スバル はワゴン のレヴォーグ を一部改良し、2016年6月10日より発売を開始する。

スバル レヴォーグは、2014年に登場した。レヴォーグのミッションは、失われたレガシィ ツーリングワゴン のマーケットを再構築することだ。レガシィは、ワゴンブームのパイオニア的存在だったが、モデルチェンジの度にボディサイズを拡大した。とくに、先代レガシィから、軸足を北米にシフトしたこともあり、もはや国内マーケットでは大きすぎるモデルとなった。

北米では大ヒットし、好調スバルをけん引するモデルとなったが、国内のワゴンマーケットはほぼ消え去ってしまった。そのため、従来のレガシィ ツーリングワゴンに乗る顧客が乗り換えるクルマが無く、他車に乗り替えるケースも多く、国内スバルにおいては無視できない状況になった。そこで、登場したのがレヴォーグだ。北米での販売が好調なのを受け、余力が出たことで国内マーケットに再びチャレンジすることができた。

そのため、レヴォーグはほぼ日本専用車という位置付けになる。ボディサイズは、全長4690×全幅1780×全高1490mm。全幅を1800㎜以下に抑え、都市部に多い立体駐車場にも入るスペースとした。エンジンは、FB16型1.6L水平対向4気筒直噴ターボDITが搭載され170ps＆250Nmを発揮する。この他、300psを発揮するパワフルなFA20型2.0Lターボも用意されているが、圧倒的に1.6L車が売れている。これは、スバルのこだわりで、1.6Lターボエンジンに使用する燃料をレギュラー仕様としたことによる。

日本マーケットでは、車両購入時のイニシャルコストより、燃費や使用燃料といったランニングコストが高くなることを嫌う傾向が強い。そのため、スバルはハイオク仕様化せずに1.6Lターボエンジンを開発した。こうしたダウンサイジングエンジンで、レギュラー仕様なのは、まだ数少ない。レギュラー仕様では、パワーや燃費面でハイオク仕様に比べると不利な面があるものの、スバルは独自の技術を磨き解決している。ホンダ ステップワゴンの1.5Lターボも国内マーケットを重視してレギュラー仕様となっている。日本メーカーが、日本マーケットを重視して作ったモデルは、こうした部分が違う。

そして、安全性能面でもレヴォーグは高い安全性能を得ていた。デビュー当初こそ、日和見主義的に自動ブレーキを含む安全装備であるアイサイト非装着グレードをラインアップしていたが、モデル途中からはすべてアイサイトが標準装備された。すべてのグレードにアイサイト を標準装備化したのは、交通死亡事故を減らすという視点では、社会貢献面でも高く評価できる。

さらに、このアイサイトもモデル途中からバージョン3にアップデートされ最新のものとなって、さらに安全性能を高めている。アイサイトは、今のところステレオカメラを使ったタイプだが、今後、さらなる安全性能を高めるためには、ミリ波レーダーなど複数のセンサーを組み合わせる必要があるだろう。

　そして、今回の一部改良は、アイサイトのような衝突回避といった安全装備ではなく、衝突時の安全性能を高めた改良が行われている。

まず、前面衝突時に瞬時にシートベルトを巻き取り、乗員を拘束するシートベルトプリテンショナーを左右リヤシートにも採用。リヤ席にプリテンショナーが付かないモデルは、未だ多い。また、リヤシートのクッションも安全性の高い構造に改良するなど、後席の乗員保護性能を向上させた。

側面衝突に関しても、フロントドアにアッパービームを追加。今後、日本でも導入されるポール側突試験を視野に入れての対応とみられ、より強固なボディとなった。レヴォーグには、サイド＆カーテンエアバッグ、ニーエアバッグが全グレードに標準装備されている。こうした装備は、多くの国産メーカーではオプション設定になっているだけに、スバルの安全への取り組みは高いレベルにある。

デザイン面も若干改良が施された。エントリーグレードの1.6GT EyeSightには、新デザインの17インチアルミホイールを採用。ガンメタリック塗装と切削光輝を組み合わせたスポーティで質感高いデザインとなった。また、いかにもスバルらしく、機能面でも空力性能の向上と軽量化も実現している。

また、GT-Sグレードには、上級グレードに相応しいスポーティかつ上質で華やかな印象を与える「ブライトパール内装」をメーカーオプションとして新設定。パールのような輝きをもったシルバー基調のレザーとブルーステッチによるコーディネートによって、インテリアの質感を高めた。

レヴォーグは、エントリグレードの価格でも2,775,600円からと、立派な高級車だ。そこで、高級車としての質もアップ。フロントドアガラスの室内側ショルダー部ウェザーストリップを2枚化して、室内への透過音を低減。また、リヤクォーターガラスの板厚アップやカーゴルームの吸音材追加等で静粛性を高め、室内の質感と快適性を高めている。

今回の改良は、ひと目で分かるような分かりやすい改良と言うより、やや地味目の改良ともいえる。しかし、安全性能の向上は、ドライバーの命に係る重要な部分だし、車内の静粛性の向上はツアラーとしの価値を向上させる重要な要素。やや地味目な改良ではあるものの、クルマとしての本質を磨き込んだ改良と言えるだろう。

こうした改良が行わたが、価格アップしていない点も好感がもてる。レヴォーグは、やや高価な設定ということもあり、そう簡単に価格アップがしにくいとはいえ、企業努力でコストを吸収している点は高く評価できる。

また、スバルはこのレヴォーグに、スポーツグレードのトップとなる「STI」モデルを追加することを明らかにした。新型スバル レヴォーグSTIの発売は2016年夏に予定されている。

こうなると、現行で最もスポーティなグレードであり、ビルシュタイン製サスペンションを装備するレヴォーグ1.6GT-S EyeSightの購入を考えているのなら、とりあえずレヴォーグSTIの登場を待ってからということになりそうだ。レヴォーグSTIの価格は、今のところ非公表。価格次第では、人気グレードになりそうな予感がする。

■スバル レヴォーグ価格
・1.6GT EyeSight　2,775,600円
・1.6GT EyeSight S-style　2,905,200円
・1.6GT-S EyeSight　3,056,400円
・2.0GT-S EyeSight　3,564,000円