トヨタ カローラ・アクシオ新車試乗評価 高い完成度を誇る日本を代表する低燃費セダン。カローラ復活には、やはりハイブリッドが必要?
■ときめきを感じない残念なデザインだが、高い視認性と居住性
2012年5月にデビューした11代目のカローラアクシオは、国内専用(ニュージーランドなどごく一部には輸出される)モデルとして、ヴィッツ系の新しいプラットホームを採用するモデルとして生まれ変わった。
かつてカローラは、国内向けに作ったクルマを海外に輸出し、それが通用していて世界的なベストセラーカーになっていた。
ところが、海外での販売比率が高まるに連れ、海外からのニーズに対応せざるを得ない面が多くなってきた。そうすると日本のニーズに合わなく面が多くなるため、今回のモデルでは海外モデルと国内モデルを明確に分け、ほとんど日本専用車として開発された。
今回のアクシオは「大人4人が安心・安全・快適に長距離を移動できるミニマムサイズのクルマ」を追求した結果、カローラとしては46年目にして初めてボディサイズをやや縮小したほか、視界の拡大や取り回しの改善など、扱いやすいクルマに仕上げられている。
ただ、アクシオの外観デザインは見るからに平凡でつまらない。
トヨタの資料を読むと、上質でスタイリッシュなデザインということになっている。作る側からしたらそうなのだろうが、見る側からするとときめきを感じさせるようなデザインではない。
カローラアクシオは高齢者用のクルマだが、カローラアクシオに乗っていると実際の年齢よりも若く見えるね、といわれるような、そんなデザインが欲しいと思う。でも、このアクシオでは年齢相応に見えるだけでしかない。
デザイン的には、ときめきがないクルマながら、パッケージングなどしっかり煮詰められている。ヴィッツ系プラットホームを採用しながらも、ホイールベースは従来のカローラと同じで全長が短くなったのはフロントオーバーハングを切り詰めるなどしたことによるものだ。
前後の居住空間やラゲッジスペースが小さくなるなどの影響は受けておらず、使い勝手の面では良くできた小型セダンである。
また、乗降性も不満はないし、運転席に乗り込んだときの視界も、Aピラーの角度を立てることなどによって改善されている。これがカッコ良く見えないデザインに影響を与えているので微妙だが、少なくともカローラはカッコ良さより視界を確保すべきクルマである。
■1.3Lでも十分な動力性能と低燃費性能。買うならカローラGエディションがオススメ
アクシオには、1.3X、1.5G、1.5ラグゼールの3グレードに試乗した。いずれもCVT車だが、別の機会に1.5LのMT車にも試乗している。
1.3Lエンジンの実力は、70kW/121N・mというもの。従来のモデルでは廃止されていた1.3Lが復活したのは、絶版になるベルタのユーザーも取り込もうという意図があるためだ。アクシオでは逆に1.8Lエンジンが廃止されている。
動力性能は、やはり平凡なものだが、だからといって大きなネガがあるかというと必ずしもそうではない。1.3Lエンジンでもそこそこ良く走る感じがあって、これでも良いかなという感じにさせる部分がある。1.3Xを買うなら、装備面では快適装備が充実するGエディションを選んだほうが良いだろう。
1.5Gの走りには余裕がある。1.5Lエンジンの動力性能は80kW/136N・mで、このクラスのエンジンとして際立った数字ではないが、比較的軽いボディも貢献して普通に良く走るクルマに仕上がっていると評価できる。しかも、燃費は20.0km/Lを達成していて、アイドリングストップ機構を装着すると21.4km/Lになる。クラストップの低燃費車である。
■高い操縦安定性と静粛性の高い室内
足回りの印象は、1.3Xがちょっとふわついた感覚を覚えるシーンがあったのに対し、1.5Gはタイヤサイズが1インチ大きくなることも影響してか、より落ち着きが感じられた。
コーナーの立ち上がりなどで、ステアリングを戻し切らないうちにラフにアクセルを開けるといったシーンでも、適度にVSCが介入して挙動に乱れは生じなかった。
新しいカローラのプラットホームが、ヴィッツ系に変わったという話を聞いて、実は試乗前には操縦安定性や振動・騒音などはどんなものかと大いに心配を感じていたのだが、実際に運転してみたらそれが杞憂であることが良く分かった。
ヴィッツともアクアとも違うカローラアクシオならではの操縦安定性や音振性能が確保され、走りの質感を感じることができたからだ。全車フロントにスタビライザーが装着され、防音対策などがしっかりやられていることなどが、走りの質感につながっていると評価だ。
■すべてオプションのアイドリングストップ機能は、ハイブリッド看板にしたメーカーとしては、腰が引けている
最後に、ひとつ注文を付けるなら、より高い環境性能を求めたい。トヨタは長期戦略としてフルハイブリッド化を掲げているが、だとしたら今回のカローラにはなぜハイブリッド車をラインナップしなかったのかが疑問として残る。
基本的に、カローラはヴィッツ系のプラットフォームを採用している。これは、アクアと同じ。つまり、セダンがハッチバックかの違いであって、理屈的には問題なくカローラもハイブリッド化できることを示している。開発エンジニアも、新型トヨタ カローラ ハイブリッドを出すか出さないかは、経営判断であると語っている程だ。
また、アイドリングストップ機構にしても、たとえばダイハツのミライースが全車に、日産のマーチやセレナなどが大半のモデルに標準装備しているのに対し、カローラは1.5Lエンジンの搭載車にオプション設定されるだけで標準装備しているグレードがない。あまりにも腰の引けた対応と言わなければならない。
試乗車には、アイドリングストップ機構が装着されていて、それなりに良くできた機構であることが分かった。停止と再始動のロジックなども納得の行くものだった。それだけに、全車に標準装備して低コスト化を図り、さらに多くの車種に広げていくという考えがあって良いのではないか。記号性を含めて、分かりやすい環境性能を備えることが、今どきのクルマには大切な要素であると高評価だ。
■高い安全装備のカローラ。他の車種も安全装備の充実に取り組んで欲しい
なお、今回のカローラでは横滑り防止装置のVSC&TRCやSRSサイド&カーテンエアバッグなどを全車に標準装備するようになった。
横滑り防止装置の標準装備化は、近く法的な規制が始まるのを先取りした形であり、SRSサイド&カーテンエアバッグは、トヨタがかつて全車標準装備化を宣言しながらその約束を一方的に反故にしていたのを改めて標準装備に戻したものだ。
SRSサイド&カーテンエアバッグの設定が、今後の各モデルでどうなるのか、約束破りを謝罪したり、改めて全車標準化を宣言したわけではないので何ともいえないが、今回のカローラを機に改めて安全装備の充実化に取り組んで欲しいと思う。
【関連記事】
- 新型トヨタ スペイド/ポルテ新車情報 使い勝手を高めたトヨタのプチバン!
