軽自動車の本質を磨き抜くと、超低燃費と低価格。第3のエコカー【ダイハツ ミラ イース試乗評価】
軽自動車の本質を磨き抜くと、超低燃費と低価格。第3のエコカー【ダイハツ ミラ イース試乗評価】の目次
地道な効率アップが生んだ超低燃費性能! 第3のエコカー、ダイハツ ミライース
「第三のエコカー」をテーマに、人気タレントをドラマ風に使いティーザー広告。第三のエコカーというキーワードは、インターネット上でも多数検索された。そして超有名外人俳優を使っての、低価格&低燃費広告など、新型ダイハツ ミライースのCMはとにかく話題になった。
そして、満を持して登場した新型ミライース。このミライースを見て、拍子抜けした人は多いと思う。第三のエコカーというのだから、ハイブリッドではなく電気自動車でもないなら何にが出るのだろう? と、過剰に期待し過ぎていたのは確かだ。期待は裏切られた訳でもないが、登場したミライースは、普通のガソリン車であった・・・。
普通のガソリン車とはいえ、10・15モード燃費32.0km/Lは、称賛に値する数値で、このパフォーマンスを79.5万円からという低価格で手に入れことは凄いこと。マツダのSKYACTIVのようにコストをかけた新しい技術開発ではない。地道にコツコツと、コストを抑え効率を突き詰めていく根気が必要な開発がミライースの売りでもある。
努力の賜物といえる開発のポイントは、大きく分けると3つある。ひとつ目は、エンジン&CVTの効率向上。既存技術をベースに、徹底的に細部を見直し効率を上げた。ミラに比べ約40%もの燃費向上を果たしており、エンジンは+14%、CVTは+4%の貢献をしている。
ふたつ目は、車両の軽量化だ。ミライースは、ミラに比べ約60kgの軽量化を実現している。ミライースは、アイドリングストップ機能など燃費向上アイテムの追加で15kg程度重くなっている。そこで、ボディや内装部品でトータル75kgの軽量化を実現。15kg重くなった分と差し引き60kgとなっている。
三つ目は、エネルギーマネジメントだ。大きなものでは、アイドリングストップ機能。ほとんどのアイドリングストップ機能装着車が停止してからエンジンを止めるが、ミライースは7km/hになるとエンジンを停止する。クルマが7km/h以下になり、完全に停止するまでの僅かな時間でさえ、エンジンを停止させる。まさに、塵も積もれば作戦。
もうひとつが、減速エネルギー回生機能。エンジンには、車内で使う電気を発電するための発電機が装着されている。発進したり加速するときには、これが抵抗となる。そのため、ミライースは減速時にできるだけ集中発電するなどの制御技術を取り入れている。
軽さは武器だ!
試乗してみると、まず車両の軽さがすぐに感じられた。アクセル操作に対して反応がよく、クルマがスイっと動き出す。重いハイトワゴン系の軽自動車にはない軽快感だ。比べてみるとタントのGが930kgに対してイースのGは730kgと200kgも軽量。そのため、スイスイ、キビキビと街中を走ることが可能。スズキのアルトに乗った時も、軽さのメリットを実感したが、ミライースはさらにその上を行く。アルトのXより、さらに30kg軽量なのだ。
キビキビと走ることができるミライースなのだが、乗り心地やフットワークは、残念ながら今までのミラの延長線上にあって、ちょっと良くなった程度。ガタピシ感は無いが、細かい凸凹をしっかり体に伝えてくるし、カーブでは大きくロール(傾く)する。タントほどの乗り心地ではなく「安いのだから仕方がない」という割り切りが必要。
ただ、タントなどのようにファーストカーとして使える高級な軽自動車ではなく、毎日の足という道具としての使い方を考えれば、十分以上な条件は満たしている。価格と燃費のバランスは、とにかく超一級品なので、購入するときに「生活の足」という意識で買えば満足度はかなり高い。ドンドンと広く豪華になって高価になっていく軽自動車。そんな傾向が強くなる中で、軽自動車がもつシンプルな魅力を再確認したモデルでもある。
26.2km/L? 超低燃費は本当だった! しかし、ヘッドレストが無い!
さて、試乗は千葉県幕張付近の郊外路。信号も少なく、スピードは60km/h程度で流れも良好。良い燃費が期待できる条件だ。
約1時間ほど走行した結果、なんと26.2km/hを記録。条件が良い環境とはいえ、かなりの燃費である。ハイブリッド車のプリウスなら、確実に30km/Lを超える好条件での燃費とはいえ、ガソリンエンジンだけでこの燃費はさすがだ。
アイドリングストップも、意識していなければ、7km/h以下でエンジンが停止していることになかなか気が付かないだろう。街中をのんびりと流している状態では、再始動も違和感は無かった。振動や音も値段の割には良くできている。おもしろいのは、再始動時に車内で聞こえる音と、車外で聞こえる音がかなり違うようで、横断歩道の手前で停止して、再始動時した直後に多くの歩行者が再始動時の音に驚き振り返っていた。これは、多くのアイドリングストップ車にいえることで、日産マーチなども立派な音がする。とはいえ、車外音も少し抑える必要もあるだろう。
自発光式メーターもなかなか高級感があり、燃費運転をアシストする仕組みが満載だ。アイドリングストップした時間や、節約できたガソリンの量も表示される。メーター上部と下部にある帯状の証明は、グリーンが燃費が良い状態を示す。メーター全体の色が変わる感じなので、メーターを凝視する必要はなく、視線移動が少ないので安全性にも優れる。
安全面に関しては、ダイハツの安全思想の低さを感じさせる部分があった。後席のヘッドレストが装備されていないのだ。ヘッドレストは、追突したり衝突したときに、重い頭が前後にふられた時に、一旦後方で力を受け止めてくれる重要な安全装備のひとつ。これがないと、もしものときに首に大きな障害が出る可能性が高い。
発表直後に開発責任者に「なぜヘッドレストが装備されていないのか」と質問したところ「このタイプの軽自動車には、ほとんど人を乗せることがないから」と答えてくれた。つまり、もし、後席に人が乗ったときは危ないのを承知の上ということになる。極端に言えば、ミライースの後席には、人を乗せてはいけないと言っているようなものだ。もし、知らないで後席に乗って、何かしらの事故にあった場合「ほとんど後席に人は乗らないので、運が悪かったですね」となる。果たして、それでいいのだろうか?
取材時に、数人の技術者とヘッドレストの話をすると「何とかしなくてはいけない問題です。早急にヘッドレスト装着の検討をしたい」と言ってくれたのが救いだろう。ミライースを買うなら、ヘッドレストが付いてからをおすすめする。このコストダウンも、冒頭のCMタレントの契約料になっていると思うと切ない気持ちになってしまう。
軽自動車の原点回帰、安くて燃費の良いクルマ、それが第三のエコカー。軽自動車にアレコレと必要以上に求めず、シンプルに移動の道具として捉えたなら、これほど良いクルマはない。ただし、何度もいうが後席ヘッドレスが付いてからが買いであると評価したい。
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