BMWは、主力のBMW3シリーズに新バリエーションとなる「BMW 3シリーズ グランツーリスモ」の発売を開始した。

　BMW3シリーズは、2012年1月にデビュー。セダンとワゴンのボディが用意された。エンジンは、ガソリン車だけでなく、ディーゼルとハイブリッドがあり一部には4WDのXドライブも存在し、非常に幅の広いラインアップを誇る。さらに、欧州では全幅1,800mmを超えているのだが、日本専用に全幅を1,800mmに抑え、日本の駐車場事情に合わせるなど、輸入車メーカーとしては珍しいくらい日本マーケットを意識した仕様となっている。そんなことなどが評価され、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、高い評価を得たモデルだ。

　もはや、十分なほどのバリエーションを誇るBMW3シリーズなのだが、今回クーペのようにエレガントでダイナミックなフォルムでありながら、快適で広々とした室内空間と機能的で実用性に優れたラゲッジ・スペースを兼ね備えたBMW3シリーズ グランツーリスモが登場した。いわゆる4ドアクーペなどとも呼ばれ、少し複雑だがBMWでは、7シリーズをベースにした5シリーズグランツーリスモがある。

　バリエーション追加というと、リヤ部分だけ変更したのかと思うが、リヤデザインだけでなくフロント部分もよく見ると、意外と違うことに気がつく。より幅広くデザインされたパワフルなキドニー・グリルと、新たなデザインのフロント・エプロン装備される。この部分が、BMW3シリーズ グランツーリスモの弱点ともいえるところで、もう少し差別化して欲しいところでもある。5シリーズ グランツーリスモもそうだったが、4ドアクーペというより、全体的にポテっとしているため、ワイド＆ローなBMWのイメージとマッチしないためか、日本マーケットに馴染むには少々時間がかかりそうだ。　

　搭載されるエンジンは、320iと328iグランツーリスモには直4 2.0LのBMWツインパワー・ターボ・エンジンと8速ATの組み合わされ、アイドリングストップ機能も装備される。335iグランツーリスモには、直6 BMWツインパワー・ターボ・エンジンと8速AT、アイドリングストップ機能の組み合わせだ。3シリーズで抜群の人気を誇っているクリーンディーゼルエンジンが用意されていないのが、少々残念といえる。

　室内の空間は、大幅に拡大した。BMW3シリーズ ツーリングから、全長20cm、ホイールベース11cm、全高が5cmも拡大。この結果、全ての乗員によりゆとりある室内空間を提供することができた。また、約6cm高くなったシート・ポジションにより、良好な視界となり、さらに快適な乗り降りが可能となっている。とくに、後席は3シリーズ ツーリングから約7cm拡大されたレッグ・スペース、ゆとりのあるヘッド・クリアランス、そして、左右のサイド・サポートを含めフラットなデザインを採用したシート・ベンチにより、大人3名が快適に過ごせるスペースを実現されている。輸入車では珍しいフレームレス・ウインドーが、より開放感あふれる空間を生み出している。

　BMW3シリーズ グランツーリスモのラゲージ・ルームは520Lの大容量。リヤシートのバックレストを折りたたむと、最大1,600Lまで拡大可能だ。積載性向上のためリヤ・シートのバックレストは、40：20：40の3分割に倒すことが可能となった。さらにバックレストの角度は、8度から27度まで15段階でリクライニングができるため、後席の乗員が自由に設定できるだけでなく、ラゲージ・ルームを自由にアレンジすることができる。

　一般的に、全高が上がれば空気抵抗が増し、燃費に影響する。そのため、BMW3シリーズ グランツーリスモはエア・ブリーザーと呼ばれる機能が追加された。フロント・ホイール・ハウスに流れこむ空気を、フロント・サイド・パネルに設けられたエア・ダクトから放出することで、ホイール周辺で発生する乱気流を抑え、空気抵抗を低減するというものだ。

　さらに、BMW初となるアクティブ・リヤ・スポイラーを装備。車速に応じて自動的に上昇／格納することで、車両後方の空気の流れを調整し、最適なダウンフォースを確保。優れた空力性能を生み出し、走る楽しさにも貢献している。

　BMW320iグランツーリスモの価格は494万円。BMW320iツーリングの価格が471万円なので、23万円高となる。積載性という点では、ツーリングが495～1,500Lなのに対して、グランツーリスモは520～1,600L。リヤシートを畳まなければ25Lの差。リヤシートを畳むと100Lもの大きな差が出る。ただ、このクルマでリヤシートを畳んでまでして積まなくてはならない荷物が、どれほどの頻度であるのかを考えれば、積載性という視点で選ぶのではなく、やはり居住性という視点で選ぶということになる。とくに、3シリーズ ツーリングより後席が約7cm拡大されたレッグ・スペースをもつということなので、後席にゲストを乗せることが多く、よりリラックスして乗って欲しいと思い顧客向けということになる。

　燃費は、BMW320iグランツーリスモが15.0km/L。BMW320iセダンが16.6km/L。BMW320iツーリングが14.5km/L。ボディ形状や車重により若干違う。また、最小回転半径はセダンとツーリングが5.4m、グランツーリスモが5.7mとなっている。5.7mというと、国産大型ミニバン並なので、3シリーズとはいえ狭い駐車場での出し入れは苦手気味だ。

■BMW 3シリーズ グランツーリスモの主な標準装備品
ブレーキ・エネルギー回生システム
エンジン・オート・スタート/ストップ機能
ドライビング・パフォーマンス・コントロール（ECO PROモード付）
エア・カーテン、エア・ブリーザー
アクティブ・リヤ・スポイラー
バイ・キセノン・ヘッドライト（光軸自動調整機構／LEDスモールライト・リング、LEDアクセント・ライン付）
PDC／パーク・ディスタンス・コントロール（リヤ、ビジュアル表示機能）*
リヤ・ビュー・カメラ（予測進路表示機能付）
コンフォート･アクセス（テールゲート・スマート・オープナー機能付）
オートマチック・テール･ゲート･オペレーション
オートマチック・エアコンディショナー（AUC〔オートマチック・リサ―キュレーティング・エアコントロール〕、マイクロ・フィルター〔花粉除去機能付〕、左右独立温度調節機能付）
電動フロント・シート（運転席&助手席、運転席メモリー機能付）
スルーローディング・システム（40:20:40分割可倒式リヤ・シート）
8.8インチ・ワイド・コントロール・ディスプレイ
HDDナビゲーション･システム（VICS3メディア対応）
iDriveコントローラー
インテグレイテッド・オーナーズ・ハンドブック
スピーチ・コントロール（音声入力システム）
ハンズフリー・テレフォン・システム
USBオーディオ・インターフェース
ETC車載器システム（ルーム・ミラー内蔵タイプ）
*：　335iはフロントのPDCも標準装備（320iおよび328iはオプション）。