大きくなったのに軽くなったボディ
●コンセプト&デザイン
プジョー407とプジョー607を統合し、新しいフラッグシップモデルとしてプジョー508が登場した。ボディタイプはセダンとステーションワゴンのSWの2種類。セダンとSWは同じホイールベース。リヤのオーバーハングを延長してラゲッジスペースを作る手法は407時代と変わらない。
ボディそのものはセダンもSWもひと回り大きくなった。407に比べるとホイールベースが90mm延長され、セダンの全長は105mm、SWは40mm長くなった。全幅はともに15mmの拡大だから拡大幅はさほどではないが、1855mmは十分に大きな全幅である。
407は長いフロントノーズや傾斜したAピラーを持つ独特の外観デザインがスタイリッシュな印象を与えていたが、今回508では前のオーバーハングを切り詰めるとともに、リヤのオーバーハングを延長して密度の高いバランスの取れたパッケージングを採用した。これによって後席の居住性も拡大している。
当然ながらラゲッジスペースも拡大され、セダン、SWとも407に比べて100L以上プラスされて500Lを超える容量が確保された。
このようにボディを拡大したにもかかわらず、車両重量は軽くなり、セダン、SWとも1500kg台にとどまっている。ボディサイズを考えると相当に軽いが、これはアルミ製のボンネットフードやマグネシウム合金を使ったクロスメンバーの採用と、サスペンション形式をダブルウィッシュボーンからストラットに変更したことなどによる。
インテリアの質感はまずまずのレベル。高級感はさほどではないが、ピアノブラックのパネルや操作系を集約したステアリングホイールなどが独特の質感を表現していると評価できる。
●走り&メカニズム
搭載エンジンは直列4気筒1.6Lの直噴ターボのみに絞られた。本国でもガソリン車はこの仕様のみなのだそうで、フラッグシップモデルに搭載されるのが4気筒1.6Lというのにはちょっと驚かされる。ヨーロッパでダウンサイジングが徹底されていることを示すものといって良い。
このエンジンは308系や3008などに搭載されているのと同じもので、115kW/240N・mのパワー&トルクを発生し、アイシン製の電子制御6速ATと組み合わされている。
508の車両重量は3008とほぼ同じなので、このエンジン+ATの走りの元気の良さについてはすでに定評のあるところ。特にわずか1400回転という低回転域から204N・mの最大トルクを発生するので、低速域からスムーズに加速していく。回して楽しいといったタイプのエンジンではないが、トルク感に加えて滑らかな変速フィールもあるので、上級車に搭載するのにふさわしい実力を備えたパワートレーンといえる。
乗り心地についてはプジョーらしい猫足を感じさせた。少々路面の悪いところでも快適な乗り心地を感じさせると同時に、コーナーでは足回りがしっかり仕事をして安定感を確保している。前輪がダブルウィッシュボーンからストラットに変わったことのネガも全く感じられなかった。
プジョーの最上級車にふさわしく静粛性も高いレベルにあり、これが室内の快適性を高めている。快適性の面で大きく進化したのが今回の508と考えていいと高評価したい。
日本マーケットでは、やや辛い燃費とボディサイズ
●まとめ
プジョー508の難点を上げるならボディが大きくなったこと。快適性や居住性、積載性などの向上につながっているものの、基本的にボディは小さめなほうが良い。ボディの大きさに加え5.9mに達する最小回転半径も国内での使い勝手を考えるとやや辛いものがある。
セダンの燃費は11.0km/Lで、407の2.2に比べて11%、3.0に比べると33%も向上しているのだが、排気ガスも含めて日本のエコカー減税には適合していない。まだまだ改善の余地が残っていると思う。
価格はけっこう安めだ。排気量が1.6Lなので安めに設定できるのかも知れない。セダンのアリュールが374万円で上級グレードのグリフは414万円。SWは20万円ほど高く、394万円と437万円になる。
このクラスの輸入車ではパサートの価格が際立って安く、324万円から394万円の価格帯だからプジョー508に比べると40万〜50万円くらい安い。でもパサートはエンジンが1.4Lであることなどを考えると、508は十分に競合するモデルになる。デザインやブランドの好き嫌いなども含めて総合的に考えたら良い。
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