セダン、ワゴン、SUVのいいとこ取りがBMW3シリーズ グランツーリスモ
BMWは最近、モデルバリエーションの拡充に熱心で、2003年には13モデルのラインナップだったが、10年後の2013年には22モデルをラインナップするに至っている。毎年1車種ずつ新しいモデルを追加してきた形である。
そんな流れの中で、BMW3シリーズに新しくグランツーリスモ(GT)が追加された。すでに5シリーズにもグランツーリスモが設定されているが、3シリーズのグランツーリスモも同様に、セダンとワゴンとSUVの良いとこ取りをしたクルマという触れ込みである。
ボディタイプは5ドアハッチバックながら、流れるようなルーフラインはクーペを思わせるようなところがあり、ラゲッジスペースの広さはステーションワゴンを思わせる。さらに高めの全高がSUV的な感覚も感じさせる。
見た目はBMW3シリーズの一員であることを示しているが、グランツーリスモのボディはけっこう大きい。ツーリングと比較すると、ホイールベースが110mm延長され、ボディは200mmも長くなり、全高は50mm高く、全幅も30mm広くなっている。3シリーズに比べると完全にひと回り以上大きく、5シリーズとの中間というか、5シリーズに近いようなサイズである。
ホイールベースの延長は、後席の居住空間に端的に反映されていて、グランツーリスモの後席は3シリーズのセダンやツーリングに比べると格段に広い。現行モデルでは、3シリーズの後席空間もまずまずの広さを持つようになったが、グランツーリスモの後席は足が組めるような広さがある。
ラゲッジスペースも広々とした空間が確保され、ツーリングと同様に後席の背もたれが3分割式になって使いやすさを示すと同時に、容量自体も520Lとツーリングに比べて標準状態で25Lも大きくなっている。
ハッチゲートは、5シリーズのグランツーリスモが二通りの開き方をする凝った作りになっていたのと違って、一般的でシンプルな開き方になるが、大きな開口部でかさばる荷物の出し入れも容易といった感じだ。
多少車重がアップしたが、320iで十分なパワー
BMW3シリーズグランツーリスモには、3機種のエンジンが搭載されていて、エンジンに応じて320iグランツーリスモ、328iグランツーリスモ、335iグランツーリスモの3グレードが設定されている。それぞれに標準のほか、ラグジュアリー、モダン、スポーツ、Mスポーツが設定されるのは、3シリーズのセダンやツーリングと同様で、豊富なバリエーションを持つ。
グランツーリスモの性格を考えたら、320dブルーパフォーマンスの設定があっても良いように思うが、取り敢えず発売時点では設定されていない。
3機種のエンジンの動力性能は、それぞれ135kW/270N・m、180kW/350N・m、225kW/400N・mとなる。これは先に発売されている3シリーズのセダンやツーリングと変わらない。全車に電子制御8速ATが組み合わされている。
ボディが大きくなったことで、車両重量はやや重くなり、ツーリングに比べると大人一人分くらい重い。このため燃費もやや悪くなっている。328i同士で比べると、ツーリングが15.2km/Lなのに対し、グランツーリスモは14.7km/Lだ。ただ、重量区分の違いから、エコカー減税はツーリングが50%の軽減なのに対しグランツーリスモは免税扱いになる。
今回は、3機種のエンジンすべてに試乗した。ボディが重くなったことの影響はそれなりに出ているものの、320iの動力性能でもグランツーリスモのボディに対して負けている感じはない。低速域でのトルクが十分に出ているためだ。
セダンに比べると150kgくらいの重量差があるので、セダンの軽快さやスポーティさにはかなわない感じながら、320iでも十分に良く走る。ただ、BMWらしい走りということなら328iを選んだほうが良いかも知れない。
328iなら動力性能に余裕が生まれ、アクセルを踏み込んだときのパワーの伸びが良くなるからだ。さらに6気筒エンジンを搭載する335iになると、一段と滑らかな吹き上がりとパワフルな動力性能によって余裕の走りが楽しめる。
走りに室内空間など、ゆったりした味付けが好きな人向けのモデル
