新型フィットを越えられるか? クラストップの燃費26.4㎞/L
スズキは主力のコンパクトカー、スズキ スイフトに数々の低燃費技術を搭載したグレードを設定し、発売を開始した。
今回スズキ スイフトに設定された新グレードは、低燃費と力強い走りを両立した新開発「デュアルジェット エンジン」に、減速エネルギー回生機構「エネチャージ」や「エコクール」、新アイドリングストップシステムなどスズキグリーン テクノロジーを惜しみなく搭載している。
減速エネルギー回生機構「エネチャージ」は、鉛バッテリーに加え、高効率なリチウムイオンバッテリーと高効率・高出力のオルタネーターを併用したものだ。
効率よく発電した電力を、より効率的に使いアイドリングストップ時間を長くとるための技術がエコクール。アイドリングストップ中、エアコンが停止し送風状態になった時、蓄冷材を通した冷風を室内に送ることで車室内の温度上昇を抑制し、長時間のアイドリングストップを実現する。
さらに、停車前の減速時、アクセルを離したときから燃料をカットし、さらにブレーキを踏んで13km/h以下になると自動でエンジンを停止するアイドリングストップ機能などの機能は、基本的にすでにワゴンRに搭載された技術。
これだけでも十分な低燃費化できるのだが、スズキはさらに新開発のデュアルジェット エンジンを投入。この名から想像できる通り、今までガソリンを噴霧するインジェクションが1本だったのに対して2本となっている。
このデュアルインジェクターの役割りは、大きく2つある。ひとつめは、ガソリンを微粒化し熱効率を上げ、同時にノンキングも抑制。ふたつめは、インジェクターの配置を燃焼室に近づけた。これにより、燃料噴射のタイミングが適正化。さらに、燃料筒内直入率の向上と、ガソリンによる冷却効果による筒内温度の低減によるノンキング抑制が上げられる。
これは、圧縮比を従来の11.0から12.0へ引き上げたことによるノンキング対策ともいえる。高圧縮比による低燃費化は、すでにマツダのスカイアクティブが実証。スカイアクティブの13.0や14.0まではいかないにせよ、高圧縮比化により燃費の向上が狙いだ。
高圧縮比化すると、必ず問題になるのがノッキング。これを回避するために、さらに水冷式のクールドEGRシステムも採用されている。これは、排気ガスの一部を冷却し、シリンダー内に戻し温度を下げることでノンキングの抑制をするものだ。さらに、数々の低フリクション化も施されており、このK12B型と呼ばれるエンジンは、型式は同じでも別物といった進化となった。
その結果、出力とトルクは維持しつつも、燃費を約21%も向上。21.8km/Lから26.4㎞/Lへと大幅に進化させている。これは1.2L以上のガソリン車トップの数値。同じ1.2L自然吸気エンジンの日産ノートが22.6㎞/Lなので、かなりの低燃費エンジンとなっている。
このデュアルジェットエンジンを搭載した4WDもあり、こちらも22.6㎞/Lと低燃費で、FF&4WDともエコカー減税は免税。降雪地帯の顧客にもウレシイ低燃費車となった。
この燃費向上の理由は、マツダ デミオはもちろん、日産ノート、マーチにも燃費で越えられてしまい、低燃費を武器には戦えない状態であること。さらに、9月にはホンダ フィットの1.3L車が恐らくデミオの25.0㎞/Lを超える低燃費でデビューすることなどもある。軽自動車での燃費競争が、ついにコンパクトカーも巻き込み始めたといっていいだろう。エコクールなどは、夏場などは実燃費に大きく影響する機能だけに、スズキ スイフトの燃費には期待できるだろう。
安全面では、ようやく横滑り防止装置(ESP)が全車標準装備化された。このことで、未だ標準装備化されていない日産ノートやマーチとは、安全装備面でリードすることになる。つまり、日産ノートやマーチには、燃費や安全装備で上回るパフォーマンスをスズキ スイフトが手に入れ高い完成度を誇る。
