■これほど大きなSUVをコンパクトと呼んでよいのか?
レクサス のラインアップにSUV である新型レクサスNX が投入された。レクサスは高級車ブランドというだけでなく、大きくて価格帯の高いクルマを中心にしたラインナップになっているため、量販という面では課題を抱えていた。ハッチバック 車ではCTを設定して価格帯の幅を広げたが、世界的に売れているSUV系の車種にも手頃なサイズと価格帯のクルマが求められていた。
そこに投入されたのが新型レクサスNXだ。レクサスではコンパクト SUVと言っているが、全長4630mmのボディは特にコンパクトというほどではない。世界的に見れば大きなSUVが多いことと、レクサスRXがNXよりずっと大きいので、それらと比べればコンパクトというだけのことだ。
全幅に至っては1845mmもあり、国内での使い勝手にも配慮したと言っているが、このサイズでは何をどう配慮したのか全く分からない。日本市場を無視して作ったと思えるくらいのサイズであり、かなり大きなSUVと考えるほうが自然である。
こんな大きなクルマをコンパクトと呼んでいたら、普通のクルマがますます大きくなってしまう。悪い冗談はほどほどにしてもらいたい。
■仕立てのよいインテリアは、よりクルマであることを実感できる
新型レクサスNXの外観デザインは、大きなスピンドルグリルを採用するなどレクサスのアイデンティティーを継承すると同時に、より洗練された仕上げがなされている。エッジの効いたシャープなラインが際立つ感じで存在感のあるカッコ良いデザインだと思う。これも大きなボディの持つ余裕から生まれたものともいえる。
運転席に乗り込むと、そのクオリティの高さがさすがはレクサスと感じさせる。レクサスのSUVとしてはエントリーモデルに当たるのだが、インテリア回りの雰囲気は正にレクサスのものである。
グレードによって設定が異なるが、本革シートを始め、竹や木目あるいはアルミを使った内装パネルなど、厳選された素材に入念な加工を加えたものが採用されている。いいクルマに乗っているなと実感できる室内空間だ。
■基本はハリアーと同じだが、まったく別物といえる強靭ボディ
新型レクサスNXに乗って走り出すと、すぐに感じるのが引き締まった印象だ。NXはハリアー とプラットホームを共用するモデルなので、大した違いはないだろうと思っていたら、とんでもない間違いだった。落ち着いた感じの走りは、ハリアーとは別物と言っても良いくらいにしっかりした乗り味を感じさせた。
レクサスの工場(トヨタ自動車九州)で生産されるNXには、LSやISで採用されたレーザースクリュー溶接が採用されたのを始め、構造用接着剤を使ったり、サスペンション部品に新たな補強部材を採用するなど、プラットホームは同じでもボディ作りはまるで違うクルマと言っても良いくらいに異なっているからだ。
装備の違いもあるから単純ではないが、レクサスNXとハリアー を比べるとNXのほうがざっと40kgから50kgくらい重い。これは剛性感の高いボディを作った結果であり、この重さが引き締まった走りにつながっている。この走りには、とても好感が持てた。
■ようやくアイドリングストップ機能が装備された新世代ターボエンジン
最初に試乗したのはレクサスで初めて、トヨタとしても久々に復活させたターボ仕様のエンジンを搭載したNX200tだった。
搭載される8AR-FTS型エンジンは、直噴仕様とインタークーラー付きターボ仕様によって、175kw/350N・mのパワー&トルクを発生する。このエンジンには、アイドリングストップ機構も組み込まれていて、12.8km/Lというまずまずの燃費性能も獲得している。
参考までに書いておくと、レクサスNXには電気式のパーキングブレーキが採用されていて、これをホールド状態にしておくと、エンジンが停止したときにブレーキペダルから足を話していてもアイドリングストップ機構が継続する。これも良い点だ。
■6速ATでは、すでに物足りない!? 安全装備は、ほぼすべてオプション。プレミアムブランドとしては、やや微妙な設定
エンジンの動力性能は十分なものだ。NXはSUVボディのために重量が1700kg台から1800kg台とかなり重いが、この重さを苦にしない力強い加速を見せる。アクセルを踏んだ瞬間こそ、一瞬のためらいがあるが、ターボが効きだしてから加速感は相当に強力なものだ。最大トルクに達するのが1650回転と低いので、走り出すとすぐに最大トルクを使って走れるようになる。
