まるでSLのような迫力と高級感評価
メルセデス・ベンツSLKは1997年にデビューし、今回3回目のフルモデルチェンジを行った。初対面の新型SLKの第一印象は、クラスが上の“SLみたい”。ボディサイズは、ひと回り大きくなりボリューム感が出た。先代迄のコンパクトなスポーツカーから、ラグジュアリーなエクステリアに変わった。スポーツカーのイメージは薄まったが、SLに通じる高級感は増し、パーソナルカーとしての資質は高まったと評価したい。
一方で気になるのがSLの立場である。525万円というリーズナブルな価格で似たようなスタイルの弟分が登場しSLオーナーは心穏やかで無いだろう。特に最初に試乗したのがSLK350 BlueEFFICIENCY(以下SLK350)はオプションのAMGスポーツパッケージを装備され、誰にでも納得させる存在感があり、スタイルに対する価格で言ったらSLに対してSLKの優勢勝ちである。
525万円というバーゲンプライスにも意味がある。どうしてもメルセデス・ベンツのユーザー層は、高価な価格帯ゆえに高年齢化する傾向にある。メルセデスからみれば、もっと若い世代のユーザーにもメルセデスの良さを知ってもらいたいという意図もあり、円高の追い風も利用して戦略的価格を打ち出した。ターゲットは30〜40歳前後のユーザーだという。
上質な空間と高い価格競争力
エクステリアの拡大に比べると、室内は従来通りのタイト感は継承。男二人で二日間試乗したが、お互いに不快にならない程度の距離と個別の空間はある。手荷物を置けるスペースが、もう少し欲しいところだがスポーツカーと考えれば妥当。それに対して、SLは二人分のスペースを十分に持っている。
インテリはSLS AMGと共通性のあるデザインで、個人的にはこのモダンクラシックのインテリはイイと思う。また、インテリアの質感は前モデルのオーナーが羨む程に向上し、高級感は大きくアップした。一番ベーシックのSLK200 BlueEFFICIENCY(以下SLK200)でもインテリアは上位モデルとの素材の差はあるが、ラグジュアリーカーとして見ても見劣りが無い。またナビゲーションとインターネットが連携したCOMANDシステムも全車種で標準装備であり、他社のロードスターと比べて価格競争力が高い。
SLK350の右側にあるスタートスイッチを押すとアイドリング時でも、はっきりとV6エンジンの鼓動とエキゾーストサウンドが耳に届く。試乗当日は強い夏の日差しの暑い日。覚悟を決めセンターコンソールにあるスイッチでバリオルーフを開けた。エアコンの冷気を身体に直接浴び、暑さを何とか凌ぎながら、一般道から渋滞の高速道路に入った。バリオルーフは従来モデルより開閉時間は短縮したとの事だが20秒前後の時間が必要で、残念な事に走行中の操作が出来ない。時間の短縮だけでなく、低速であれば走行中も開閉出来るようになれば、今回のように渋滞の高速道路でもやせ我慢をしなくても済む。
SLK200より、燃費のよいSLK350
やっと渋滞が解消され、アクセルペダルを強く踏み込むとエンジン音が響き、エキゾーストも一段と高音になり、シートに身体が押し付けられる。レスポンスは良く、どの回転からでもアクセルペダルに望むスピードを伝えるだけで手に入る。前モデルのSLKよりエンジンの鼓動は強くなった。V6なのにアメリカンV8エンジンを思わせるようなサウンドである。V6 3.5L直噴エンジンは最高出力306PS、最大トルク37.7kg-mを発揮し、リーンバーン方式とアイドリングストップを採用している。燃費改善の為にアイドリングストップは採用するクルマが多くなったが、ドライバーの感性と合わないものもあり鬱陶しく感じる事もある。しかし、SLK350は停止すると同時にエンジンは停止し、ブレーキペダルを完全に離す前に再始動するので、発進にもたつきが無く違和感を感じなかった。燃費は従来モデルより45%も改善され、試乗中も燃費計を見ているとSLK200よりも常に良く10・15モード13.2km/lには届かなかったが10km/l前後の数字を示す事もあった。
オープンカーは爽快感が高いが、気になるのはスピードを出した時の風の巻き込み。SLKはヘッドレストの直ぐ後ろのロールバーには、透明のアクリル製のドラフトストップが装備され後方からの風の巻き込みを防ぐ。前モデルは網のカバーをロールバーに装着するタイプで、後方がやや見にくいのと装着が面倒だったので、機能や使いやすさとも向上している。新型のドラフトストップは見た目もカッコいいし実用度も高評価である。
重厚さならSL350、軽快さならSLK200。若い世代にも楽しんでもらえるオープンカー
ハンドリングはFRの見本のような弱アンダーステアリングで、更に追い込むと強めのアンダーステアリングとなる。トルクベクトリングブレーキにより内側後輪にブレーキをかけて、それ以上のアンダーステアリングはならないが特徴だ。素直なハンドリングで、メルセデス・ベンツ伝統の安心感がある。また、車体の剛性が低い車はルーフのオープンとクローズでハンドリングが変化するが、SLKは剛性が高くその差を感じない。運転の楽しさとしては軽快な前モデルの方がスポーツカー度は高いが、新型SLKは重厚感がありラグジュアリー度が増した。
次に試乗したのがSLK200。エントリーモデルの“スポーツ”でパワーシートなど外す事により525万円に押さえた戦略的なモデル。試乗車はオプションのレザーパッケージ(28万円)を装備していたのでSLK350との見た目の差が少ない。安いモデルだから期待しないでハンドルを握ってみたら、とても気に入ってしまった。直列4気筒1.8L+ターボチャージャーは184PSの最高出力と27.5kg-mの最大トルクを1800回転から発生する。2000回転を越えればモリモリとパワーが出て7速ATも新採用したので、走りでSLK350に見劣りする事は無い。むしろターボが効いた時はSLK200の方が速く感じる。またフロントが軽く、SLK350より軽快に走り“スポーツ”の名前に恥じない。アイドリングストップは装備されていないので、燃費だけはSLK350に負けるが、エンジン音も低く全体のバランスではSLK200 の方が好ましく感じた。
SLKは初代から2代目に変わった時は高級感とスポーツ度が増し、3代目の今回は更に高級感、パーソナル感が高くなった。しかも装備を充実させながら500万円台から乗れるのはメルセデス・ベンツのSLKに対する強い気持ちが表れている。重厚なSLK350 、軽快なSLK200、オープンカーに乗りたいなら検討して欲しい一台だ。
代表グレード | メルセデス・ベンツSLK200ブルーエフィシェンシー スポーツ |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4145×1845×1305mm |
車両重量[kg] | 1440kg |
総排気量[cc] | 1795cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 184ps(135kw)/5250rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 27.5kg-m(270N・m)/1800-4600rpm |
ミッション | 7速AT |
10・15モード燃費[km/l] | 11.8km/l |
定員[人] | 2人 |
税込価格[万円] | 525.0万円 |
発売日 | 2011/5/18 |
レポート | 丸山和敏 |
写真 | 編集部 |
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