新型ホンダ フィットには、追突軽減自動ブレーキが恐らくオプションで装備できる予定だ。そうなると、スズキ スイフトも追突軽減自動ブレーキであるレーダーブレーキサポートの早期投入が望まれるだろう。
燃費・安全装備の向上により、非常にオススメできるコンパクトカーとなったスズキ スイフト。しかし、価格アップも大幅だ。上級グレードのXJが1,491,000円。これでも、このクラスの中では、かなり高価なのに対して、デュアルジェットエンジンやエコクールなどが装備されるXJ-DJEになると1,608,600円となり約12万円もアップする。
実際に試乗した感じは、非常にレスポンスに優れ、少しクルマが軽くなった印象を受けた。燃費は同じコースをワゴンRと比べたところ、ワゴンRが20.4㎞/Lでスイフトが18.2km/Lと約10%くらい落ちた程度という低燃費性能を誇った。
確かに高価な分、成果と価値は十分だ。こうなってくると、やはりホンダ フィットの価格を見てから買うのがオススメとなる。価格軸では、マツダ デミオもかなり価値がある。今のところ、コンパクトカーを買うならフィットを待って、スズキ スイフトと新型フィット、デミオを購入リストに入れて検討することをオススメする。
スズキ スイフト価格、スペック、概要など
■スズキ スイフト価格
XG 5MT 2WD 1,279,950円
CVT 2WD 1,279,950円
4WD 1,489,950円
XG-DJE 2WD 1,397,550円
4WD 1,576,050円
XL 5MT 2WD 1,367,100円
CVT 2WD 1,367,100円
4WD 1,577,100円
XL-DJE CVT 2WD 1,484,700円
CVT 4WD 1,663,200円
XS CVT 2WD 1,491,000円
CVT 4WD 1,701,000円
XS-DJE CVT 2WD 1,608,600円
CVT 4WD 1,787,100円
特別仕様車スイフト RS
5MT 2WD 1,426,950円
CVT 2WD 1,426,950円
CVT 4WD 1,636,950円
■「スイフト」一部改良の主な特長
<新エンジンとエネチャージで、低燃費と力強い走りを実現>
26.4km/L※2の低燃費を達成
XG-DJE、XL-DJE、XS-DJE 2WD・CVT車は、「デュアルジェット エンジン」と「エネチャージ」をはじめとする「スズキグリーン テクノロジー」の搭載により、従来アイドリングストップ車※4(21.8km/L※5)に対し、約21%向上(+4.6km/L)となる26.4km/L※2を実現した。
※4 XG アイドリングストップ、XL アイドリングストップ 2WD・CVT車比。
※5 燃料消費率JC08モード走行(国土交通省審査値)
<デュアルジェット エンジン(XG-DJE、XL-DJE、XS-DJE、XG・XL・XS・特別仕様車スイフト RSの4WD車)>
K12B型エンジンをベースとし、圧縮比アップ(11.0→12.0)による燃焼効率の改善や、各種エネルギーロスの低減などにより熱効率を極限まで追求した新開発エンジンを採用。低燃費と力強い走りを両立した。
これらの性能を実現する為、1気筒あたり2本のインジェクター(燃料噴射装置)を装備したデュアルインジェクションシステムを採用した。
<デュアルジェット エンジンを支える主な技術>
最適な燃焼室形状の工夫
圧縮比を高めるために燃焼室をコンパクト化し、ピストン上部もなだらかな凹形状にしたことで、小径化した吸気ポートからつくられる吸気の強い渦を保持し、燃焼室内の筒内流動を強化。燃焼室内の火炎伝播速度が上がることで、熱効率が向上した。さらに火炎の偏りも改善し、ノッキングを抑制する。
デュアルインジェクションシステムの採用
