トヨタ ミライ(MIRAI)先行開発車 トヨタFCV(燃料電池車)試乗評価 水素が燃料、排出は水だけ! 究極の環境性能をもつ燃料電池車の時代が、もう目の前だ!! 価格は700〜800万円前後? 発売時期は、2014年度後半から2015年前半か?
トヨタ ミライ(MIRAI)先行開発車 トヨタFCV(燃料電池車)試乗評価 の目次
クルマを走らせても、排出されるのは「水」だけ!
トヨタ の先進技術取材会で燃料電池車(FCV) のテスト車に試乗した。試乗車はレクサスHS のボディに偽装を施したもので、これではカッコ良くないし、先進的なクルマのイメージがないなあと思えるが、あくまでもテスト車両。基本プラットホームの基本部分は、すでに燃料電池車(FCV)用のものを採用しているというが、ボディはまだ本物ではない。
最初に、燃料電池車(FCV)についておさらいしておこう。そもそも英語でフューエル・セル・ビークルを日本語に訳して燃料電池車とされている。燃料電池を使った電気自動車という意味で、FCEVという言い方や、燃料電池を使ったハイブリッド車という意味で、FCHVという言い方もある。
ただ、FCを燃料電池としたのはほとんど誤訳に近い直訳。むしろ発電自動車などと意訳すれば分かりやすかったが、燃料電池車という呼び方はでに定着してしまったので、今さらどうにもならない。
FCでは、水の電気分解の逆をする。小学校の授業で実験をしたことを覚えていると思うが、水に電気を加えると酸素と水素に分解する。その逆だ。
つまり、水素と大気中にたくさんある酸素を結合させて水を作る。そうすると副次的に電気が発生する。その電気を使ってクルマを走らせようというわけだ。FCVでは、電気を取り出すことを目的にして、副次的に水が排出される形になる。
クルマを走らせるときに排出するのが水だけということで、究極の環境性能車とされているのがFCVだ。今の世界は、炭素を中心にしたエネルギーを使う炭素社会だが、これを水素社会へと変化させていこうというのが将来的な展望とされている。
姿は偽装車だが、走行性能などは市販直前といえる高い完成度
トヨタFCVの運転席に乗り込んで、システムのスタンバイを確認して走り出す。最初は軽くアクセルを踏んでゆるりと走り出すと、普通に静かな電気自動車という感じだ。
直線でアクセルを踏み込んで加速すると、かなり速い。発電能力やモーターの出力など、詳しいデータは公開されていないが、相当効率的に発電し、力強く走れるだけの能力を備えている。
加速時には、モーターがうなる音が聞こえるかと思ったら、そうではなかった。むしろFCが仕事をしている音が良く聞こえた。FCスタックで水素を酸素と結合させるのだが、大きな力を取り出すには、それなりの量の水素を使う。それに見合った量の酸素を供給しなければならない。その空気を取り入れる音が最も大きかった。
また、試作段階のテスト車両なので、ロードノイズなどもそれなりに聞こえてくるなど、騒音レベルに関してはまだまだという感じだったが、これは実際に市販されるクルマになれば大きく改善されるだろう。
トヨタFCVの車両重量は、けっこう重いとのこと。ハイブリッド 車のプリウス と同じくらいに収まるのかと思ったら、ずっと重いHS並みとのこと。プリウスよりも200〜300kgくらい重くなる。プリウスが1,350㎏くらいなので、1,550〜1,650㎏といったところだろうか。エンジンが不要になるが、水素タンクが必要になるなど、いろいろな出し入れの結果がそうなるという。
その重さもあってか、どっしりした走りを感じさせ、操縦安定性などのバランスはけっこう良かった。試乗コースは大きな駐車場を使った緩やかなジムカーナコースみたいな設定で、直線での加速のほかにコーナーでの切り返しや、小さな段差の乗り越えなどもあったが、足回りの印象は全体に好印象。
重さの割にブレーキの効きは良く、またフィールも自然なものだった。エンジンを搭載していないので、当然ながら負圧を利用することができず、電動サーボを使ったブレーキを採用しているが、自然な効き具合を感じさせたのだ。すでに、市販に相当に近いところまで開発が進んでいるようだ。
1台当りのコストは500万円!?
