写真映えしないBMW1シリーズのスタイリング?
BMWのエントリーモデルである1シリーズが、7年ぶりにフルモデルチェンジをし、早くも日本で発売が開始された。コンパクト・セグメントでは、唯一の後輪駆動は今回も継承。全車にアイドリングストップを装着。ツインスクロール・ターボチャージャー付1.6リッター直列4気筒エンジンを採用し、出力により116i(最高出力136PS、最大トルク22.4kgm)と120i(最高出力170PS、最大トルク25.5kgm)の2モデルが用意された。さらに「Sport」と「Style」のデザインを選択出来るようになった。
試乗会場は袖ヶ浦フォレスト・レースウェイで一周2.436km、コーナー数は14、メインスタンドの直線は400mのミニ・サーキットであり、1シリーズの実力を試すには持ってこいの場所である。
事前に写真で見た1シリーズのスタイリングは、いつものように印象が良くない。いつもと言うのは、実車に比べてBMWは写真写りが悪い例が多い。1シリーズも予想とおり、実車は良いのでガッカリしないで欲しい。
ホイルベースは従来モデルより30mmも長くなり全長は4.3mを大きく越えてしまったが、肥大した印象はなく、筋肉質の1シリーズのスタイルは継承している。私のように前モデルの1シリーズのスタイルが好きならニュー1シリーズも気に入るだろう。
エンジンにドラマがない? BMW1シリーズ
最初の試乗は「120i Sport」。タイヤは225/45R17にスポークホイールを装着し、オプションのMスポーツ・サスペンションが装備されていたので標準より15mm車高が低くカッコいい。スポーツシートが採用されている。インテリアは、赤色をテーマカラーとして、ステアリング・ホイールやインテリアトリムなどにアクセントとして配置されていて、スポーツ感が他の1シリーズより高くなっていると評価したい。
ダッシュボードには、8.8インチのディスプレイ(標準は6.5インチ、オプションのiDriveナビゲーション装着時)が鎮座し、3シリーズを越えた豪華装備である。電動シートのスイッチを操作し自分の身体に合わせ、シートベルトを装着し左側のスタート・スイッチを押すと静かにエンジンは目覚めた。8速オートマチック・トランスミッションのセレクトレバーをDレンジに入れてサーキットにコースイン。勢いよく行きたいが、生憎な事に試乗時は強い雨が降りコース上に水溜まりも出来ているヘビーウェットの状況。初めてのコース、初めてのクルマ、前もあまり見えないような状況であるので、最初はゆっくりとしたペースでコースとクルマを確認しながら試乗を始めた。
低回転のトルクは充分で1.6リッターとは思えない。エンジンの回転数が1500回転を越えるとモリモリとトルクが強くなり3000回転を越えればオーバー2リッターの速さで、123iを越えて125iと言っても過言でない。路面を選びながら徐々にペースを上げるがロールは少なく、スムーズにターンインする。このような悪条件の運転でも楽しくなってくる。オプションのバリアブル・スポーツ・ステアリングはクイックであり運転の楽しさを更に増す。ブリジストンのランフラットタイヤは排水性は良好でステアリング・インフォメーションも良い。センターコンソールのドライビング・パフォーマンス・コントロールのスイッチで「スポーツ・プラス」を選択すると、更にロールが減り、Dレンジのままでもより高回転のターボゾーンの美味しい回転を維持する。
少しオーバースピードでコーナーに入りアクセルをオンにすると、リヤがムズムズと外側に出そうになる。それ以上の動きは、DSCが動作しクルマは安定させるがDSCの介入は遅く、またクルマの動きが分かり易いので楽しく安全に楽しめる。
最初は危惧したヘビーウェットのサーキット走行であったが、120iの楽しさにすっかり魅了されてしまい、もっと長く運転をしていたいと思った。後輪駆動の楽しさに溢れた120iなのだが、あえて文句を言うと、トルクとパワーのあるエンジンなのだがエンジン・サウンドにドラマが無い。高回転迄エンジンを回しても、駆け抜ける喜びは感じない。
燃料を節約するECO PROモード
エンジンそのものは同じであり、チューンングを変えることで幅の広いバリエーションに対応するという意味では、お手軽なダウンサイジング化ともいえなくはない
サーキットでの楽しんだ後は、そのまま一般道を走った。乗り心地は「スポーツ」でも充分に良いが、「コンフォート」を選べばランフラットタイヤにも係わらずしっとりとした上級車の乗り心地であると評価したい。
周囲の流れに乗って走ると、走行中のエンジン回転は1500回転前後で、登り坂になっても軽くアクセルに力を入れるだけで2.5リッター級のトルクで坂を登っていく。「ECO PRO」モードも試してみた。これはエンジンの出力特性、ギヤのシフトタイミングだけでなくエアコンやシートヒーターの温度も制御し、燃料消費量を低減するモードである。タコメーター内にあるカラーディスプレイの表示も変わり、エコ運転に最適なアクセルゾーンをリアルタイムで示す。アクセル・レスポンスは鈍くなるがガマン出来ない、或いは遅くて危険になる状況ではないので通常走行であれば「ECO PRO」モードで燃料を節約して運転するのも良いだろう。
116と120の差は、微少? それよりも、選ぶのが楽しい豊富なバリエーション
次に試乗したのが「116i Sport」。基本的な装備は120iに準じるが、タイヤは205/55R16と一回り細いタイヤを装着。しかし、この16インチタイヤがいい。しっとりした乗り心地の120i Sportも良いが、このタイヤの軽快感は気持ち良く。私だったら17インチより16インチを選ぶ。ターボが効いた時の加速は、2.5リッター級の120iより劣っているが、必要にして充分。2リッター級の速さを持っている。120iとのパワーの差を感じるのはサーキットのような全力走行時だけで、一般道では同じエンジンであるので差を感じる事は少ない。
ニュー1シリーズは全ての項目で先代を大きく進化させながら車両価格は維持した。同サイズの他車に比べても、後輪駆動の楽しさや明らかに上の装備、質感、走行性能でリードしている。116iと120iでは標準装備品が両車で異なるので、オプションを選択すると意外と両車の価格差は小さい。
速いクルマが欲しい人は120iだが、それ以外の人は、自分の欲しい装備と価格を考慮して116iにするか120iを決めれば良いだろう。オプションリストとシート・カラー、豊富なボディ・カラー、魅力的なインテリア・トリムなどを眺めながら、自分の1シリーズを想像するのも楽しい。
代表グレード | BMW 1シリーズ 120i |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,335×1,765×1,440 |
車両重量[kg] | 1,420kg |
総排気量[cc] | 1,598cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 170ps(125kw)/4,800-6,450rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 25.5kg-m(250N・m)/1,500-4,500rpm |
ミッション | 8速AT |
10・15モード燃費[km/l] | 17.2km/l |
定員[人] | 5人 |
税込価格[万円] | 367.0万円 |
発売日 | 2011/9/22 |
レポート | 丸山和敏 |
写真 | 編集部 |
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