三菱ランサーエボリューションX試乗記・評価 後世に名と技術を残し、スポーツモデルとしての歴史を刻んだランエボが一旦幕引き。ファイナルエディションを評価する!
本当に最後のランエボX
最初に断っておこう。この三菱ランサーエボリューション ファイナルエディション は、もう販売していない。
三菱自動車は2015年4月10日にランサーエボリューション ファイナルエディションの発売を前に、予約受注を開始すると発表した。そして、そのときには8月頃に発売と予告していたが、順調に予約が入ったこともあったのか、発売日が7月17日に繰り上がった。そして、発売の時点では限定台数1000台のうち数台を残す程度になっていて、発売直後にすぐに売り切れになったのだ。
なので、これから新車を買える可能性は、基本的にゼロだ。予約を入れた人の中からキャンセルが出れば、それを買うチャンスがあるかも知れないが、基本的に期待できないと考えていい。
三菱ランサーエボリューションの初代モデルは、1992年にデビューした。4代目ランサーをベースにWRCラリー参戦のためにホモロゲーションモデルとして開発されたクルマだった。4代目ランサーをベースにしたモデルはⅠからⅢまでが作られ、5代目ランサーをベースにⅣからⅥまで、6代目ランサーをベースにⅦからⅨまでと、順調な進化を遂げながらモデルを重ね、ギャランフォルティスをベースにしたⅩが2007年10月に登場していた。
今回のランサーエボリューション ファイナルエディションは、エボⅩをベースにしたモデルで、生産中止を前に最終仕様を提供しようということで設定されたモデルである。発売と同時に売り切れになるくらいなら、もう少し多くの台数を設定しても良かったのではないかとか、という声も聞かれるが、1000台を前提に生産計画などを立てているので、これ以上の増産はできないという。
三菱ランサーエボリューションX試乗記・評価の目次
より高回転域でのパワーアップが施されたエンジンは高評価
ファイナルエディションは、ランサーエボリューションの最終進化形ではあるが、ベースのエボⅩからの変更点はそれほど多くはない。内外装のデザインの変更は控えめといっても良いくらいである。
外観はバンパーのカラーとBBS製の専用鍛造アルミホイールのカラーが変更されたほか、ブラックルーフがオプションで設定され、ファイナルエディションのリアバッジが設けられた程度である。
ちょっと詳しい人なら、ダーククロームのホイールカラーと中央にゴールドのBBSオーナメントが装着されていることが見分けられるかも知れないが、普通の人には分からない程度の違いである。
内装も、ピラーと天井をブラックにしたほか、メーターが立ち上がったときに液晶画面に「ランサーエボリューション」の文字が英字で浮き上がるようにした。レカロシートには、赤色の刺繍でロゴが入るほか、パーキングブレーキレバーとシフトノブを合わせて赤いステッチが入っている。シフトレバーの先のコンソールにはシリアルナンバープレートが配置される。
三菱ランサーエボリューション ファイナルエディションのメカニズム面では、ナトリウム封入排気バルブの採用でエンジン出力を向上させた点が注目される。熱伝導率の高いナトリウムを封入することで、エンジンで発生する熱を効率的に逃がすことができるようになり、中高回転域でのエンジン出力が向上したのだ。
エボⅩでは221kW/422N・mだったパワー&トルクが、ファイナルエディションでは230kW/429N・mに向上している。
ちなみにのナトリウム封入排気バルブは、エボⅨまでのモデルにも採用されていたが、エボⅩになったときにエンジンが4B11型に変わったことで、ナトリウム封入排気バルブなしでも十分なパワーが出せるとして一旦廃止されていたものだが、今回のファイナルエディションで改めて採用されることになった。
雨のサーキットでこそよく分かる4WD機能の「曲がりやすさと、扱いやすさ」
富士スピートウェイのショートコースでの試乗で実際に走らせた印象は、パワーアップがそれがはっきりと体感できるようなほどではなかったが、標準仕様のベース車と比較すると、エンジンを高回転域まで回していくときのパワーの伸び感が良く、回したときのパンチ力に優れれている。本当に回す価値のあるエンジンという印象だ。もちろんこのエンジンを回せるシチュエーションは限られたものになるのだが。
