燃費は大幅向上したものの、乗り心地や走行安定性はわずかに向上
セレナ のパワートレーンは、従来と変わらない。簡易型のマイルドハイブリッド であるSハイブリッドを引き続き採用する。マイルドハイブリッドなので、モーターだけで走行するEVモードなどはない。このマイルドハイブリッドは、2.0Lエンジンに、スターターとジェネレーターを統合したISGと呼ぶ部品を採用する。この方式のハイブリッドは旧型セレナに始まり、最近では軽自動車にも広がっているものだ。
新型セレナは旧型セレナとパワートレーンは、ほぼ同じで車両重量も従来とほとんど変わらないが、効率の追求によってJC08モード燃費は向上している。ハイウェイスターG同士で比較すると、旧型モデルの15.4km/Lから16.km/Lへと向上した。最も燃費の良い仕様は17.2km/Lで、ステップワゴン で最も燃費の良い仕様の17.0km/Lを上回っている。エンジンの型式こそ同じだが、中身は多くの部分が新設計された結果だ。
ただ、燃費を追求するために、走りがやや鈍くなったのは難点。じんわり発進するような設定になっているため、高速道路の料金所を通過した直後のように、イッキ加速するシーンで思うように加速しない。ついついアクセルを踏みすぎになりがちで、踏むとエンジン音はうるさくなるし、当然ながら燃費が悪くなる。
燃費志向の設定自体は悪いことではないが、走りとのバランスに配慮することも必要である。カタログ燃費を重視するあまり、実用燃費が悪くなるような設定にしたのでは意味がない。
ゆったりとクルージングしているときは、これまでに比べて静かなクルマになっているし、走りに不満を感じることもないのだが、ちょっと加速しようと思ったときに物足りない感じになる。
セレナの足回りについても似たようなことがいえる。家族を乗せて走らせているようなときには、普通の走りが可能ながら、ちょっと元気良く走らせようとすると操縦安定性がやや物足りない。ブレーキにもややプアな印象がある。ステップワゴンなどが、もう少しスポーティな方向を指向しているのに比べると、操縦安定性については語るべき点の少ないクルマという印象である。
セレナの乗り心地も運転席や助手席に座っている分には特に悪い印象はないのだが、2列目シートに座るとシートが常に振動しているのを感じる。本来なら、ミニバン の2列目シートは特等席であるべきものだが、そこに座ったときに振動を感じさせるのは何とも物足りない。
ミニバンの2列目シートは、たいていのクルマがこのような振動を感じさせていて、セレナの振動が際立って大きいというほどではないのだが、特に優れているという印象でもない。
操縦安定性や乗り心地などは、基本プラットホームがキャリーオーバーであることに起因していると思われる。日本でたくさん売れているミニバンなのだから、新プラットホームの採用で走りの性能を上げて欲しいところだった。
渋滞が楽しくなる? プロパイロットは、自動運転ではなく「運転支援技術!」
セレナで話題となっているプロパイロットは、自動運転の時代がやってきたかのように宣伝しているが、実際にはごく限定的な状況で一定の効果が得られる程度。ステアリングホイールに設けられたメインスイッチと、セットスイッチを押すという2回の操作で簡単に作動を開始し、それがインパネ内に緑色のハンドルや車線で表示されるので、作動の様子も分かりやすい。
しかしながら、車線認識ができるときとできないときの差が大きく、思ったほどには作動してくれない感じである。高速道路で渋滞してしまったときなど、ごく限られた条件のときには一定の効果があるものの、それ以外のシーンでは特に便利に使えるというほどではない。限定的な運転支援技術と考えたら良いだろう。
日産はこれを“自動運転技術”と呼んでいるが、これは非常に誤解を生みやすい表現である。買った人は、この程度かというのがすぐに分かるが、知らない人はまるで自動運転の時代が到来したのかと思ってしまう。
自動運転は、間違いなく今後のクルマが進化していく方向なのだから、その初期段階でユーザーに誤解を生じさせいよう、運転支援技術であることをしっかりと説明するか、あるいは自動運転には段階があり、その段階によってクルマとドライバーの受け持つな内容が変わり、同時に責任の分担も変わることなどをきちんと説明すべきだろう。
とくに、自動運転ではなく運転支援技術の段階であるときには、ドライバーがクルマをしっかり監視し、万一のときには全面的に責任を負う必要があることをしっかり伝えるべきだと思う。
売れていた自信か? 価格は大幅アップ!
