スポーツセダンらしいスタイル。しかし、大きくなる一方のボディサイズに不満
レクサスISには、発売前の時点でプロトタイプ車に試乗したが、発売後の市販モデルに北海道で試乗したので改めてレポートしたい。
まずは、外観デザインだ。LSやGSに採用されたスピンドルグリルのエッジ部分が一段と際立つものとされた。かなりインパクトのあるデザインで、スポーツセダンらしいデザインであるのは間違いない。
ただ、迫力あるグリルを作るのは、アウディのシングルフレームグリル以来のデザインの流れの中にあり、もう少し違う方向性は考えられないものかとも思う。
インテリアは、直線で仕切られたインストセンター部分の雰囲気が、何となく古さを感じさせている。もう少し流れるような、あるいは包み込むようなデザインにできないものか。
レクサスISは、基本的にGSのプラットホームやパワートレーンを流用して作られたクルマだ。ハイブリッドシステムだけが、GSが450hであるのに対してISは300hとされていて、大きく異なっている。
ボディは、ひと回り大きくなった。ボディの全幅がついに1800mmを超えて1810mmに達したのは、海外市場を基準に考えてのこと。逆にいえば、日本市場のことをあまり考慮していないことの表れでもある。
そうでなくても、クルマのボディとエンジンとタイヤが大きくなり続けていることに対して、基本的に反対である。あまりにも知恵と工夫が足りなすぎると思う。
エンジンだけは、ヨーロッパでダウンサイジングターボが採用されるようになって流れが変わりつつあるが、ボディについてはどこまで大きくすれば気が済むのかと思う。快適性や安全性を考えたら、ボディを大きくしたほうが有利な面はあるが、小さなボディでそれを実現する知恵と工夫が欲しい。
完成度の高いハイブリッドシステム。静粛性も高い
レクサスISでは、ハイブリッド車のIS300hが60%くらいの高い比率で売れているという。ガソリン車がエコカー減税の対象外であるのに対し、ハイブリッド車は免税扱いで20万〜30万円のお得感があるのだから、ハイブリッドを中心にした売れ行きになるのは当然だ。しかも、ハイブリッド車は燃費が良いので実質的な価格差はさらに広がることになる。
このハイブリッドシステムの良さは、すでにクラウンで実証されている。4気筒2.5Lエンジン+THS-Ⅱの走りは、静かさ、力強さ、燃費の良さなど、ハイブリッド車らしい良さをいっぱいに備えている。
特に市街地走行や高速クルージングの静かさと滑らかさは上々のものだし、アクセルを踏み込んで加速していくときの力強さも満足のできるもの。加速時には多少のエンジン音が入ってくるが、それでも十分に静かなクルマである。
燃費に関しては、現在ではすでにアコードハイブリッドが登場していて、30.0km/Lの超低燃費を実現しているので、IS300hの23.2km/Lの燃費はいかにも物足りない感じになってしまったが、ISの燃費も決して悪い数字ではない。
あえていうなら、アクセルワークに対するレスポンスがもうひとつダイレクト感に欠けることが、ハイブリッド車に共通するデメリットとして感じられる。
積極的に選ぶ気がしないガソリン車
ガソリン車では、IS350“Fスポーツ”が印象的だった。このモデルにだけ8速ATやLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリング・システム)が採用されるなど、専用の仕様がいろいろと設けられていて、しっかりした走りが得られるようになっているからだ。峠超えのワインディングを走るときなどが、特に楽しく感じられた。
ただ、走りは良いにしても価格は高くなるし、エコカー減税の対象にならないので、積極的に選ぶグレードかとなると疑問の余地もある。発売当初には一定程度に売れるが、長期的にはあまり売れないグレードになるだろう。
IS250はそれなりの軽快感を感じさせ部分があるものの、IS350に比べると力不足の感が否めないし、ハイブリッドと比べても魅力薄の印象だ。比較的低価格で買えるといってもバージョンLは480万円の本体価格でオプションを装着すると500万円を軽く超える。選ぶ意味の薄いモデルである。
いずれにしてもISのガソリン車は、アイドリングストップ機構を装着するなどして環境性能を高め、エコカー減税の対象になってからでないと選ぶ気になれない。
一昔前のドイツ車的なカタイ足。乗り心地との両立が課題
箱根ターンパイクで、プロトタイプ車に乗ったときには分からなかったが、北海道の一般道や高速道路を走らせて分かったのは足回りの硬さだ。
ターンパイクは路面が良いため、基本的に足回りの硬さを感じるシーンがなかったが、一般道や高速道路で、マンホールのふたや高架部分の継ぎ目などを超えるときに、大きな突き上げが感じられた。これは相当に厳しいもので、乗っていて嫌になるほどだった。
レクサスISは、スポーツセダンであることから、こうした硬めの足回りを選択したのだろうが、少し前までのBMW Mスポーツであるとか、以前のアウディSモデルなどのような感じで、スポーティな走りを楽しむときには良いが、日常の足には向かないといったイメージである。GSの足回りが、ずっと快適である。
考えて見ると、クラウンもゼロクラウン以降のアスリートの足回りがかなり硬めに作られているなど、トヨタ車の足は意外に硬い。快適性と安定性を高次元で両立させる工夫が必要である。
強いていえば、“Fスポーツ”それもLDHの付いたIS350“Fスポーツ”の足回りがそれなのだろうが、これでもまだ硬い。強いていえば、これくらいの乗り味をISの基本として味付け、その上でさらに快適な仕様も用意して欲しいと思った。
北海道では、進化したプリクラッシュセーフティシステムのブレーキアシストが働く部分を体験するコースも用意されていたが、これはなかなかうまく体験できなかった。ついついブレーキをしっかり踏んでしまうためだ。そのこと自体は良いことなのだが、プリクラッシュセーフティシステムのありがたみを感じにくいという結果に終わった。
レクサスIS価格 燃費 スペック等
■レクサスIS価格
・IS350 5,200,000円
“version L” 2GR-FSE(V6・3.5L) 8-Speed SPDS 2WD(FR) 5,750,000円
“F SPORT” 5,950,000円
・IS300h 4,800,000円
“version L” リダクション機構付のTHS II 2WD(FR) 5,380,000円
“F SPORT” 5,380,000円
・IS250 2WD(FR) 4,200,000円
AWD 4,600,000円
“version L” 4GR-FSE(V6・2.5L) 6 Super ECT 2WD(FR) 4,800,000円
AWD 5,180,000
“F SPORT” 2WD(FR) 4,800,000円
AWD 5,500,000円
代表グレード | レクサスIS300h |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,665×1,810×1,430mm |
ホイールベース[mm] | 2800mm |
総排気量[cc] | 2,493cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 178(131)/6,000rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 22.5(221)/4,200〜4,800rpm |
モーター最高出力[ps(kw)] | 143ps(105kw) |
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] | 30.6kg-m(300N・m) |
システム全体[ps(kw)] | 220ps(162KW) |
車両重量[kg] | 1,670 |
ミッション | 電気式無段変速機 |
タイヤサイズ | 225/45R17 |
燃費 | 23.2km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[万円] | 480万円 |
燃料 | レギューラーガソリン |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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