コンセプトは「フレンドリー エコ ハッチバック」
これまでも、派生モデルなどで海外生産車を国内へ導入する例は各社で見られたが、販売の主力となる量販基幹車種を海外から輸入するのは日本車では過去にも例がない。しかし「海外製の安い小型車だから」とのエクスキューズなしに、日本の生産ライン同等の厳しい品質基準で行っている点が特筆される。タイの生産工場では出荷ラインに加え「念入りライン」なる品質チェックの工程が加えられたほか、日本へ陸揚げされた際にも、神奈川・追浜工場でさらなるPDI(出荷前点検:Pre-Delivery Inspection)を行うなど、まさに「念入り」にチェックされてユーザーの元に届くような仕組みが構築された。
日産では過去に「ミストラル」や「デュアリス」(のちに日本製に変更)といった海外生産車を日本市場に導入している例があるが、この時の課題解決やノウハウの蓄積も今回のマーチには十分に生かされているようだ。
「PURE DRIVE」アイドリングストップでクラストップの低燃費
新型「HR12DE」型エンジンは、排気量こそ従来同様の1.2リッターながら4気筒から3気筒へと変更し、基本性能でまず熱効率の向上と抵抗の低減を図った。これに「PURE DRIVE」アイドリングストップ機構を標準装備したグレードを設定。信号待ちや渋滞などの停止時にエンジンを自動に停止させることで無駄になるガソリンを節約し、燃費性能はさらに向上させた。
組み合わされるトランスミッションは、新開発の副変速機(2段変速機)付きエクストロニックCVT。従来型のCVTに対し変速比幅を約2割拡大し、低速からの立ち上がりの良さと高速時のさらなる静粛性向上を実現させた。また小型軽量化や抵抗の低減化なども実施し、こちらも燃費向上に貢献する。これらの積み重ねにより、アイドリングストップ装着車では26.0km/L[10・15モード燃費]とハイブリッドカー並みの低燃費を実現させた。これはアイドリングストップ非装着車に比べ、リッターあたり2km/Lの燃費向上を実現している。なおアイドリングストップ非装着車、4WD車も含め、新型マーチは全車がエコカー減税75%対象車にも適合する。
また車体設計では、新型Vプラットフォームを新採用。空気抵抗低減や部品統合による軽量化の取り組みも行われ実用燃費の向上を助けるとともに、コスト削減にも役立てた。
ワールドワイドに展開するがゆえ、デザインは少しコンサバに
新型マーチの外観デザインは、女性ウケするキュートなデザインだった先代に比べると、基本的なイメージは継承しながらも少しおとなしくなった印象を受ける。しかしその分、より幅広いユーザーが受け入れられるものへと進化したとも言える。これは、主に日本と欧州で販売されていた先代モデルに対し、新型マーチがおよそ160カ国で販売されるグローバルモデルへと躍進した影響も大きい。
インテリアは、上下2段用意されたグローブボックスなど、先代に比べ収納やポケット類を大幅に充実させ、使い勝手を向上させた。またドライビングポジションを高め、フロントウィンドウのガラスエリアも拡大するいっぽう、メーター内にタイヤの切れる向きを表示する「タイヤアングルインジケーター」を装備するなど、もともと良かった視界や取り回し性能もさらに向上した。
ボディカラーは、相変わらずマーチらしいカラフルな色味を中心に全部で9色が用意される。いっぽうインテリアカラーは「ブラック/アイボリー」「ナチュラルグレー」「ブラック」の3色から選択出来るようになった。
ラインナップは、ベーシックな「12S」999,600円、アイドリングストップ付き「12X」1,229,550円と、同・上位グレード「12G」1,468,950円、さらに電動4WD(アイドリングストップなし)の「12X FOUR」1,404,900円、「12G FOUR」1,644,300円の全5グレード。全車がエクストロニックCVT(無段変速機)となる。先代マーチの「12S」が1,200,150円、上位グレードの「12E」が1,319,850円だったことを考えると大きく値下げされたことが判るが、失礼ながらタイ製と聞いて我々が勝手に思い浮かぶほどの格安プライスではなかったのは、船便の輸送費に加え、最初に記したように厳しいクオリティチェックの工程が負荷となっているのかもしれない。
特に、新型の「12G」グレードはやや割高な印象を受ける。もちろん12GにはオートエアコンやSRSカーテンエアバッグ、運転席アームレスト、リア6:4可倒式シートなど数々の機能が標準装備される。ただしライバルの「トヨタ ヴィッツ」がカーテンエアバッグを(ほぼ)標準装備している中で、最上位グレードにのみ標準装着(12Xにオプション)ではあまりほめられない。さらに、VDC(横滑り防止装置)が相変わらずオプションリストにも載っていない点は、2010年にデビューするクルマとしては不満が残る。ちなみに、新型マーチは輸入車ということもあってか、メーカーオプションの選択肢自体も多くはない。[※価格は全て消費税込み]
代表グレード | 日産 マーチ 12X[FF] |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3780×1665×1515mm |
車両重量[kg] | 950kg |
総排気量[cc] | 1198cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] | 79ps(58kW)/6000rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 10.8kg-m(106N・m)/4400rpm |
トランスミッション | エクストロニックCVT |
10・15モード燃費[km/L] | 26.0km/L |
定員[人] | 5人 |
消費税込価格[万円] | 1,229,550円 |
発売日 | 2010/07/13 |
レポート | 徳田 透(CORISM編集部) |
写真 | CORISM編集部/日産自動車 |
ちょっとエレガントなもうひとつのマーチ「マーチ ボレロ」も同時発売
マーチ ボレロは、主にフロント周りの意匠を大胆に変更し、エレガントな高級感を与えたモデルだ。専用のフロントバンパーやグリルを与えたほか、専用シート地や専用モノトーンインテリア、専用アルミホイールなどを装備し、独自の個性を主張する。ボディーカラーは全4色を設定。「12X」「12X FOUR」をベースに本革巻ステアリングやメッキインナードアハンドル、オゾンセーフフルオートエアコンなど、上位グレード並みの装備とした。価格は、2WD車が1,465,800円、4WD車が1,641,150円[ともに消費税込み]。
いっぽうのマーチ ライフケアビークルは、助手席回転シートの「アンシャンテ」を
両車とも全国の日産販売店で販売され、エコカー減税などもベースモデル同様の扱いとなる。
なお「マーチ ボレロ」は7月13日にマーチと同時発売。「マーチ ライフケアビークル」は少し遅れて2011年1月の発売を予定する。
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