日産e-NV200試乗記・評価 バンベースのEVとは言わせない! 名前は同じでも、まったくの別物!!
■リチウムイオン電池搭載で、プラットフォームはもはや別物へと進化
日産e-NV200ワゴン って、EV(電気自動車) といっても、所詮、商用バン ベースでしょ。と、最初からちょっとナメていた。
試乗車したのは、日産e-NV200のワゴン(5人乗り)。ワゴン といっても、基本的なハードはバン と共通。シートや内外装材が高級感になっていたり、リヤシートや装備がやや豪華になっているくらい。商用バンベースでは、最近のよく出来たミニバン とは比べ物にならないだろうという先入観もあった。
そんな状況で日産e-NV200に乗る。もはや、1分も走らないうちに早速反省することになる。日産e-NV200のパワーユニットは、同じEVであるリーフ と同じものが使われている。109ps&254Nmというスペックで、リチウムイオン電池容量は24kWhだ。
ただし、リチウムイオン電池は商用車であることから、荷室スペースを犠牲にしないように軽量・省スペース化された。この電池は車体に剛結されたことにより、車体剛性は大幅に向上。車体のねじり剛性は、約20%もアップ。プラットフォームは、ガソリンのバンとは全く異なったものとなった。
また、1695mmだった全幅も1755mmへと拡幅。当然、トレッドも広がりフロントとリヤのサスペンションも強化された。とくに、フロントサスペンションの横剛性は35%もアップしており、EVのもつ強大なトルクをシッカリ受け止めることができるようになっている。
■ベースはバンなのに、ハンドリング性能や乗り心地、静粛性、すべてが平均的ミニバンより上!
このボディの剛性アップは、走り始めた瞬間から感じることができた。まず、サスペンションがシッカリと動いていて、乗り心地が非常によい。段差もしなやかにこなす。もはや、バンがベースとは思えないほどだ。
運転席の着座位置こそ商用バン的なのだが、バッテリーをフロアに搭載しており重心高が低いので、カーブでクルマの傾きが少なく、傾くスピードも非常に穏やかだ。リーフほどではないにせよ、並みのミニバンより上と感じるほど。
その上、EVなので静粛性は非常に優れている。ボディ剛性がアップされたことで、無駄な振動が減ったり、大型の電池をフロアに配置したことで遮音も良くなったのか、停止時だけでなく走行中の静粛性も並みのミニバン以上。普通に助手席の乗員と会話できる。ガソリンのNV200では、少々自らの声のボリュームを20%増し位にしないとうまく伝わらなかったことを考えると、もはや上級の乗用車並みの会話明瞭度だ。
e-NV200のバンも基本的にはワゴンと同じなので、同様なパフォーマンスをもつ。仕事で今までガソリンのNV200に乗っていた人が、このe-NV200に乗り換えたのなら、移動中の疲れもまったく違ってくるのではないだろうか。それくらい違う。同じNV200 という車名だが、違うクルマととらえた方が良い。もちろん、車両価格も違い、e-NV200はNV200の約2倍くらいの価格帯になっているので、NV200と比べてよいのは当然ということにもなる。
■航続距離は短くとも、割り切った使い方ができればリーズナブルで便利。ただし、価格は高い
さて、気になるのはe-NV200の航続距離。トヨタ は、燃料電池車 であるミライ を発売した。水素を搭載することで、EVより航続距離が長いことをアピールしている。対して、このe-NV200の航続距離はグレードにより異なるが185〜190㎞。まぁ、確かに航続距離は短い。ただし、どちらも一長一短で、EVの魅力は家で充電できるので、ミライと比べれば、わざわざ数少ない水素ステーションに出向く必要がない。ハイブリッド車 のようにガソリンスタンドに行く必要もない。これはメリットだ。
例えば、ルート配送のように、限られた地域や短い走行での使い方として割り切れれば、EVも十分に価値がある。今のところ、水素の価格は明確になっていないが、ガソリンと同等を目指しているという。水素がガソリンと同等の価格というのであれば、燃料費という視点では、ガソリンより電気は安いのでランニングコストも当然安くなる。車両代は最大85万円の補助金の対象となっているが、それでも高価。購入コストより、普段のランニングコストがリーズナブルになるといった印象。使い方次第では、ガソリン車との車両価格差をランニングコストで相殺できる可能性もあるだろう。
そして、日産はe-NV200に走る蓄電池としての付加価値をアピールする。100Vで最大1500Wに対応。確かに24kWhという大容量の電池は確かにEVならではのもの。しかし、すでにアウトランダーPHEV やハイブリッドの一部にも1500W対応のプラグが用意されている。これらのクルマ、いざとなればガソリンを使って自ら発電までする。そういう意味では、それほど差別化できるアピールポイントではない。
■車名を変えて、セレナEVでも売れそうなパフォーマンス!
今回、このe-NV200のワゴンモデルを試乗して強く感じたことがある。それは、ワゴンモデルは違う車名にして販売すればよかったのでは? と、いうことだ。例えば、車名もセレナ EVなどとして、外装もバンのe-NV200をイメージさせないデザインにするべきだったのではないだろうか。
そもそも、e-NV200はワゴンっていったて、どうせ商用バンベースなんでしょう、という先入観から猛省することになったように、多くの顧客もそう感じるはず。こうした先入観で機会損失してしまっては意味がない。
試乗すると、もはや並みのミニバン以上の静粛性や乗り心地、ハンドリング性能をもっているだけに、他のミニバンとは明確にユニークさをアピールできるはずだ。バンの価値以上に、ミニバンとしての価値も非常に高い仕上がりとなっているだけに、少々もったいないような気がした。
リーフ はEVの先駆車として、地道に販売台数を伸ばしている。ただ、国内マーケットからみれば、5ドアHBはあまり人気のないボディスタイル。5ドアHB じゃなければ、そう思っている顧客もいるだろう。EVのミニバンであれば、顧客の選択肢も増え新たなEV顧客を増やす可能性もあるだろう。
この日産e-NV200には、チャンスがあればぜひ試乗してほしいと思う1台だ。しかし、ディーラーでの試乗車は数少ない。近所のディーラーには、試乗車が無い可能性も高い。それでも、日産のホームページなどで試乗車のあるディーラーを検索して試乗してみるといい。
とくに、今まで商用バンに乗ったことがある人にはぜひ試乗してもらいたい。これが、商用バンベースなの? と、ビックリすることは確実。近距離で主に使うということであれば、商用として、またプライベート用として1台で満足できるEVとなっている。
■日産e-NV200バン価格
・バンGX(5人乗) 4,078,080円
・バンGX(2人乗) 3,978,720円
・バンGX ルートバン 3,978,720円
・バンVX(5人乗) 3,991,680円
・バンVX(2人乗) 3,880,440円
・バンVX ルートバン 3,880,440円
■日産e-NV200ワゴン価格
・ワゴンG(7人乗) 4,786,560円
・ワゴンG(5人乗) 4,624,560円
代表グレード | 日産e-NV200ワゴンG 5人乗り |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4560x1755x1850mm |
車両重量[kg] | 1620kg |
総電力量[kWh] | 24kWh |
最高出力[kw/rpm] | 80kW/3008-10000rpm |
最大トルク[N・m/rpm] | 254N・m/0-3008rpm |
JC08モード交流電力量消費率[Wh/km] | 142Wh/km |
JC08モード一充電走行距離 | 188km |
定員[人] | 5人 |
消費税込価格[円] | 4,624,560円3,847,200円 |
発売日 | 2014/10/30 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | CORISM編集部 |
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