日産エクストレイルハイブリッド試乗記・評価 静粛性&乗り心地、走行性能などガソリン車と比較すると格段にアップしたハイブリッド車
■総合性能の高いハイブリッドシステム
日産エクストレイルハイブリッドの1モーター2クラッチ方式のハイブリッドには、長所がいろいろある。燃費の絶対値ではトヨタのTHSに及ばないが、燃費や走り、静粛性などでバランスの取れたハイブリッドシステムといえるからだ。
搭載エンジンは、MR20DD型で108kW/207N・mのパワー&トルクを発生する。エンジンの動力性能自体はガソリン車とハイブリッド車で変わらない。ハイブリッド車には、30kW/160N・mを発生する電気モーターが追加される。システムとしては、138kWの出力を発生できるという。JC08モード燃費は4WD車でも20.0km/Lと大台に乗せる数値を得ている。
同じエンジンと書いたが、厳密に言うとハイブリッド化に向けてエンジンにはさまざまな改良が加えられている。電動ウォーターポンプや電動エアコンコンプレッサーの採用などがそれで、これによって補器用のベルトが廃止され、フリクションロスが低減されている。
■上手くEV走行させるにはテクニックが必要。頻繁にエンジンが停止し低燃費化。その切り替えが極めてスムース!
ハイブリッド用のリチウムイオン電池は、ラゲッジスペースの床下部分に搭載される。そのために、フラットな床面が確保されてはいるものの、荷室の床面がやや高くなっていて、これはやや難点といえる部分である。
また、ラゲッジスペースが防水仕様のウォッシャブルタイプではなく、ファブリックとされているのは、水洗いによる万一の感電事故などを防ぐためだという。タフギアを標榜するエクストレイルとしては、これもややマイナスとなる要素である。
エクストレイルハイブリッドは、まず発進時にモーターだけで静かに走り出す。日産の説明では時速60kmくらいまでモーターだけで走れるとのことだったが、ちょっとアクセルを踏み込むとエンジンがかかってしまう。交通の流れに乗っていこうとすると、もっと手前の時速50km以下でエンジンがかかると考えたほうが良いくらいの印象だった。
ただ、後方に他の車両がいない状態で、ジワっとアクセルを開けていく乗り方ができれば、モーターのみの走行でジワジワと60㎞/h近くまで加速することができる。やや混雑した道路状況などでは、運転手次第だが長い時間EV走行が可能となる。
エンジンがかかった後も、走行状態に応じてエンジンが停止するのが日産のハイブリッドシステムの特徴である。かなり頻繁にエンジンが停止し、高速クルージング中でもアクセルを抜くなどすれば、すぐにエンジンが停止する。エンジンを停止させる機会を多くし、停止時間を長くすることで、燃費を良くしているのがエクストレイルハイブリッドの特徴だ。
エンジンの停止や再始動が分かるのは、インパネ内に配置されたタコメーターを見ているからだ。メーターを見ていなければ分からないくらいにエンジンのオン/オフの切り替えはスムーズに行われる。エンジンが始動した後は、エンジン音が聞こえるので、エンジンを使って走っているのが分かる。
日産が最初にフーガハイブリッドを投入したときには、走行状態によって非常に大きなショックが感じられたりしたが、エクストレイルハイブリッドではそれが完全に解消されて滑らかな走りを実現している。
■ハイブリッド化されボディが強化。その結果、静粛性や乗り心地が大幅に向上!
ハイブリッド化による電池とモーターの搭載によって、車両重量はざっと70kgほど重くなったが、ハイブリッド車はそれ以上に動力性能の向上幅が大きい。なので、走りの良さはガソリン車を上回るものになる。エクストレイルのハイブリッド車は、ガソリン車でいえば従来の2.5L車に相当するくらいの動力性能を持つと考えたら良い。とくに、中速域からのレスポンスが良い。アクセルを踏むと、瞬時にモーターのトルクが加わってクルマをグイッと押し出す。全般的にアクセル操作に対してレスポンスが良いので、走っていて気持ちが良い。必要以上にアクセルを踏み込む必要もないので、運転も楽だ。
重量の増加や、あるいは電池を搭載するためのボディ剛性の強化などが影響し、乗り心地も良くなっている。全体としてはちょっと引き締まった感じの硬めの乗り心地なのだが、同時にとても快適な乗り心地も実現されている。この面ではガソリン車よりもハイブリッド車のほうが、確実に良くなっているといえる。クルマを軽くすることはとても大切なことだが、逆に重くなることで良くなる部分もある。
ブレーキには、協調回生ブレーキを採用することによる多少の違和感はないとはいえないが、全体としては滑らかなブレーキフィールであり、大きな不満を感じるほどではなかった。納得できる範囲内である。
日産エクストレイルハイブリッドの価格は、ガソリン車に比べてざっと40万円ほど高く、280万円台に達している。この価格差は、減税の適用を含めて考えても、とてもではないが燃費で埋められるものではない。エクストレイルハイブリッドは、走りの余裕と環境性能に注目して選ぶグレードである。
■日産エクストレイルハイブリッド価格
<2列シート>
・20S HYBRID“エマージェンシーブレーキパッケージ” 2,669,760円
・20X HYBRID“エマージェンシーブレーキパッケージ” 2,858,760円
●エクストレイルハイブリッド4WD価格
<2列シート>
・20S HYBRID“エマージェンシーブレーキパッケージ” 2,876,040円
・20X HYBRID“エマージェンシーブレーキ パッケージ” 3,065,040円
・20X HYBRID エクストリーマーX“エマージェンシーブレーキパッケージ” 3,270,240円
・20X HYBRID ブラックエクストリーマーX“エマージェンシーブレーキパッケージ” 3,294,000円
■日産エクストレイルハイブリッド燃費、スペックなど
定員[人]5人
代表グレード | 日産エクストレイル 20X HYBRIDエマージェンシーブレーキパッケージ 2WD |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,640×1,820×1,715mm |
車両重量[kg] | 1,580kg |
総排気量[cc] | 1,997cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 108(147) / 6000rpm |
エンジン最大トルク[N・m(㎏-m)/rpm] | 207(21.1) / 4400rpm |
モーター最高出力 | 30kW(41PS) |
システム全体[kw(ps)] | 138kW(188PS) |
ミッション | CVT |
JC08燃料消費率[km/L] | 20.6km/L |
価格 | 2,858,760円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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