スズキ アルト(ALTO)試乗記・評価の目次
- 実用本位であることが、アルトのDNA
- 安っぽさを感じさせない愛嬌あるデザインが新型アルトの魅力
- 最小回転半径4.2mというクラストップレベルの使い勝手と、負荷のかからない乗降性
- スズキ アルト価格
- スズキ アルト燃費、スペックなど
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■実用本位であることが、アルトのDNA
初代スズキ アルトがデビューしたのは昭和54年だった。思い起こせば、私がクルマ関係メディアで仕事を始めてすぐの頃だ。確か京王プラザホテルで開催された発表のことを妙に良く覚えている。
当時は、軽自動車が豪華な方向に向かいすぎて価格も高くなり、ユーザーが離れ気味になっていた。それを反省して極めてシンプルな仕様で、なおかつ各種自動車関係諸税の安い商用車のライトバン仕様で作られたクルマだった。車両価格は全国統一価格で47万円と当時のクルマとしては際立って安かったことから、初代アルトは大ヒットした。
アルトのヒットを見て、ほかのメーカーも同様の商用車仕様のモデルを相次いで投入し、アルトに追従するかたちとなった。何かヒット車が出ると、ほかのメーカーがすぐに追従するというのは、このアルトから始まったといっても良い。
初代モデル以来、アルトは実用的な軽自動車を代表するモデルとしてベストセラーを続け、2015年現在までの国内累計販売は500万近くに達している。スズキ車の販売メインは平成5年以降はワゴンRに変わったが、その後も実用性の高さ、使い勝手の良さ、運転のしやすさ、経済性の高さ、手頃な価格設定などから、手堅く安定して売れてきた。
地方に住む比較的年齢の高い女性が典型的なユーザー像だが、実は低コストで実用的なクルマとして若い女性ユーザーからの支持も高く、新卒ユーザーの足として選ばれることも多い。
軽自動車として必要な機能をしっかり備えながら、過剰な部分は排除して実用本位の手頃なクルマに仕上げていることが今日に至るアルトのヒットの理由でありDNAでもある。
■安っぽさを感じさせない愛嬌あるデザインが新型アルトの魅力
フルモデルチェンジを受けた新型アルトは、まずデザインが注目される。スズキでは「凜とした存在感」というような表現を使っている。さすがに、それをそのまま受け入れられるほどのデザインではないが、低価格の軽自動車とは思えない個性的なデザインに仕上げられている。
新型アルトのデザインには、某有名デザイナーが参画しているとのウワサもあるが、ウワサはともかく単なる実用車にとどまらないデザインである。特にメガネを連想させるヘッドライトのデザインが印象的だ。目力(めぢから)を感じさせる独特の個性が表現されている。最初にインターネットに流出した映像を見たときには、変な顔だなと思ったが、実車を見ると意外に微笑ましいデザインだった。
新型アルトのデザイン開発にあたってテーマとされたのは『クォリティー+プロポーション』で、ユーザーのライフスタイルの質を少しでも高めることを目指したプロポーションが作られている。
全体として直線的でスマートなデザインであり、初代アルトにも通じるDNAを持っているように思う。とてもシンプルなデザインながら、ボディ、ホイールベース、キャビンをバランスのとれているのが良い。
最上級グレードのXには、ミディアムグレーのバックドアをオプション装着することも可能。ボディ本体のカラーによってコントラストが異なるが、1万6200円のオプションなので、気軽に装着できる。
低価格の軽自動車ながら、安っぽさを感じさせない個性的なデザインで仕上げられたのが今回のアルトで、軽自動車のレベルを超えた印象を感じさせる部分がある。
■最小回転半径4.2mというクラストップレベルの使い勝手と、負荷のかからない乗降性
新型アルトは乗降性が良くなった。直角に近いまで大きく開くドアに加え、運転席シートの座面高をやや高くすることで、重心移動の少ない自然な姿勢で乗り降りできるようになったからだ。
クルマに乗り込むと、グレードによって60mmの調節量を持つシートリフターや調節量を35mmに拡大したチルトステアリングなどが備えられている。これにより、きめ細かい調整で最適なドライビングポジションを確保できる。軽自動車では省略されることの多い装備だが、正しい姿勢で運転するために欠かせない装備ともいえる。
室内空間は一段と広くなった。新開発のプラットホームが採用されたことが、大きな理由だ。軽量化や高剛性化、衝突安全の向上など、時代が要求するさまざまなニーズに対応して開発された新プラットホームで、これは今後のスズキ車に広く採用されていくことになる。
このプラットホームをベースにすることで、全高はやや低くなっているのに、座らせ方の工夫でヘッドクリアランスが確保された。また、ホイールベースの延長で、クラストップの室内長を実現し、前後席間の距離もこれまでのモデルに比べてグンと広くなっている。
新型アルトのインテリアは、シンプルかつクリーンなデザインでまとめられている。インスト全面に左右に広がる白いパネルが使われていて、広さ感を表現する。このパネルに合わせてメーター、オーディオ、エアコンルーバーなどを横一直線に配置して、見やすく扱いやすいインテリアに仕上げている。
骨格などの基本構造を見直すことで、大幅な軽量化を図ったシートは、シンプルな形状ながら座り心地、ホールド性とも良好だ。シート表皮は清潔感のあるブルー調のファブリックが使われている。
ラゲッジスペースは極端に広いわけではないが、デザイン的な工夫などによってバックドアの開口部を拡大し、広くはないが使い勝手の良い荷室空間を作っている。
また新プラットホームの採用によるホイールベースの延長がありながら、最小回転半径はクラストップの4・2m(15インチタイヤ装着車は4・6m)としている。日本の道路交通環境や駐車場事情の中で、軽自動車の高い小回り性能は魅力だ。
■スズキ アルト価格
・F 5MT 847,800円 4WD 953,640円
5AGS 847,800円 4WD 953,640円
・L CVT 894,240円 4WD 1,000,080円
・S CVT 1,002,240円 4WD 1,102,680円
・X CVT 1,134,000円 4WD 1,229,040円
* 乗用のレーダーブレーキサポート装着車[レーダーブレーキサポート、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル]は21,600円高。(「F 5AGS車」、「L」、「S」)
■スズキ アルト燃費、スペックなど
代表グレード | スズキ アルトSレーダーブレーキサポート付 |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3395×1475×1475mm |
車両重量[kg] | 650kg |
総排気量[cc] | 658cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 52ps(38kw)/6500rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 6.4kg-m(63N・m)/4000rpm |
ミッション | CVT |
JC08モード燃費[km/l] | 37.0km/l |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 1,023,840円 |
発売日 | 2014/12/22 |
レポート | 松下宏 |
写真 | 編集部 |
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