高速域まで伸びていく加速感も気持ちの良いもので、ターボが本格的に効く3000回転以上の領域では実にパワフルな走りを示し、ターボエンジンなのに高回転域まで気持ち良さを感じさせるのは良い点だ。このパワーフィールはなかなかのものといっていい。
2.0Lクラスのダウンサイジング直噴ターボ仕様エンジンは、ヨーロッパなどの多くのメーカーがすでに採用しているが、NX200tのエンジンはライバルがひしめく中でもまずまずの実力を備えたエンジンといえる。最後に出てきた2.0Lの直噴ターボ仕様なのだから、当然といえば当然である。世界には、さらにパワフルなエンジンもたくさんあるので、無条件で褒めちぎるほどではない。
トランスミッションは、6速ATが組み合わされた。実際に走らせて、このATでも特に不満を感じたわけではない。また、ATの段数を増やしたところで、ギアを細かく刻んで変速操作する人は少ないし、するときでも1段飛ばしくらいの変速なるのが普通だから、その意味でも6速あれば良いと思う。
でも、世界のラグジュアリーブランド車が、次々に多段化したATを搭載していて、7速、8速が当たり前の時代に6速というのは少なくとも記号的には物足りない。しかも、トヨタ系のアイシン製の8速ATがすでにボルボ に搭載されていることを考えたら、やはり8速ATが欲しいと思う。
レクサスNX200tでは、4WD のバージョンLと2WD(FF)のベースモデルに試乗した。個人的にはSUVを買うのに2WD車を選んでも意味がないという古い考えを持っているが、レクサスNXは、アーバンSUVを標榜している。都会でNXに乗るユーザーなら、あえて4WDを選ばずに2WDを選んでも良いともいえるだろう。そうしたユーザーには、より軽快な走りが可能で、価格が安くてやや燃費も良い2WD車に十分な意味があると思う。
ただ、レクサスNXは価格が相当に高い。ベースグレードの NX200tの2WD車でも428万円であり、これに安全装備をいっぱいにオプション装着すると40万円を超える予算が必要になる。さらに、いくつかのオプションを選択すると車両価格が500万円に近くなる。これでは買えるユーザーは相当に限られるだろう。
■レクサスNX価格、燃費、スペックなど
■レクサスNX200t価格
・NX200t 2WD 4,280,000円 4WD 4,540,000円
・NX200t versionL 2WD 4,920,000円 4WD 5,180,000円
・NX200t F SPORT 2WD 4,920,000円 4WD 5,180,000円
・NX200t l package 2WD 4,420,000円 4WD 4,680,000円
■レクサスNX300h価格
・NX300h 2WD 4,920,000円 4WD 5,180,000円
・NX300h versionL 2WD 5,560,000円 4WD 5,820,000円
・NX300h F SPORT 2WD 5,560,000円 4WD 5,820,000円
・NX300h l package 2WD 5,060,000円円 4WD 5,320,000円
代表グレード | レクサスNX300h F SPORT AWD(NX200t F SPORT AWD) |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,630×1,845×1,645mm |
ホイールベース[mm] | 2,660mm |
トレッド前/後[mm] | 1,570/1,570mm |
車両重量[kg] | 1,850(1,800)kg |
総排気量[cc] | 2,493(1,998)cc |
エンジン最高出力[kW/rpm] | 112/5,700(175/4,800-5,600)rpm |
エンジン最大トルク[N・m/rpm] | 206/4,400-4,800(350/1,650-4,000)rpm |
フロントモーター | 最高出力105kw 最大トルク270Nm |
リヤモーター | 最高出力50kw 最大トルク139Nm |
ミッション | 6速AT(電気式無段変速機) |
JC08モード燃費(㎞/L) | 19.8(12.4)㎞/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 5,820,000(5,180,000)円 |
発売日 | 2014年7月29日 |
レポート | 編集部 |
写真 | 編集部 |
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