VWパサート/パサート・ヴァリアン新車情報の目次
- まさに、質実剛健とは、このことか?
- 低燃費18.4km/l! 実力の源は低回転トルクにあり
- アイドリングストップ機能がマルチな低燃費車へと進化させた
- 静粛性も大幅に進化
- 国産セダンユーザーを切り崩せるのか?
<お勧め記事>
■まさに、質実剛健とは、このことか?
今回のフルモデルチェンジで7代目となるパサートだが、大きく進化したのは燃費性能。日本に導入されたのは、1.4リッターターボ付きTSIエンジンに7速DSGの組み合わせ。この組み合わせは、ゴルフのコンフォートラインと同じ122馬力と200Nmを発揮。1.4リッターながら、2リッターと同等のトルクを1500回転という低回転で発生するとういのがポイントだ。さらに、パサートにはアイドリングストップ機能と、エネルギー回生システムをプラス。これらの機能は、VWのブルーモーションテクノロジーと呼ばれる低燃費技術だ。このブルーモーションテクノロジーにより、18.4㎞/l(10・15モード燃費)という低燃費を実現している。例えばマークXの2.5リッター車が13.0km/l程度、ハイブリッドのトヨタSAIが23km/lと、ちょうどハイブリッド車とガソリン車の中間に位置する。
いくら燃費が良くても、1430kg以上の車重を考えると、あまり走らないんじゃないの? と、感じる人も多いかもしれない。だが、その心配は御無用。このエンジンの特徴は、わずか1500回転という低回転で最大トルクを出しているところにある。だから、アクセルをちょっと踏んだだけで200Nmのトルクでクルマを押し出す。そのため、あまりエンジンを回さなくてよい市街地などでは、トルクに勝る2.5リッター車よりパサートの方がパワフルだったりする。ゴルフなどにも共通するのだが、アクセル操作がラフなドライバーが乗ると、走り出す瞬間にアクセルを開けすぎるため、一呼吸置いてからいきなり200Nmのトルクが伝わり「キュキュッ」とタイヤを鳴らして発進してしまうほどだ。7速DSGも賢く、スパスパと低回転でシフトアップ。通常走行時には、低回転での高トルクを有効に使い、2000回転を超えない程度で早め早めのシフトアップをする。結果、低燃費につながっていると評価したい。
■アイドリングストップ機能がマルチな低燃費車へと進化させた
さらに、新型パサート&パサート・ヴァリアントには、アイドリングストップ機能が付いた。ゴルフも信号の少ない郊外路や高速での巡航では、十分な低燃費性能だったが、都心に近い市街地に入ると、やはり燃費は悪化傾向にあった。高速巡航で想像以上の低燃費を記録した後、都内の走行に入ると、信号待ちするたびに燃費計はドンドンと悪化。それでも、トータルすると納得のいく燃費なのだが、この時ほどアイドリングストップが欲しいと思ったことはない。今回のパサートには、うれしいことにそれがない。今までTSIは郊外や高速巡航型低燃費車ということで、市街地で多く使う人にはあまりお勧めはしなかったが、これなら市街地中心の走行でも十分納得いく燃費性能が享受できる。アイドリングストップ機能が装着されたことで、パサートはマルチな低燃費車となった。アイドリングストップの停止や再始動は、とくに気になるところはなかったが、トヨタ系ハイブリッド車のような、いつ止まり再始動したのか分からない、というレベルほどではない。もちろん、全車75%のエコカー減税対象車となっている。
ただ、実際に購入を考えるときに注意しなくてはならないのは、ガソリンの仕様。確かにパサートは燃費がいいのだが、残念ながらハイオク仕様。レギュラーガソリンより10円程度高い。とくに、距離を走る人には、結構、ジワジワと効いてくるコスト。1回50リッターの給油で、500円以上の差が出るからだ。最近発売される国産車のほとんどが、レギュラーガソリン仕様というのも、こういったマーケットのニーズを反映したもの。高い完成度を誇るパサートの唯一の弱点が、実はコレだったりする。また、リセールバリューが低いのもパサートの悩みでもある。基本は、8年以上乗り続ける方がよい。短期でも長期でもヴァリアントの方がリサールバリューは高いのでお勧めだ。どうしてもセダンということなら、低金利の残価設定ローンと組み合わせてみるのがいいだろう。
■静粛性も大幅に進化
さて、今回さらに驚いたのが、静粛性の高さ。今までVW車は、あえて走行音を入れているのかなぁ? と、感じるくらい音が侵入してきた。ところが、このパサートから静粛性が大幅にアップした。フロントウインドウには、特殊な遮音フィルムを挟みこみ遮音材の最適配置などにより、車内の会話明瞭度もアップ。ゆったりとした乗り心地の良いサスペンションとともに、かなり快適な空間となった。
実用性では、かなり高いレベルにある。セダンのトランクは相変わらずの巨大スペースに6:4の分割可倒式シートをもつ。ヴァリアントも同様に、大きな開口部にスクエアなスペースは、徹底的に使いやすさにこだわっている。例えば愛犬家がゲージを固定するフックもラゲッジの四隅にちゃんと配置されている。また、ホイールハウスのカバーも丸くなく、ストレートにストンと落としているのもよい。ギュウギュウに荷物を積む時には、ホイールハウスのカバーも丸型より四角の方が荷物を固定しやすい。ヴァリアントは、愛犬家だけでなくゴルや釣り、アウトドアといった趣味から、仕事にも使えるタフさも魅力のひとつだと評価はいい。
■国産セダンユーザーを切り崩せるのか?
グレードはセダン、ヴァリアント共にコンフォートラインとハイラインの2種類。この差は、ハイラインはレザー仕様やパワーシート、ウッドパネルなどの豪華装備の差。グレードにより、基本的な安全装備に差を付けないのは、国産車も見習ってもらいたい。今回新たに標準装備された安全装備「ドライバー披露感知システム」。これは、ドライバーの集中力低下をステアリングなどの入力から感知し、アラーム音と表示により休憩を促し、居眠り運転などを事前に防止するシステムだ。装備面では、ナビが標準装備ではないことと、ナビの機能にもう少し先進性が欲しいところだ。
今回の新型パサート&パサート・ヴァリアントは、324万円からとかなり戦略的な価格を打ち出してきた。トヨタの同クラスとなるハイブリッドカーSAIよりも安く、マークXなどに比べると高価という絶妙な価格帯。まさに、輸入車セダンのエントリー車としてはベストな買い物かもしれない。燃費や価格、クルマのパフォーマンスなど、国産セダンに興味が持てないのなら、一度、長めに試乗してみることをお勧めする。乗れば乗るほど、新型パサートの味に驚かされるはずだ。
代表グレード | VWパサートTSIコンフォートライン |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4785×1820×1490mm |
車両重量[kg] | 1430kg |
総排気量[cc] | 1389cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] | 122ps(90kW)/5000rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 20.4kg-m(200N・m)/1500-4000rpm |
トランスミッション | 7速DSG |
10・15モード燃費[km/L] | 18.4km/L |
定員[人] | 5人 |
消費税込価格[万円] | 324万円 |
発売日 | 2011/05/30 |
レポート | 大岡 智彦 |
写真 | 編集部 |
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