日産セレナは、価格も大幅に高くなった。試乗したハイウェイスターGの車両本体価格は300万円強だが、プロパイロットなどを含めたセーフティパックBに24万3000円とかなり高めの価格が設定されているほか、ボディカラーやオーエアコンなどのメーカーオプションを合わせると、約42万円分ものオプションが装着されていた。
これに、カーナビを追加する必要がある。カーナビは車両価格の割高感を分かりにくくするためか、メーカーオプションではなくディーラーオプションの設定にしたと思われる。カーナビにカーペットを合わせて約45万円を足すと、合計で390万円弱の仕様になっていた。税金や諸費用を考えたら400万円を超える予算が必要なクルマである。ユーザーがミニバンの購入時に想定する予算からは、かなりかけ離れたクルマである。
日産セレナ価格
<FF(前輪駆動)>
B 2,316,600円
S 2,435,400円
X 2,489,400円
G 2,847,960円
ハイウエイスター 2,678,400円
ハイウエイスター プロパイロットエディション 2,916,000円
ハイウエイスターG 3,011,040円
ハイウエイスターG プロパイロットエディション 3,187,080円
<4WD>
B 2,603,880円
X 2,733,480円
G 3,135,240円
ハイウエイスター 2,965,680円
ハイウエイスター プロパイロットエディション 3,176,280円
日産セレナ スペック、燃費など
代表グレード | 日産セレナ ハイウェイスターG |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,770×1,740×1,865mm |
ホイールベース[mm] | 2,860mm |
トレッド前/後[mm] | 1,480/1,485mm |
車両重量[kg] | 1,700kg |
総排気量[cc] | 1,997cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 110(150)/6,000 |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 220(20.4)/4,400 |
ミッション | CVT |
タイヤサイズ | 195/60R16 |
JC08モード燃費 | 16.6km/L |
定員[人] | 8人 |
税込価格[円] | 3,011,040円 |
発売日 | 2016/8/24 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
【関連記事】
- 【動画追加】新型日産セレナ新車情報・購入ガイド 自動運転技術を使った運転支援機能「プロパイロット」日産車初搭載! 新型セレナハイブリッドは、1年遅れか?
- 日産セレナ新車情報・購入ガイド 3タイプのお買い得特別仕様車を用意して、ライバルを泥沼の争いへ誘う?
- 日産セレナ新車情報・購入ガイド 激戦、5ナンバーミニバン選びはセレナがカギを握る?
- 日産セレナ S-ハイブリッド(S-HYBRID)新車試乗評価 ライバル車には無いエマージェンシーブレーキで差別化!
- 日産セレナ新車情報・試乗評価一覧
- ホンダ ステップワゴンModulo X(モデューロ エックス)新車情報・購入ガイド ミニバンだからこそ、より気持ちいい走りを追求したカスタマイズモデル誕生!
- ホンダ ステップワゴン新車情報・購入ガイド 実質価格を引き下げ再チャレンジ! 歩行者検知式自動ブレーキ「ホンダ センシング」をほぼ標準装備化! 安全性&装備を大幅向上させ再チャレンジ!
- ホンダ ステップワゴン新車情報・試乗評価一覧
- トヨタ ノア&ヴォクシー新車情報・購入ガイド ライバル新型セレナに負けるない! 特別仕様車投入で迎撃態勢完了!
- トヨタ ノアG's/ヴォクシーG'S新車情報・購入ガイド 走行性能を向上させて「もっといいミニバン」に大変身!
- トヨタ ヴォクシー&ノア(VOXY & NOAH)ハイブリッド試乗評価 優れた燃費性能、静粛性、走行性能など、高価だが圧倒的な総合力!
