マツダ デミオ新車情報・購入ガイド 先進予防安全装備を標準装備化! しかし「歩行者検知式自動ブレーキ」ではないのはなぜ? [CORISM]
■踏み間違えを起こしにくいペダル配置とした、こだわりのドライビングポジション
マツダ デミオに装着された先進予防安全装備である「i-ACTIVSENSE」は、低速走行時に前方のクルマとの衝突回避をサポートし、被害を軽減する自動ブレーキ「スマート・シティ・ブレーキ・サポート[前進時](SCBS F)」、徐行・停車時に前方の障害物が検知された状態での急発進を抑制する「AT誤発進抑制制御[前進時]」、認知支援技術である、車線変更時に斜め後方の車両を知らせる「ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)」、駐車場などでの後退時に横から近づく車両を検知し接触の危険を知らせる「リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)」だ。マツダは、クラスを超えるという志のもと、先進技術を標準装備したとしている。
マツダ デミオは、2014年に登場したBセグメントに属するコンパクトカー。国産のライバル車は、トヨタ
アクアや日産ノートなど人気モデルがひしめき合う激戦カテゴリーだ。
現行デミオは現在で4代目。先代モデルは、全長3,900㎜とかなりコンパクトなモデルだったのに対して。現行デミオのボディサイズは、全長4,060㎜となり160㎜もボディは拡大された。一般的に、ボディサイズの拡大は、室内スペースを広くするために使われる。
ところが、デミオは居住性よりドライビングポジションを重視した設計が行われた。適切なドライビングポジションを得るために、80mmホイールハウスの張り出しを前方に移動。これにより、ペダル類を右へ20mm移動できるようになり、人馬一体を目指すマツダの考える理想のドライビングポジションが取れるようになった。
このドライビングポジション、予防安全とは関係ないように感じるかもしれない。ところが、この適切なドライビングポジションを取ることで、アクセルとブレーキの踏み間違えを抑制する効果もある。
多くのクルマが、ホイールハウスの影響でアクセルがやや左足寄りにオフセットされているケースがある。アクセルがブレーキ側に近いため、慌てている時などアクセルを踏んでしまうことがあるという。とくに、足の動きや膝、股関節の動きが制限された高齢者などは間違えやすくなる。こうした、そもそも間違えやすいペダル配置にしないというこだわりもマツダならではのものだ。
■車両後方からの衝突リスクを予防する安全装備をクラス唯一標準装備化したデミオ
この3つの機能は、クルマの運転が苦手な女性や高齢者などを中心に安全運転に効果がある。「AT誤発進抑制制御[前進時]」は、最近多い高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違えに効果がある。残念なのは、前方だけの機能に止まっていることで、バック時の踏み間違えには対応していない。後方へのAT誤発進抑制制御が加われば、多くの踏み間違え事故を減らすことができるだろう。
「ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)」は、後側方から接近する車両に対して警報を発してくれる機能。運転が苦手な人は、前方からドアミラーや後側方に一瞬でも視線を移動し、短い時間で接近してくる車両を確認することさえも難しい。そのため、焦りが生まれ、接近してくるクルマの見落としが発生し接触する。高齢者は、目の視界が狭くなっていたり、後方を確認するものの目に首の可動範囲が少なく、見落とすリスクが増える。運転に慣れた人でも、夜間や雨、トンネルの中などで視界が悪いときなどに、うっかりミスをする可能性が高い。こうしたミスを減らすという意味では、日常的にメリットのある安全装備だ。
「リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)」は、バックで駐車する傾向が強い日本だと使うシーンが少ないかもしれない。前方から駐車し、バックで駐車場枠から出る時など、後方から接近する車両を検知し警告を発する安全装備だ。
■見送られた歩行者検知式自動ブレーキ
「歩行者検知式自動ブレーキの装着が見送られているのだ」
デミオに装備されているのは、低速走行時に前方のクルマとの衝突回避をサポートし、被害を軽減する自動ブレーキ「スマート・シティ・ブレーキ・サポート」だ。この機能は、約4~30km/hでの低速走行中、フロントガラスに設置した近赤外線レーザーレーダーで先行車や障害物を検知してブレーキを自動制御し、衝突被害を軽減する。
このレベルの自動ブレーキは、もはや簡易型と呼ばれていて、すでに軽自動車であるスズキ ワゴンRには、歩行者検知式自動ブレーキが用意されているくらいだ。トヨタの自動ブレーキであるトヨタ セーフティセンスCも歩行者検知式ではなく、誇れたものでは無いが自動ブレーキは、マツダより高い約10km/h~80km/hの車速域で作動する。
■デミオの安全装備をブランディングの一部としていないか?
