トヨタ セーフティセンス試乗・評価レポート 2015年から導入決定。トヨタの自動ブレーキは「C」と「P」の2タイプ! ついに、トヨタが自動ブレーキ装備に動き出した!
■普及を目指した価格で、2タイプが用意され2015年に導入!
トヨタ が予防安全パッケージのトヨタ セーフティセンスを2015年に導入を開始し、2017年までに日米欧で販売するほぼすべての乗用車に搭載すると発表した。
安全装備は最近、欧州メーカー各社の積極的な採用が目立つようになっているほか、国内でも軽自動車 メーカーが簡易型の追突軽減ブレーキを採用し、ダイハツ ではムーヴ で装着率が80%に達するなど、急速に普及が進んでいる。
そんな中で、トヨタは安全装備の採用が遅れている印象が強かった。安全装備は、万が一でも不具合があってはならない。そんな慎重な姿勢だったが、やっとその気になったと思えるのが今回の発表だ。発表したこと自体は評価できるし、発表された安全技術の中身も一定程度に評価できるが、中身についていえばもっとやって欲しいことがたくさんあるのも実情である。
今回発表されたのは、トヨタの予防安全技術のうち、衝突回避支援または被害軽減を図るプリクラッシュセーフティシステム(PCS)を始め、車線逸脱による事故の予防に貢献するレーンディパーチャーアラート(LDA)、夜間の前方視界確保を支援するオートマチックハイビーム(AHB)など、複数の機能をパッケージ化したものだ。
レーザーレーダー(赤外線)とカメラ、あるいはミリ波レーダーとカメラを組み合わせ、2つのセンサーで高い認識性能と信頼性を両立し、多面的な安全運転支援を可能にするという。
車両タイプに合わせて主にコンパクトカー 向けのトヨタセーフティセンスCと、ミディアム・上級車向けのトヨタセーフティセンスPの2種類を設定するという。トヨタ セーフティセンスCとPとも価格は公表されていない。安全装備は普及してこそ意味があると、トヨタは言及したこともあり価格設定にも注目していきたい。
これらを具体的に体験したので順番に紹介していこう。
■トヨタ セーフティセンス解説動画
●トヨタセーフティセンスC
プリクラッシュセーフティシステム(PCS)については、赤外線とカメラを組み合わせることで、時速10km〜80kmの領域で作動。状況によっても変わるが、速度差が30km/hまでなら手前で停止することが可能という。
軽自動車 などの赤外線だけを使ったタイプでは、時速30km以上では作動しなくなるのが普通だから、それに比べると格段に良いといえるが、これもあくまでも簡易型の範囲内にある。
赤外線では、ミリ波レーダーに比べて前方車両の認識距離に違いがあるし、またカメラの仕様も今時モノクロ仕様である上に、人間を認識するソフトも入っていないので、人間に対しては反応しない。
せっかくカメラを使ったのだから、人間を認識したタイプにすれば良いのに、そうなっていないのは何とも残念な仕様である。
トヨタのセーフティセンス“C”が、赤外線を使った軽自動車用の簡易型と違うのは、カメラを使っている分だけ遠くの車両を認識することだ。衝突の危険を感知すると事前に警告を出す余裕があり、それでもドライバーがブレーキを踏まない場合に減速する仕組みになっているところが優れている点だ。軽自動車などの簡易型は、ほとんど警告にならない。
トヨタ セーフティセンス“C”は、PCSのほかにレーンデパーチャーアラート(LDA、車線逸脱警報)やオートマチックハイビーム(AHB)も含めたパッケージとされている。
■上級モデルには、より高度で遠方を監視できるミリ波とカメラの組み合わせトヨタ セーフティセンスPを装備
●トヨタセーフティセンスP
PCSは、ミリ波レーダーと単眼のカラー広角カメラを採用することで、遠方の車両を認識できる上に形状認識によって人間も認識できる。
トヨタは、レクサスLS用にステレオカメラとミリ波レーダーを融合させた方式を採用していたが、コストなどを考えて単眼カメラになったようだ。
作動領域は、時速10kmから100km以上まで対応し、障害物との相対速度差が40km/hまでなら手前で停止できるという。
障害物が人間の場合には、条件が少し変わり、時速10kmから80kmくらいまでの領域で作動し、30km/h分くらいの減速をして衝突を回避、または軽減するという。停止条件は、路面などによっても変わるので単純ではないが、機能としてはこのタイプが優れている。
トヨタ セーフティセンス“P”は、ミリ波レーダーを採用しているので、ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)も含まれる。また、LDAやAHBもパッケージされているのは、トヨタ セーフティセンス“C”と同じである。
■お金と車格で、安全装備を差別化したトヨタ セーフティセンスは〇か? それとも×なのか? メルセデス・ベンツを超えるトヨタの技術力に期待!
トヨタ はコンパクトカーから高級車まで、さまざまな車種をラインナップしている。高級車を買うユーザーなら少々高くても最新・最高の安全装備を手に入れようとするだろうが、低価格のコンパクトカーをユーザーは安全装備の購入予算も限られるだろうという考えから、トヨタセーフティセンスを“P”と“C”の2種類に分けて設定したようだ。安全装備をより広く普及させることを目指すには、それもひとつの考えであるとは思う。
でも、お金で安全の違いを設けるという考え方自体が、決して良い考え方ではない。トヨタ セーフティセンス“C”のPCSでは、せっかくカメラを搭載しているのに人間認識ができないというのは何とも物足りない。
人間を認識させようとしたら、カメラの性能から制御に至るまで格段に高いレベルが要求されるにしても、今はすでにそれが広く必要とされる時代に来ていると思う。
またトヨタがセーフティセンス“P”と“C”をほぼ全乗用車の全グレードに設定を終えるのは、2017年とのことだ。これらの安全装備を搭載するには、フルモデルチェンジやマイナーチェンジなどの機会をとらえる必要があるにしても、もっと早く一気に全面展開を図って欲しいところだ。
これから2〜3年先になれば、安全装備に対する要求水準はさらに高いものになっていると思う。それを考えたら、今の時点で、この程度の仕様では何とも物足りない。トヨタがセーフティセンス“P”と“C”の展開を進めているうちに、ほかのメーカーははるかに先に行ってしまうのではないか。そんな懸念さえ感じる。
また、プリクラッシュセーフティシステムを最初に採用したトヨタだ。だから、メルセデス・ベンツを上回るような最新・最高の安全装備を用意して欲しいところだった。低コストの新しい仕様を考えるより、レクサスLS用の仕様をコストダウンして全車種に広げるくらいの勢いが欲しかった。
最後にもうひとつ、トヨタセーフティセンス“P”と“C”の線引きが以外に高いところになりそうな点が気になる。今回の“P”のテスト車がプリウスだったことから、プリウス には“P”が採用されるようだが、売れ筋ミニバン のノア /ヴォクシー /エスクァイア には“C”が装着購入されることになりそうなのだ。“C”は一部のコンパクトカーなどにとどめ、“P”を基本に展開を進めて欲しいところである。
この日は、ほかにも新機能を追加したインテリジェントクリアランスソナーを始め、同様に進化したインテリジェントパーキングアシスト、シースルー機能が加わったパノラミックビューモニター、LEDアレイ式AHS(オートマチック・ハイビーム・システム)など、さまざまな新しい安全装備を体験できた。
■トヨタ2014年安全技術説明会 出展技術細部映像
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