トヨタ プリウスPHV試乗記・評価の目次
- 先代プリウスPHVが売れなかった3つの理由
- プリウスとはまったく異なる外観。リヤハッチゲートは、なんとカーボン(CFRP)製!
- EV走行距離は60㎞以上! ハイブリッド燃費は37.0㎞/L!!
- トヨタ プリウスPHV燃費、スペックなど
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■先代プリウスPHVが売れなかった3つの理由
先代トヨタ プリウスPHV は、非常に期待されたモデルだったものの、お世辞にも売れたとは言えないクルマだった。売れなかった理由は、大きく分けて3つ。1つ目がEV航続距離が26.4㎞と短かったこと。トヨタ の調べでは、これくらいの走行距離ができれば、ほとんどの顧客の日常的な使い方は合致するとの判断だった。しかし、一般顧客から見れば、たった26.4㎞/Lしか走れないのか? という印象が強い。さらに、長距離走行時には、通常のハイブリッド 車のプリウスと比べ、ランニングコストの差がほとんどない。チョイ乗りでしかメリットが出てこないのだ。
そして2つ目が価格。上記のように微妙なEV 走行距離であるのに対して、車両価格は普通のプリウスに比べ90万円ほど高価だった。さすがに、これだけ高価だと車両価格差で元が取れないばかりか、家の充電設備設置費もかかるため、よほどPHVに興味がある人でないと買えない状況だった。また、高価な上に元が取れない、その上に充電設備の設置工事が必要という手間もあることから、トヨタの営業マンがPHVを勧めないという状況にも陥った。
そして3つ目がデザイン。約90万円も高価なのに、普通のプリウスとほぼ同じ外観。これでは、90万円余分に出してPHVを購入した顧客が、普通のプリウスとは違い、より高価で先進性の高いクルマを買っているというアピールができないので、所有時の満足度もそれほど高くない。高価な派生車的な状況が、顧客に物足りなさを感じさせていた。
新型トヨタ プリウスPHVは、こうした先代プリウスPHVの反省点生かし、売れるPHVを目指し2016年冬に再び挑戦する。
■プリウスとはまったく異なる外観。リヤハッチゲートは、なんとカーボン(CFRP)製!
今回、新型トヨタ プリウスPHVのプロトタイプ車に試乗する機会を得た。まず、デザインは、従来の派生車的な部分を改め、もはやプリウスとはまったく別のクルマと思わせるくらい明確に差別化してきた。
従来のPHVはいかにもプリウスの派生車という感じで特徴に欠ける部分があったため、今回はプリウスとの違いをデザインでも走りでも明確化してきた。外観デザインのコンセプトは、先進スタイルと機能との融合「ICONIC Human-tech」。フロントフェイスのイメージは、プリウスとFCVのミライを足して2で割ったような雰囲気だ。デザイン的には、より経験値を積んだことから、洗練された精悍さを感じる。LEDのヘッドライトには、照射先を眩惑させないアダプティブハイビームシステム(AHS)が搭載されている。
リヤのデザインは、縦長コンビネーションランプのプリウスから横長のデザインへと大きく変更されている。全く異なるデザインテイストだ。リヤのハッチゲートは、炭素繊維強化樹脂製(CFRP)とされ、軽量化に貢献。また、ウインドーは大きく波打ったように見えるダブルバブルウインドウを採用し、より個性的なリヤビューを形成している。
外観デザインの変更は、かなり手の入ったものだが、インテリアの変更は微小。インパネ中央にある縦型に配置されたタッチ式の11.6インチ液晶パネルを設置。これだけ大きい液晶パネルが設置されたこともあり、インテリアも随分変化したように見える。随分、インパネ周りも変化したように感じるが、基本的にプリウスと同じだ。このあたりは、コストをかけず上手く処理している。このタッチパネルは、電気自動車のテスラ を感じさせるデザインだ。
確かに、フルHDの高精細なもので見やすいのだが、タッチパネルは安全面でお勧めできない。操作するためには、指先を注視することから視線移動が大きく、視線を外している時間が長くなる。ましてや、揺れる車内で的確にタッチするのは難しい。こうしたモニターは、なるべくダッシュボード奥にあり、手元のダイヤルなどで操作するタイプの方が安全で使いやすい。スマートフォンのように直感的になどと先進感をアピールするが、クルマの運転中に指先を注視しながらという操作は安全面で好ましいものではない。
■EV走行距離は60㎞以上! ハイブリッド燃費は37.0㎞/L!!
基本のプラットフォームは、プリウスと同じTNGAが採用されている。そのため、ホイールベースは同じ。オーバーハングが前+25㎜、後+80㎜となっていて、全長は4,645㎜となり、プリウスに比べ105㎜大きくなっている。ボディサイズも異なることから、より一層プリウスとの差別化ができている。これで、売れなかった理由のひとつ、差別化されていなかったデザインはクリアした。
そして、大きな課題だった短いEV距離は、26.4㎞から60.0㎞以上へ一気にジャンプアップ。2倍以上EVで走行できるようになった。搭載されるリチウムイオン電池の総電力量は8.8kWh。先代プリウスPHVが4.4kWhだったので、総電力量は2倍。走行距離は2倍以上と、より高効率化されている。
リチウムイオン電池は、120㎏もの重量物。これだけの大きく重いものを積むと気になるのは、ハイブリッド時での燃費。いくらEVで走れても、ハイブリッド燃費が極端に悪くなるのでは意味がない。充電できない環境下でのロングドライブでは、ハイブリッド車より燃料費がかかることになるからだ。新型プリウスPHVのハイブリッド燃費は37.0㎞/L。普通のプリウスが37.2㎞/Lなので、0.2㎞/L悪くなった程度に収めた。この程度なら、許容範囲といえるだろう。先代プリウスPHVの売れなかった要素のひとつであるEV走行距離の短さも新型プリウスPHVは克服している。
■トヨタ プリウスPHV燃費、スペックなど
ホイールベース(mm) 2,700
乗車定員(人) 4
車両重量(㎏) 1,510
エンジン 種類 直4DOHC
総排気量 (cc) 1,797
最高出力 (kW[PS]/rpm) 72[98] / 5,200
最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 142[14.5] / 3,600
モーター 最高出力 (kW[PS]) ①53[72]/②23[31]
最大トルク (N・m[kgf・m]) ①163[16.6]/②40[4.1]
バッテリー リチウムイオ
総電力量(kWh) 8.8
ハイブリッド燃費(㎞/L) 37.0
EV走行距離(㎞) 60㎞以上
EV最高速度(㎞/h) 135
トランスミッション 電気式無段変速機
駆動方式 FF(前輪駆動)
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