トヨタは、クルーガーVをベースにしたFCHVアドバンスというFCVを2008年に発表し、一部の官公庁などにリースしている。このモデルの時代には、1台当り1億円以上のコストがかかっているという話だったが、2015年の市販に向けてコストは20分の1くらいにまで下がったという。
だったら1台500万円で買えるのかというと、そうではない。まだコストが500万円かかっているのだから、販売価格は安くても800万円から1000万円というところだろう。さらに、コストダウンを進めて販売価格が500万円くらいにまで下がれば急速に普及が進むと思う。
トヨタFCVのコストが高いのは、FCスタックが高いからだ。水素と酸素を発生させるには、稀少金属を使った触媒が必要で、これが高くつく理由だ。プラチナ価格は最近では5000円を切る水準にあるが、少し前まではこれを100gくらい使う必要があった。研究開発が進んで最近ではプラチナの使用量は半分くらいになったとされるが、それでもプラチナの原価だけでざっと25万円くらいかかる。
それをFCスタックに仕上げて、クルマに搭載してということで、いろいろとコストがかさむのは理解できる。でも、量産が実現すればコストが下がる部分はあるし、研究開発が進めばプラチナの使用量はどんどん少なくなっていくだろう。
電気自動車と比較しても、電気自動車で700kmも走れるクルマを作ろうとしたら、電池代を中心にしたコストは相当に高いものになる。仮にFCVが700万〜800万円で買えるとなれば、そのほうが安上がりになるともいえるのだ。
究極の環境性能をもつ燃料電池車(FCV)が手に入る時代が、すぐ近くまでやってきた!
もうひとつの問題は、水素の供給インフラをどう作っていくかだ。今回の試乗会場ではトラックに積載した水素タンクからFCVへの充填も実演されたが、水素ステーション自体はまだ全国に20個所ほどしかない。国の政策として2015年までに100個所に増やそうとしている段階だ。
充填自体は3分ほどですむから、水素ステーションができれば供給は容易。電気自動車ほどたくさんの充電設備がなくてすむ。
水素も、現在は精油所などで副次的に生産されている分をFCVに回すだけで、十分な生産量がある。ただ、将来的にFCVが増えていけば、どうやって水素を作るかが問題になり、石油や天然ガスなどの炭化水素から水素を取り出すことが考えられる。そのときにどれだけ効率の良い方法を開発てきるかも課題である。
いずれにしても、トヨタだけでなくホンダも2015年に、また日産もそれに近いタイミングでFCVを売り出す計画を表明している。優れた環境性能を持つ新しい時代の自動車がもうすぐ手の届くところまできている。
【関連記事】
- 究極のエコカー、世界初公開【トヨタFCV-R】東京モーターショー出品車
- 日産TeRRA (テラ)新車情報 コスト6分の1の燃料電池! さらに、インホイールモーター採用の4WD。パリショー出展車
- 【ホンダ 燃料電池車 FCXクラリティ試乗評価】ハイブリッドだけじゃない!燃料電池車 FCXクラリティは走りも内外装も高得点の完成度!