BMW3シリーズ グランツーリスモのエンジン動力性能よりも気になったのが、フットワークだ。ホイールベースが110mmを延長されたことが影響してか、BMWらしい軽快さが薄れたように感じられたからだ。重量配分も前後均等に近いもののやや後輪側が重くなっていて、これも走行感覚に影響を与えているようだ。ゆったりした走りを求めるユーザー向けの3シリーズと考えたら良いのかも知れない。
今回の試乗車は3車種とも19インチタイヤを履いていて、乗り心地は全体にやや硬めの印章を受けた。スタンダード仕様の17インチはともかくとして、それ以外のグレードに標準の18インチタイヤで十分ではないかと思う。
BMW3シリーズグランツーリスモは、320iツーリングに比べると、320iグランツーリスモの価格は23万円ほど高い設定だ。ツーリングとは異なる使い勝手と、車高が高いことで乗降性の良さや、後席の居住空間が欲しいユーザー向けのゆとりある3シリーズである。
BMW3シリーズ グランツーリスモ価格 スペック 装備など
■BMW3シリーズグランツーリスモ価格
320iグランツーリスモ ¥4,940,000
320iグランツーリスモ Sport / Modern / Luxury ¥5,140,000
320iグランツーリスモM Sport ¥5,430,000
328iグランツーリスモ ¥5,990,000
328iグランツーリスモ Sport / Modern / Luxury ¥6,190,000
328iグランツーリスモM Sport ¥6,480,000
335iグランツーリスモ ¥7,300,000
335iグランツーリスモ Sport / Modern / Luxury ¥7,500,000
335i グランツーリスモM Sport ¥7,760,000
・320i 2.0リッター直列4気筒DOHC BMWツインパワー・ターボ・ ガソリン・エンジン
135kW(184ps)/5,000rpm 270Nm(27.5kgm)/1,250-4,500rpm
・328i 2.0リッター直列4気筒DOHC BMWツインパワー・ターボ・ガソリン・エンジン
180kW(245ps)/5,000rpm 350Nm(35.7kgm)/1,250-4,800rpm
・3.0リッター直列6気筒DOHC BMWツインパワー・ターボ・ガソリン・エンジン
225kW(306ps)/5,800rpm 400Nm(40.8kgm)/1,200-5,000rpm
代表グレード | BMW320iグランツーリスモ |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,825×1,830×1,510mm |
ホイールベース[mm] | 2,920mm |
トレッド前/後[mm] | 1,540/1,585mm |
車両重量[kg] | 1,660kg |
総排気量[cc] | 1,997cc |
エンジン最高出力[Kw(ps)/rpm] | 135〔184〕/5,000/6,500rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 270〔27.5〕/1,250-4,500rpm |
ミッション | 8速AT |
タイヤサイズ | 225/55R17 |
燃費 | JC08モード 15.0km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 4,940,000円 |
燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
【関連記事】
- BMW 3シリーズ グランツーリスモ新車情報・購入ガイド 居住性をアップした4ドアクーペ
- BMW 3シリーズ ツーリング新車情報・購入ガイド 320i xDriveツーリングおよび、335iツーリングを追加
- BMW 320iツーリング新車情報/購入ガイド 最大のライバル320dブルーパフォーマンスがオススメか?
- BMW ActiveHybrid 3(アクティブハイブリッド3)新車試乗評価 高価なだけあり、走りや燃費に妥協なし!
