全長5m全幅2m車重2トン超の巨大なFF車なのに、超低燃費なエコブーストってなんだ?【フォード エクスプローラー試乗評価】
■2トン超ボディに2Lエンジンで大丈夫? 低燃費エコブーストとは?
EcoBoost(エコブースト)とは、フォードの環境性能をアップさせた新世代エンジンだ。考え方はVWのTSIエンジンと同じで、小排気量&過給器を組み合わせ低回転で大トルクを得る。低回転で大トルクがあると、エンジンの回転を上げなくても高いギヤを使い速度を上げることができ低燃費化できるメリットがある。今回、フォード エクスプローラーに搭載されたエコブーストも、そんな目的を持ったエンジンだ。
2011年5月にフルモデルチェンジし日本に上陸したフォード エクスプローラー。モノコックボディ構造へ変更され、すべてが新しくなり高級SUVとしての価値が上がった。しかし、日本や欧州を中心とした急加速している低燃費化への対応は遅れ気味。3.5Lガソリンエンジン車の10・15モード燃費は、7.6km/Lと旧型に比べれば圧倒的に燃費アップしたものの日本車や欧州車のトップレベルの低燃費車と肩を並べるほどではないのが現実だった。
そんな状況下にあったフォード エクスプローラーに、ダウンサイジングしたエコブーストがあると知ったときは、ついに、アメ車が燃費で世界と会話できるレベルに来たのかと、期待が高まった。
高まる期待の中、エクスプローラー エコブーストとご対面。しかし! ボクにとっては、想像を絶する事実が待っていた。なんと、なんとエコブースト車はFFのみなのである。スタイル同様に、エクスプローラーのウリのひとつで、最も誇ってもいい優れた走破性能をもつ4WDシステム、テレイン・マネージメント・システムがないなんて、おいおい、冗談でしょ? 状態だ。
4WDシステムがないエクスプローラーに価値なし。多くの同業者がそう思っていたのだが、頭がカタイのは我々の方だった。他社だが、ジープの日本国内における調査では、4WDシステムが必要というオーナーは、10%切るほどだという。さらに、FF車を投入し価格を下げるとクルマがよく売れるそうだ。確かに、日本国内でオフロードを探すことは皆無に近い。こういったSUVを購入する多くの人が、機能よりブランドイメージやライフスタイル、価格が優先なことを改めて実感すると評価する。
■まさかのハイパフォーマンスを発揮するエコブースト! 巨大ボディなのに14km/L超の低燃費を記録したエクスプローラー
もはや、国内にある乗用車として最大級と思われるFF車フォード エクスプローラー エコブーストに乗る。10・15モード燃費の資料で確認すると8.1km/L・・・。おいおい、3.5Lエンジン車より、わずか0.5km/Lアップ。同じ2トン超級ミニバンアルファード3.5Lが9.2km/Lである。しかし、この後、予想もしなかったまさかの出来事が起こる。
燃費計をリセットし、首都高速に乗る。まずは、エクスプローラーの燃費チェック。80km/h前後で左車線をゆっくり走る。なんと、燃費計は14km/Lを超えているのだ。さすがに、巨大なボディゆえ80km/h以上に速度を上げると、もはや壁が走っているようなものなので燃費は悪化傾向になる。それでも10km/Lは軽々と超えてくる。このクルージング時の燃費には、驚きを隠せなかった。恐るべし、エコブースト。
エクスプローラー エコブースト侮りがたし、と感じながら一般道へ。さすがに、渋滞路だったため条件が悪く、燃費はイッキに悪化する。アメリカ生まれだけに、渋滞は苦手なようだ。ただ、この部分もアイドリングストップ機能がが付けば、かなり解決できるように感じた。
4WDシステムなどが無くなり110kg軽くなったとはいえ、2020kgもある車重だがエコブーストの最大トルク366Nmをもってすれば不満はない余裕あるクルージングが可能。軽くなったこともあるがV6エンジン車よりも、さらに余裕を感じさせてくれるトルク感が魅力だ。さらに、このエコブーストには、まだ伸びしろを感じた。最大トルクの発生回転数は、3000回転と比較的高い。VWのように1500回転付近で最大トルクを発揮できるようになれば、さらに高いギアで回転を抑えて走れるので燃費はさらに伸びる気がする。
静粛性も高評価レベルにあり高級感は損なっていない。強いて言うのなら、V型エンジンのシュルルーンとエンジンが回るフィーリンが、4気筒のガァァーというフィーリンがに置き換わっているのをどう感じるかどうかだろう。
■左ハンドルだけの仕様に、超円高なのに高価な価格設定。日本マーケットをどうみているのだろうか?
SUVのFFグレードというと、ついついエントリーグレードの廉価バージョンをイメージするが、エコブーストは最上級グレードであるリミテッドのレザーシートなどを採用し高級感あるものに仕上げている。全体的な質感も高く、大きくゆったりとしたシートに座ると、日本車にはない独特な非日常的雰囲気が味わえるのもエクスプローラーの美点だ。また、ラゲッジルームの広さは十分な上に、いざとなれば7人乗りのミニバン的にも使える。それこそ、エコブーストは低燃費化されたこともあり、大型ミニバンに飽きたユーザーには、普段のありきたりの生活から抜け出せる新鮮さな魅力が詰まっている。
と、想像を超えた魅力が満載のエクスプローラー エコブーストだが、少々納得がいかない部分もある。まず、右ハンドル仕様がないという点。全長5m、全幅2mという巨大ボディを運転するには、さすがに左ハンドルのみでは、日本の交通事情に合わず使いにくい。多くの魅力を持ちながら、結局、日本マーケットのユーザーを軽視している結果ファンを逃している。今のところ月販約100台ペースで好調というが、フォードは年1200台程度の販売台数で満足しているのだろうか。
そして、次に価格。フォードだけの問題だけではないが超円高なのに高すぎる。北米のサイトを見ると最上級のリミテッドで38,680ドル、XLTで33,170ドルだ。1ドル82円で計算すると、リミテッドが約317万円。これが、なぜか日本に登場すると530万円になる。すでに、同じ左ハンドルの並行輸入車は100万円以上安価だったりする。
さらに、フォードはエクスプローラーをPHP制度と呼ばれる年間輸入台数が2,000台以下の自動車に適用される特別に簡素化・迅速化された安全・環境基準に係る認証のしくみを利用している。この制度を使うと、日本導入のコストも下がる。その上、右ハンドル化していないのでコストもかかっていない。それなのに高価なのだ。趣味性の高い製品なので高価ですと、フォード自らが顧客を選別しているように思える。今回のエコブーストは、日本マーケットのニーズにもマッチし注目に値するクルマだけにもったいない。右ハンドルになり、価格が下がれば買い物リストに載せたい。そんなファンもきっとたくさんいるだろう。
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