- トヨタ新車情報・購入ガイド一覧
- トヨタ新車試乗評価一覧
- トヨタ ヴォクシーハイブリッド&ノアハイブリッド(VOXY & NOAH)コンセプト新車情報・購入ガイド 待望のハイブリッドミニバンが、ついにデビュー! ヴォクシー&ノアハイブリッドの価格や燃費を予想した!【東京モーターショー出展車】
- レクサスRC新車情報・購入ガイド 2014年夏発売?発売直前のクーペ、レクサスRCは、3.5Lと2.5Lハイブリッドで登場!? V8 5.0LのレクサスRC Fの存在も?【東京モーターショー出展車】
【オススメ記事】
- フォルクスワーゲン ポロ新車情報・購入ガイド ついに全長4m越えに! 3ナンバー化した6代目新型ポロは、1.0L直3ターボを搭載【ニュース・トピックス】
- 三菱エクリプスクロス試乗記・評価 さすが4WDの三菱! 豪快にリヤタイヤを振りだすような走りも楽しめる絶妙なS-AWCに脱帽!【レビュー】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.6】 日差リーフの実電費チェック! (一般道編)コツコツ電費を稼ぐe-Pedal【評論家ブログ : 日産リーフ】
- メルセデス・ベンツSクラス新車情報・購入ガイド 約20年振りの直6エンジンに、ISGを組みあわせた次世代エンジンを搭載!【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.5】 日差リーフの実電費チェック! (高速道路編)実電費アップは、こだわりの空力性能にあり!【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 三菱エクリプスクロス新車情報・購入ガイド スタイルに走り、装備とスキ無しの完成度を誇るコンパクトSUV。ガソリン車だけしかないことが、唯一の弱点?【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.4】 30歳代クルマ好き女性、初めての電気自動車! その評価は?【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 日産セレナe-POWER新車情報・購入ガイド ついに、シリーズハイブリッドシステムを搭載したセレナ! 5ナンバーミニバン、ハイブリッド車戦争へ加速!!【ニュース・トピックス】
- マツダCX-8試乗記・評価 際立つ運転のしやすさ! こだわりの「躍度」を雪上でチェック!【レビュー】
- 日産テラ(TERRA)新車情報・購入ガイド ナバラベースのSUV中国でデビュー! 日本への導入は?【ニュース・トピックス】
【関連記事】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- スバル インプレッサ vs トヨタ カローラスポーツ徹底比較評価 失敗・後悔しないクルマ選び 【対決】
- 日産セレナ VS トヨタ ヴォクシー/ノア、失敗・後悔しないための徹底比較評価【対決】
- トヨタ クラウンクロスオーバーvsトヨタ ハリアーハイブリッド徹底比較・評価 失敗・後悔しないためのクルマ選び【対決】
- トヨタ シエンタvsホンダ フリードを徹底比較・評価 失敗・後悔しないためのクルマ選び【対決】
- トヨタ シエンタ新旧比較 失敗・後悔しないためのクルマ選び【対決】
- スバル クロストレック VS トヨタ カローラクロス徹底比較・評価 失敗・後悔しないクルマ選び【対決】
- トヨタ ハリアーvsマツダCX-60 XD-ハイブリッド比較・評価 失敗・後悔しないためのクルマ選び【対決】
- 新車トヨタ ヤリス VS 中古車トヨタ カローラスポーツ徹底比較 失敗・後悔しないためのクルマ選び【対決】
- 中古ファミリーカーおすすめ5選! 「スライドドア車だけじゃない選び方」【生活・文化】
【オススメ記事】
- ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV【ホンダ】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- 日産フェアレディZ新車情報・購入ガイド 2025年モデルが登場! 納期は? 転売ヤー対策は?【日産】
- BMW M2クーペ(G87)試乗記・評価 「サーキットで乗ってみたい!」クルマ好き女子が試乗!【BMW】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、栄えある10ベストカーが決定! 今年のナンバー1は、どのクルマに!?【イベント】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、ノミネート車31台が決定!【イベント】
- マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV【マツダ】
- 三菱 アウトランダーPHEV新車情報・購入ガイド 大幅改良&値上げ。それでも、コスパ高し!!【三菱】
- スズキ フロンクス試乗記・評価 価格、燃費値を追加。欧州プレミアムコンパクトに近い上質感【スズキ】
- 日産セレナAUTECH SPORTS SPEC新車情報・購入ガイド 走りの質感を大幅向上した特別なモデル【日産】
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!