1気筒あたり2つのインジェクターを設置。デュアルインジェクターで燃料を霧状に微粒化して噴射し、燃料が燃えやすくなることで熱効率が向上。インジェクターの配置を燃焼室に近づけ、噴射タイミングを適正化させることで筒内直入率を高め、ノッキングも抑制する。
クールドEGRシステムの採用
排出ガスの一部を冷却して燃焼室内に再循環させて燃焼温度を下げ、圧縮比アップに伴う筒内温度上昇によるノッキングを抑制する。*EGR…Exhaust Gas Recirculation
冷却性能の向上
ウォータージャケットの形状の改良や、ピストンの裏側にオイルを吹き付けて冷却するピストンクーリングジェットの採用により冷却性能を高め、ノッキングを抑制する。
低フリクション化
ピストンをはじめ、シリンダー、クランクシャフト、タイミングチェーン、オイルポンプなどに様々な改良を施すことで、さらなるフリクション(摩擦抵抗)の低減を図った。
<エネチャージ(XG-DJE、XL-DJE、XS-DJE)>
既存のアイドリングストップ車専用の鉛バッテリーに加え、高効率なリチウムイオンバッテリーと高効率・高出力のオルタネーターを併用した、スズキ独自の減速エネルギー回生機構を採用。
<新アイドリングストップシステム(XG-DJE、XL-DJE、XS-DJE)>
停車前の減速時、アクセルを離したときから燃料をカットし、さらにブレーキを踏んで13km/h以下になると自動でエンジンを停止する「新アイドリングストップシステム」を採用。
<エコクール(XG-DJE、XL-DJE、XS-DJE)>
アイドリングストップ中、エアコンが停止し送風状態になった時、蓄冷材を通した冷風を室内に送ることで車室内の温度上昇を抑制する機構を搭載。
<低燃費運転の支援(XG-DJE、XL-DJE、XS-DJE)>
運転状態や、エネチャージ作動時のエネルギーフローの表示などによりエコドライブをサポートする専用メーターを採用した。
<ステータスインフォメーションランプ>
通常運転時は青、燃費効率が良い運転状態では緑、エネチャージ作動時は白色に変化する。
エネルギーフローインジケーター
走行時やエネチャージ作動時のエネルギーフローを表示。充電状態もひと目で確認できる。
<エコスコア>
運転時の状態を採点し、エコドライブ度を木の葉のアイコンによって20段階に表示。
マルチインフォメーションディスプレイ
アイドリングストップ時間・節約燃料、平均燃費や航続可能距離など、エコドライブに役立つさまざまな情報を表示。
<ESP(R)(車両走行安定補助システム)を全機種に標準装備>
各種センサーで走りを監視し、タイヤのスリップや横滑りを抑制するESP(R)を標準装備した。
<エモーショナルなデザイン>
躍動感あふれるエクステリア
躍動感あふれる新形状のフロントバンパー、グリルを採用。
ロアグリルはよりワイドに、ラジエーターグリルは立体感のあるメッシュタイプとし、スポーティーさと力強さを調和させた。
フォグランプベゼルに上質な印象のLEDイルミネーションランプを採用(XS、XS-DJE)。
力強い走りをイメージさせる新デザインの16インチアルミホイール(XL、XL-DJE、XS、XS-DJE)。
上質なインテリア
ブルーの差し色を用いた、光沢感のあるファブリックシート表皮を採用。スポーティーさを保ちながら、華やかな印象を加えた上質なインテリアとした。
<ボディーカラー>
新色の薄い青色「ルミナスブルーメタリック」をはじめ、全6色の車体色を設定。
<特別仕様車「スイフト RS」の一部仕様変更>
迫力あるフォルムを演出する、専用開発のフロントアンダースポイラーやリヤアンダースポイラーを採用し、全長を25mm拡大。
スポーティーな印象を高める、新開発の専用ファブリックシート表皮。
走りへの自信を主張する、新デザインのRS専用リヤエンブレム。
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