- トヨタ ノア&ヴォクシー新車情報・試乗評価一覧
- ミニバン新車情報・試乗評価一覧
- ハイブリッド新車情報・試乗評価一覧
【オススメ記事】
- フォルクスワーゲン ポロ新車情報・購入ガイド ついに全長4m越えに! 3ナンバー化した6代目新型ポロは、1.0L直3ターボを搭載【ニュース・トピックス】
- 三菱エクリプスクロス試乗記・評価 さすが4WDの三菱! 豪快にリヤタイヤを振りだすような走りも楽しめる絶妙なS-AWCに脱帽!【レビュー】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.6】 日差リーフの実電費チェック! (一般道編)コツコツ電費を稼ぐe-Pedal【評論家ブログ : 日産リーフ】
- メルセデス・ベンツSクラス新車情報・購入ガイド 約20年振りの直6エンジンに、ISGを組みあわせた次世代エンジンを搭載!【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.5】 日差リーフの実電費チェック! (高速道路編)実電費アップは、こだわりの空力性能にあり!【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 三菱エクリプスクロス新車情報・購入ガイド スタイルに走り、装備とスキ無しの完成度を誇るコンパクトSUV。ガソリン車だけしかないことが、唯一の弱点?【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.4】 30歳代クルマ好き女性、初めての電気自動車! その評価は?【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 日産セレナe-POWER新車情報・購入ガイド ついに、シリーズハイブリッドシステムを搭載したセレナ! 5ナンバーミニバン、ハイブリッド車戦争へ加速!!【ニュース・トピックス】
- マツダCX-8試乗記・評価 際立つ運転のしやすさ! こだわりの「躍度」を雪上でチェック!【レビュー】
- 日産テラ(TERRA)新車情報・購入ガイド ナバラベースのSUV中国でデビュー! 日本への導入は?【ニュース・トピックス】
【関連記事】
- 日産セレナAUTECH SPORTS SPEC新車情報・購入ガイド 走りの質感を大幅向上した特別なモデル【日産】
- 日産セレナe-POWER新車情報・購入ガイド 待望の4WD「e-4ORCE」を搭載!【日産】
- 日産セレナ VS トヨタ ヴォクシー/ノア、失敗・後悔しないための徹底比較評価【対決】
- ホンダ ステップワゴンスパーダ VS 日産セレナ 徹底比較・評価 失敗・後悔しないためのクルマ選び【対決】
- 速報!2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー「トヨタ プリウス」に決定!!【イベント】
- 日産セレナe-POWER新旧比較 失敗・後悔しないためのクルマ選び【対決】
- 6代目新型日産セレナ(C28型)試乗記・評価 ルキシオンが売れている! 仕上がり上々、新e-POWER搭載!【日産】
- 100万円以下おすすめ中古ミニバン5選【生活・文化】
- トヨタ ヴォクシー&ノア VS 日産セレナ徹底比較評価【対決】
- 日産セレナ新車情報・購入ガイド 仕様向上でより安全に。e-POWER車にもスポーツ仕様の「AUTECH SPORTS SPEC」を新設定【日産】
【オススメ記事】
- ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV【ホンダ】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- 日産フェアレディZ新車情報・購入ガイド 2025年モデルが登場! 納期は? 転売ヤー対策は?【日産】
- BMW M2クーペ(G87)試乗記・評価 「サーキットで乗ってみたい!」クルマ好き女子が試乗!【BMW】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、栄えある10ベストカーが決定! 今年のナンバー1は、どのクルマに!?【イベント】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、ノミネート車31台が決定!【イベント】
- マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV【マツダ】
- 三菱 アウトランダーPHEV新車情報・購入ガイド 大幅改良&値上げ。それでも、コスパ高し!!【三菱】
- スズキ フロンクス試乗記・評価 価格、燃費値を追加。欧州プレミアムコンパクトに近い上質感【スズキ】
- 日産セレナAUTECH SPORTS SPEC新車情報・購入ガイド 走りの質感を大幅向上した特別なモデル【日産】
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!