パワーユニットだけでなく、徹底的に空気抵抗を排除した空力ボディ
フォルクスワーゲンが、極限まで燃費を追求したクルマとして開発を進めたフォルクスワーゲンXL1の市販バージョンがついに登場した。XL1はこれまで、何度かコンセプトカーが各地のモーターショーに出品されてきた。それが完成し、2013年3月のジュネーブショーで限定販売ながら、市販車として発表された。
フォルクスワーゲンXL1の触れ込みは、わずか1Lの燃料で100kmの距離を走るクルマであること。燃費を徹底追求したスペシャルモデルだ。
燃費のため、に空力特性を極めた外観デザインは、全幅や全高を抑えていて、ほかにはない独特のパッケージングを採用する。斜め後方から見ると、初代のホンダ・インサイトを連想させるような部分もあるが、空力を追求すると似てくるということなのだろう。
のっぺりした感じのボディには、バックミラーも装備されていない。ボディサイドの両側に備えられたリヤビューカメラによって後方を確認する仕組みだ。これらによって空力特性を表すCd値は0.189になったという。自動車としては考えられないような数値である。
スポーツカーより低い全高をもつボディを炭素繊維強化樹脂(CFRP)で製作
フォルクスワーゲンXL1のボディサイズは、全長3888mm×全幅1665mm×全高1153mm。全長と全幅は軽自動車より少し大きいが、全高は下手なスポーツカーよりも低い。ボディ骨格は炭素繊維強化樹脂(CFRP)が使われ、車両重量はわずか795kgに抑えられている。アルトエコなど日本の軽自動車は、さらに軽いものがあるが、XL1の軽さも相当なものである。
このボディの中に、二人乗りのシートを用意する。ただし、助手席のシートは運転席よりやや後方に配置されている。初期のプロトタイプ車では、バイクのように前後に乗るタンデムシートも考えられたが、最終的にこの配置になった。
ガルウイング方式で、上方に開くドアを開けて運転席に乗り込む。シートがとても低い位置にあるので乗降性は良いとはいえず、乗り込むにはよっこらしょ、という感じになる。
EVだけで、約50km走行し、800ccのディーゼルエンジンを搭載するPHV
スタータボタンを押して、システムをスタートさせる。フォルクスワーゲンXL1は、電気モーターとディーゼルエンジンを組み合わせたプラグインハイブリッド車で、当然ながら走り出しは電気だ。
電気だけで50kmの距離を走ることができ、プラグインハイブリッド車としても50km/Lの燃費を実現するので、1Lで100kmの距離を走れるクルマになる。厳密というと、100kmを走るのに必要な燃料は0.91Lというから、燃費を日本式に言うなら109.9km/Lになる。
フォルクスワーゲンXL1シのステムとして出力できる動力性能は51kW/140N・mの実力。この性能で軽量ボディを引っ張るので、7速DSGとの組み合わせで最高速は160km/hに達するという。
発進は20kWの電気モーターが使われ、ゆるゆると走り出す。郊外路から高速道路に入っても、電気モーターだけで走り続けることができる。状況に応じてエンジンが始動してハイブリッド車の走りになるほか、意図的にエンジンを始動させるハイブリッドモードを選択して走ることも可能だ。
ただ、運転席のすぐ後方に2気筒800ccのディーゼルエンジンが搭載されているので、エンジンが始動するとかなり大きな音と振動が入ってくる。なるべくなら、エンジンを使わずに走りたい感じである。
250台の限定生産。価格は未定。残念、日本に導入は無し
フォルクスワーゲンXL1のカーボンボディの剛性感は相当なもので、これが乗り心地にも貢献しているそうだ。快適な乗り心地とはいえないが、荒れた路面からのショックを良く吸収している。フロント荷重が軽いので、パワステは備えられていないが、ダイレクト感のある操舵感覚もとても良いものだった。
けっこう原始的な部分のあるクルマで、ルームミラーがないので後方視界が良くないことなど、不満点をいえばいろいろあるが、素のクルマの持つ良さのようなものが感じられた。
ジュネーブショーの会場では、このクルマが250台の限定生産になることが発表された。価格についてはまだ発表されておらず、また残念なことに日本に導入する計画はないということだが、これくらいとがった特徴なスペシャルモデルなので、日本でも手に入ったら良いのにと思った。
フォルクスワーゲンXL1に採用されたさまざまな技術は、いずれいろいろな車種の開発に反映されてくるはず。その意味で、フォルクスワーゲンにとって大きなマイルストーンになるクルマだと思う。
【関連記事】
- 新型フォルクスワーゲン ゴルフ7新車試乗評価 ハイブリッド車並の実燃費で勝負! すべてが新しくなったゴルフ7
- フォルクスワーゲンe-up!(VWイー アップ)新車情報・購入ガイド フォルクスワーゲンのEV、この秋欧州で発売へ
- フォルクスワーゲン新車情報・購入ガイド一覧
- VWゴルフ blue-e-motion(ブルーeモーション)試乗評価 2014年国内導入予定!? 本格派輸入EVの実力は?