デミオの安全装備は、クルマの中に居るドライバーや同乗者を守る機能としては優れているが、最も弱い歩行者を守るという意識が低い。
さらに、困ったことにデミオをベースとしたSUVであるCX-3には、歩行者検知式自動ブレーキが6MT車を除き標準装備化されているのだ。デミオがベースとされたCX-3なので、デミオに歩行者検知式自動ブレーキが技術的に装着できないという言い訳はできない状況。
これは、スバル インプレッサが歩行者検知式自動ブレーキを含んだ先進予防安全装備であるアイサイトを全車に標準装備化しただけでなく、歩行者エアバッグまで標準装備化したことも影響しているのだろう。また、日産も自動ブレーキが標準装備化を表明している。とくにスバルは、他社が「安全装備は儲からない」という考え方をしている中、逆張りして、スバル=安全というブランドイメージを大幅に強化した。
新世代商品群を投入したマツダは、ブランドイメージを強化を加速中だ。マツダは、とくにデザインと走る楽しさを訴求。対するスバルは、安全と走る楽しさをアピールする。そして、マーケットは高齢者による事故増に対して、よりクルマへの安全性を重視する時代になった。
マーケッターとしては、急速に注目される安全というワードの強化を狙うのは当然のこと。マツダ車は、比較的安全装備の標準装備化が進んでいたが、マツダが今まであまり訴求してこなかっただけに、早急にマツダ=安全というイメージ強化がブランドの強化になると考えるのは当然のことだ。
しかし、そうした考え方は大きな間違いだ。それは、より安全なクルマをマーケットに送り出すのは、人を殺すかもしれない商品を売るメーカーとして、最低限果たさなくてはならない責任であり、安全性能はブランド力アップのためのツールではない。
とくに、コンパクトカーとなるデミオは、安全装備を高めると価格が高くなり売れなくなるというリスクをもつ。あるメーカーは、歩行者検知式自動ブレーキの標準装備化が進めないのは、価格が高くなり販売面でのリスクを避けるためとも言われている。
■本当にクラスを超えたコンパクトカーに育ってほしいデミオ
マツダのHP上には「マツダの安全は、自動ブレーキだけでは終わらない。」というキャッチフレーズが誇らしげに掲載されている。自動ブレーキは、歩行者検知式問わず全部性能は同じ、ともとれるような表現。さらに、デミオの自動ブレーキは歩行者検知式ではなく、低速域だけという特定の条件下の仕様であることが、すぐ分かるように表現されていない。これは、顧客の誤解を生む。
マツダはデミオを、人馬一体の走りと燃費の高次元での両立、魂動デザインによるクラスを超えた存在感など、あらゆる領域でクラスという概念を超えた上質さを追求したコンパクトカーとしている。簡易型自動ブレーキでは、日産ノートさえ超えておらずクラスの平均を超えていない。ブランドイメージの強化ばかりが強いと、こうした本質的に物足りない仕様となってしまうのことが残念だ。
早急に歩行者検知式自動ブレーキを装備し、最大限の安全性能を顧客に提示できる本当にクラスを超えたコンパクトカーになって欲しい。
■マツダ デミオ価格
・13C 2WD 1,382,400円/4WD 1,587,600円
・13S 2WD(5MT) 1,479,600円 1,479,600円(AT)/4WD 1,684,800円
・13S Touring 2WD(5MT) 1,706,400円 (AT)1,706,400円/4WD 1,911,600円
・13S Touring L Package 2WD(5MT) 1,760,400円 1,760,400円(AT)/4WD 1,965,600円
・13S Tailored Brown 2WD 1,738,800円/4WD 1,944,000円
・XD 2WD(6MT) 1,803,600円 1,803,600円(AT)/4WD 2,008,800円
・XD Touring 2WD(6MT) 1,987,200円 1,987,200円(AT)/4WD 2,192,400円
・XD Touring L Package 2WD(6MT) 2,041,200円 2,041,200円(AT)/4WD 2,246,400円
・XD Tailored Brown 2WD 2,019,600円/4WD 2,224,800円
・15MB 2WD(6MT) 1,533,600円
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