- BMW3シリーズ新車情報、試乗評価一覧
- BMW320d(クリーンディーゼル)長期レポート一覧
- BMW新車情報・購入ガイド一覧
- BMW新車試乗評価一覧
【オススメ記事】
- フォルクスワーゲン ポロ新車情報・購入ガイド ついに全長4m越えに! 3ナンバー化した6代目新型ポロは、1.0L直3ターボを搭載【ニュース・トピックス】
- 三菱エクリプスクロス試乗記・評価 さすが4WDの三菱! 豪快にリヤタイヤを振りだすような走りも楽しめる絶妙なS-AWCに脱帽!【レビュー】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.6】 日差リーフの実電費チェック! (一般道編)コツコツ電費を稼ぐe-Pedal【評論家ブログ : 日産リーフ】
- メルセデス・ベンツSクラス新車情報・購入ガイド 約20年振りの直6エンジンに、ISGを組みあわせた次世代エンジンを搭載!【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.5】 日差リーフの実電費チェック! (高速道路編)実電費アップは、こだわりの空力性能にあり!【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 三菱エクリプスクロス新車情報・購入ガイド スタイルに走り、装備とスキ無しの完成度を誇るコンパクトSUV。ガソリン車だけしかないことが、唯一の弱点?【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.4】 30歳代クルマ好き女性、初めての電気自動車! その評価は?【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 日産セレナe-POWER新車情報・購入ガイド ついに、シリーズハイブリッドシステムを搭載したセレナ! 5ナンバーミニバン、ハイブリッド車戦争へ加速!!【ニュース・トピックス】
- マツダCX-8試乗記・評価 際立つ運転のしやすさ! こだわりの「躍度」を雪上でチェック!【レビュー】
- 日産テラ(TERRA)新車情報・購入ガイド ナバラベースのSUV中国でデビュー! 日本への導入は?【ニュース・トピックス】
【関連記事】
- BMW 3シリーズ&ツーリング新車情報・購入ガイド アレが無くなった! カーブド・ディスプレイ装備で近未来感大幅アップ!【BMW】
- BMW M340i xDrive動画・評価 いいトコ取りのスポーツセダン【BLOG】
- BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.10 「アクセル踏んだらドーン!」初めてのPHEV、330e体験レポート【BLOG】
- BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.9 走りたい欲求を超刺激!「320d xDrive ツーリング M Sport」【BLOG】
- BMW 3シリーズ(G20型)長期評価レポート vol.8 優れた走る楽しさと環境性能を両立したPHEV 330eを試す!【BLOG】
- トヨタRAV4、今年のナンバー1に決定! 2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー【イベント情報】
- 軽自動車3台がランクイン! 2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー10 ベストカー決定 !!【イベント情報】
- BMW 3シリーズ試乗記・評価 期待を裏切らないスポーツセダン【BMW】
- BMW 3シリーズ新車情報・購入ガイド クラス最強のスポーツセダンへ! 買い得感もあり【BMW】
- BMW3シリーズ新車情報・購入ガイド 新世代クリーンディーゼルを搭載! 迫力のブラック キドニーグリルを装備した限定車「Celebration Edition “Style Edge”」を発売! [CORISM]【BMW】
【オススメ記事】
- ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV【ホンダ】
- 日産エクストレイル(T33型)vs トヨタ ハリアーハイブリッド(80系)徹底比較!【対決】
- 日産フェアレディZ新車情報・購入ガイド 2025年モデルが登場! 納期は? 転売ヤー対策は?【日産】
- BMW M2クーペ(G87)試乗記・評価 「サーキットで乗ってみたい!」クルマ好き女子が試乗!【BMW】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、栄えある10ベストカーが決定! 今年のナンバー1は、どのクルマに!?【イベント】
- 2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー、ノミネート車31台が決定!【イベント】
- マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV【マツダ】
- 三菱 アウトランダーPHEV新車情報・購入ガイド 大幅改良&値上げ。それでも、コスパ高し!!【三菱】
- スズキ フロンクス試乗記・評価 価格、燃費値を追加。欧州プレミアムコンパクトに近い上質感【スズキ】
- 日産セレナAUTECH SPORTS SPEC新車情報・購入ガイド 走りの質感を大幅向上した特別なモデル【日産】
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!