- フォルクスワーゲン新車試乗評価
【オススメ記事】
- フォルクスワーゲン ポロ新車情報・購入ガイド ついに全長4m越えに! 3ナンバー化した6代目新型ポロは、1.0L直3ターボを搭載【ニュース・トピックス】
- 三菱エクリプスクロス試乗記・評価 さすが4WDの三菱! 豪快にリヤタイヤを振りだすような走りも楽しめる絶妙なS-AWCに脱帽!【レビュー】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.6】 日差リーフの実電費チェック! (一般道編)コツコツ電費を稼ぐe-Pedal【評論家ブログ : 日産リーフ】
- メルセデス・ベンツSクラス新車情報・購入ガイド 約20年振りの直6エンジンに、ISGを組みあわせた次世代エンジンを搭載!【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.5】 日差リーフの実電費チェック! (高速道路編)実電費アップは、こだわりの空力性能にあり!【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 三菱エクリプスクロス新車情報・購入ガイド スタイルに走り、装備とスキ無しの完成度を誇るコンパクトSUV。ガソリン車だけしかないことが、唯一の弱点?【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.4】 30歳代クルマ好き女性、初めての電気自動車! その評価は?【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 日産セレナe-POWER新車情報・購入ガイド ついに、シリーズハイブリッドシステムを搭載したセレナ! 5ナンバーミニバン、ハイブリッド車戦争へ加速!!【ニュース・トピックス】
- マツダCX-8試乗記・評価 際立つ運転のしやすさ! こだわりの「躍度」を雪上でチェック!【レビュー】
- 日産テラ(TERRA)新車情報・購入ガイド ナバラベースのSUV中国でデビュー! 日本への導入は?【ニュース・トピックス】
【関連記事】
- SUVおすすめランキング ベスト5 徹底比較評価【対決】
- レクサスNX動画・評価 初のPHEVは2面性あり?【BLOG】
- 三菱アウトランダーPHEV試乗記・評価 環境性能の高いラグジュアリーSUVなのに、走りはスポーツカー! 【三菱】
- 三菱エクリプスクロスPHEV試乗記・評価 RAV4 PHVの手強いライバル出現!【三菱】
- 三菱エクリプスクロスPHEV動画評価レポート アウトドアだけでなく災害時にも役立つSUV【BLOG】
- 三菱エクリプスクロスPHEV試乗記・評価 超低重心! やっぱり三菱のAWDはおもしろい!!【三菱】
- トヨタ プリウス、プリウスPHV新車情報・購入ガイド 災害停電時も安心! 付加価値装備をプラスし、安全装備をバージョンアップ!【トヨタ】
- トヨタ RAV4 PHV新車情報・購入ガイド ライバル不在! 圧倒的な燃費値を誇る新プラグインハイブリッドシステム【トヨタ】
- BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.10 「アクセル踏んだらドーン!」初めてのPHEV、330e体験レポート【BLOG】
- BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.8 優れた走る楽しさと環境性能を両立したPHEV 330eを試す!【BLOG】
【オススメ記事】
- ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV【ホンダ】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- 日産フェアレディZ新車情報・購入ガイド 2025年モデルが登場! 納期は? 転売ヤー対策は?【日産】
- BMW M2クーペ(G87)試乗記・評価 「サーキットで乗ってみたい!」クルマ好き女子が試乗!【BMW】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、栄えある10ベストカーが決定! 今年のナンバー1は、どのクルマに!?【イベント】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、ノミネート車31台が決定!【イベント】
- マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV【マツダ】
- 三菱 アウトランダーPHEV新車情報・購入ガイド 大幅改良&値上げ。それでも、コスパ高し!!【三菱】
- スズキ フロンクス試乗記・評価 価格、燃費値を追加。欧州プレミアムコンパクトに近い上質感【スズキ】
- 日産セレナAUTECH SPORTS SPEC新車情報・購入ガイド 走りの質感を大幅向上した特別なモデル【日産】
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!