーパッケージが設定されている。今回は試乗できなかったが、真っ赤なシートなどもおしゃれで良いと思う。

後席のシートは、中央にアームレストを備えるほか、前後190mmのロングスライドが可能。背もたれは4段階にリクライニングできる。また背もたれを前方に倒せば座面がダイブダウンして、フラットなラゲッジスペースが生まれるし、座面部分をチップアップさせて背の高い荷物を積むこともできる。前後にスライドさせたどの位置でもチップアップが可能だ。

　N-BOXスラッシュの注目点は、オーディオだ。上級グレードに標準装備されるサウンドマッピングシステムは、前後席の左右に8個のスピーカーを配置し、前席中央の足元に17cmのサブウーハーを配置する。これによる臨場感にあふれるサウンドはすごい。静かな室内なので、車内で聞いているとは思えないくらいクリアなサウンドが体験できた。お勧めは前述のデッドニングをディーラーオプションで装着すれば、さらに良い音になる。

N-BOXスラッシュは、サイズこそ軽自動車 の規格内に収まっているが「小さな高級車」といえるような存在である。エンプティ・ネスターと呼ばれる子供が巣立った後の年配のユーザーなど、大きなクルマは必要としないが、高品質クルマが欲しいと考える人にぴったりだ。

ファンなクルマとして、若いユーザーを意識したクルマながら、軽自動車としては高めの価格が設定されていることも含め、若いユーザーよりも年配のユーザーのほうがしっくりくるクルマではないだろうか。やや高めの価格だが、N-BOXスラッシュは価格に見合ったとても良いクルマだ。年齢層問わず、多くの人に勧めたい軽自動車だ。

■ホンダNボックススラッシュ価格
・G FF 1,380,000円　4WD 1,500,000円
・G・Aパッケージ FF 1,460,000円　4WD 1,580,000円
・G・ターボAパッケージ FF 1,590,000円　4WD 1,710,000円
・X FF 1,650,000円　4WD 1,770,000円
・X・ターボパッケージ FF 1,760,000円　4WD 1,880,000円

代表グレード	ホンダ N-BOX Xグレード
ボディサイズ［mm］（全長×全幅×全高）	3395×1475×1670mm
車両重量［kg］	930kg
総排気量［cc］	658cc
エンジン最高出力［ps(kw)/rpm］	58ps(43kw)/7300rpm
エンジン最大トルク［kg-m(N・m)/rpm］	6.6kg-m(65N・m)/4700rpm
ミッション	CVT
JC08モード燃費［km/l］	25.8km/l
定員［人］	4人
税込価格［円］	1,650,000円
発売日	2014/12/22
レポート	松下 宏
写真	ホンダ