- トヨタ ラクティス新車情報 燃費がアップしアイドリングストップ機能もオプション装着に
- トヨタ アクア試乗記/新車購入ガイドリンク集 価格以外は超オススメ! 燃費だけじゃない! スポーティな走りにも注目!!
- 次期新型日産ノート、世界初公開! 新型ノートは、1.2L直噴エンジン+スーパーチャージャー搭載! クラスナンバー1の25.2km/Lを達成しエコカー減税免税に!
- 【ホンダ 新型フィット ハイブリッド 試乗記】早くも大人気の最安値ハイブリッドは買いか否か!?
- 走り重視のSKYACTIVバージョンは、価格が勝負?【マツダ アクセラ試乗記】
- アイドリングストップ機能装着で、もはや無敵?【VWゴルフTSI トレンドライン ブルーモーション テクノロジー(BlueMotion Technology)試乗記】
【オススメ記事】
- フォルクスワーゲン ポロ新車情報・購入ガイド ついに全長4m越えに! 3ナンバー化した6代目新型ポロは、1.0L直3ターボを搭載【ニュース・トピックス】
- 三菱エクリプスクロス試乗記・評価 さすが4WDの三菱! 豪快にリヤタイヤを振りだすような走りも楽しめる絶妙なS-AWCに脱帽!【レビュー】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.6】 日差リーフの実電費チェック! (一般道編)コツコツ電費を稼ぐe-Pedal【評論家ブログ : 日産リーフ】
- メルセデス・ベンツSクラス新車情報・購入ガイド 約20年振りの直6エンジンに、ISGを組みあわせた次世代エンジンを搭載!【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.5】 日差リーフの実電費チェック! (高速道路編)実電費アップは、こだわりの空力性能にあり!【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 三菱エクリプスクロス新車情報・購入ガイド スタイルに走り、装備とスキ無しの完成度を誇るコンパクトSUV。ガソリン車だけしかないことが、唯一の弱点?【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.4】 30歳代クルマ好き女性、初めての電気自動車! その評価は?【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 日産セレナe-POWER新車情報・購入ガイド ついに、シリーズハイブリッドシステムを搭載したセレナ! 5ナンバーミニバン、ハイブリッド車戦争へ加速!!【ニュース・トピックス】
- マツダCX-8試乗記・評価 際立つ運転のしやすさ! こだわりの「躍度」を雪上でチェック!【レビュー】
- 日産テラ(TERRA)新車情報・購入ガイド ナバラベースのSUV中国でデビュー! 日本への導入は?【ニュース・トピックス】
【関連記事】
- トヨタRAV4(50系)新車情報・購入ガイド 新型RAV4デビュー直前? 最後の改良か?【トヨタ】
- 【動画】トヨタ アルファード (40系)後悔・失敗しないための内外装レビュー【トヨタ】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、栄えある10ベストカーが決定! 今年のナンバー1は、どのクルマに!?【イベント】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、ノミネート車31台が決定!【イベント】
- 【動画】トヨタ カローラクロス内外装レビュー 超低燃費、ちょうどいいサイズで人気のコンパクトSUV【トヨタ】
- トヨタ シエンタ新車情報・購入ガイド 一部改良でライバル、フリードの迎撃態勢完了!【トヨタ】
- マツダEZ-6(イージー シックス)新車情報・購入ガイド 長安汽車の電動技術を使った合作電動車、初公開!【マツダ】
- トヨタ ランドクルーザー250新車情報・購入ガイド やや大きくなったプラドの後継モデル。高リセール確実!?【トヨタ】
- トヨタ クラウンクロスオーバー新車情報・購入ガイド まさかのオーバーフェンダーを装着した特別仕様車「ランドスケープ(LANDSCAPE)」誕生!【トヨタ】
【オススメ記事】
- トヨタRAV4(50系)新車情報・購入ガイド 新型RAV4デビュー直前? 最後の改良か?【トヨタ】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー 10ベストカー取材会開催!【イベント】
- 【動画】トヨタ アルファード (40系)後悔・失敗しないための内外装レビュー【トヨタ】
- ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV【ホンダ】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- 日産フェアレディZ新車情報・購入ガイド 2025年モデルが登場! 納期は? 転売ヤー対策は?【日産】
- BMW M2クーペ(G87)試乗記・評価 「サーキットで乗ってみたい!」クルマ好き女子が試乗!【BMW】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、栄えある10ベストカーが決定! 今年のナンバー1は、どのクルマに!?【イベント】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、ノミネート車31台が決定!【イベント】
- マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV【マツダ】
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!