ファイナルエディションで改めてエボⅩを走らせて感じたのは扱いやすくて良く曲がる4WD車 であるということだ。
エボⅩには、三菱の最新技術がテンコ盛りに入れられている。前後輪の駆動力配分をコントロールするACD(アクティブ・センター・デフ)、クルマに働くヨーモーメント(回転方向に働く慣性力)をコントロールするAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)、ASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)などを総合的に制御するS-AWCが搭載され、さまざまな走行条件で4輪に働く駆動力や制動力を最適に制御することで、コントロール性に優れた走りを実現する。
この日は本降りの雨だったので、抑制した走りに徹して試乗したが、落ち着いた挙動の安定した走りは特筆モノだった。途中、本来ならウェット路で使うグラベルモードではなく、ドライのオンロードで使うターマックモードにして走ると、テールが滑りやすくなるが、その状態でも挙動をコントロールしやすく扱いやすさが印象的だった。
このS-AWCの機能は、アウトランダー やアウトランダーPHEV などに採用されており、今後の三菱車にも進化した仕様が搭載されていくはず。その意味でも技術的にやりきった感のあるランサーエボリューション・ファイナルエディションは注目されるクルマである。
三菱ランサーエボリューションXファイナルエディション価格、仕様概要
■三菱ランサーエボリューションXファイナルエディション価格:4,298,400円
【主要諸元】
全長×全幅×全高 4495mm×1810mm×1480mm
ホイールベース 2650mm
トレッド 1545mm(前後)
最低地上高 140mm
車両重量 1530kg
エンジン 4B11型 2.0L DOHC 16バルブ 4気筒 MIVECインタークーラーターボ
出力 313ps/6,500rpm 429Nm/3,500rpm
トランスミッション 5速マニュアル
サスペンション 前:マクファーソンストラット式 後:マルチリンク式
ブレーキ 前:ベンチレーテッドディスク(4ポット、2ピース) 後:ベンチレーテッドディスク(2ポット)
タイヤ 245/40R18 93W
(1)エクステリア
フロントグリルモールをダーククロームメッキとし、バンパーセンターとボンネットフードエアアウトレットを光沢のあるグロスブラック塗装、BBS社製18インチ鍛造軽量アルミホイールをダーク調塗装とするなど全体でコーディネートを図り、精悍さをいっそう引き立てた。
ボディカラーは全5色の設定とし、ルーフ部をブラック塗装とした2トーンカラーをメーカーオプションで設定し、10色展開(モノトーン5色+2トーン5色)とした。
(2)インテリア
室内天井と各ピラーを内装基調色のブラックに統一してスポーティ感を高め、アクセントとしてRECARO社製レザーコンビネーションシート、ステアリングホイール、シフトノブ、パーキングレバー、フロアコンソールリッドのステッチをレッドとした。
(3)エンジン
4B11型 2.0L DOHC 16バルブ 4気筒MIVECターボエンジンに、新たにナトリウム封入エキゾーストバルブを採用し、最高出力を向上させ、中高速域で伸びのある出力特性とした。
(4)シャシー
従来はメーカーオプション設定のハイパフォーマンスパッケージ(BILSTEIN社製前後単筒式ショックアブソーバー、Eibach社製前後コイルスプリング、brembo社製2ピースタイプフロント大径ベンチレーテッドディスクブレーキ、ハイパフォーマンスタイヤ)を標準装備。
(5)その他の特別装備
リヤトランクに「Final Edition」のエンブレム、フロアコンソールにシリアルナンバープレートを採用し、マルチインフォメーションディスプレイのオープニング画面では「Final Edition」を表示するなどにより、プレミアム感を高めた。
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