ジープなのにFFのワケとは? 戦略的価格と割り切ったグレード【Jeep Compass(ジープ・コンパス)試乗評価】
ジープなのにFFのワケとは? 戦略的価格と割り切ったグレード【Jeep Compass(ジープ・コンパス)試乗評価】の目次
ジープなのにFF(前輪駆動)車の謎とは?
ジープって言えば、4WDだゼェ。ワイルドだろぅ。そんなイメージは、もう古いらしい。ジープブランドに新たに加わったコンパスは、FF車(前輪駆動車)のみの設定だ。クライスラーによると、ジープに必要なのはタフなオフロード車としてのイメージであって、4WD機能ではないそうだ。ジープユーザーの多くが、4WD機能は必要ないと答えているそうだ。また、価格帯が違うがヨーロッパの4WDといえば、レンジローバー。同様の時期に導入されたイヴォークは、こだわりの4WDオンリーの設定。考え方は明確に分かれている。
個人的な考え方は、今時古いと言われようが、SUVなら4WDに乗らなきゃ意味無い派である。魂を無くしたのかジープぅーー! と、一人で心の中で叫んでみた。少々冷静になってみれば、コンパスはいかにも4WDなスタイルをしたパトリオットと姉妹車である。エクステリア以外は、ほとんどパトリオットだ。そんなに4WDと言うなら、よりワイルドなパトリオットのリミテッドを買ってくれってことなのだろう。まぁ、パトリオットにもFF車は設定されているけど。なおさら、都会的なスタイリッシュ派であるコンパスが4WDである意味あるの? と、問われれば「ですよねぇ〜」と答えるしかない現実がある。
スタイルで、まず目を引くのがジープ伝統の7本縦型スロットグリル。これで、ジープブランドの一員であることを明確にしている。スロットグリルの縦方向の長さもパトリオットに比べると短く、顔全体を小さくまとめることで、軽快さをアピールしている。ヘッドライトは、クラスが上のグランドチェロキーのものを流用。高級感ある雰囲気に仕上げている。都内のクルマの群れの中でも、クリーンなヘッドライトとキラキラ個性的に光って見えるスロットグリルの存在感は抜群。インパクト勝負のアメ車が多い中、数少ない品のあるアメ車に感じる。
Bピラーはブラックアウト処理され、ウインドウ部分の開放感とスタイリッシュさを演出。Dピラーにも角度を付け、垂直に近いパトリオットと明確な違いを見せている。同じプラットフォームをベースとしながらも、よくここまでキャラクターチェンジできたものだと感心してしまうと評価していい。
外観は大きく違うが、インテリアはパトリオットとほぼ同じ。パトリオットで定評を得た60:40分割可倒式リアシートには、リクライニング機能が装備されており、フレキシビリティと快適性が高められている。
助手席のシートバックを前に倒すと。テーブル面として利用できたり、スキー板などの長尺物の積載に便利な可倒式助手席も採用。意外と小技が効いていたりするのも特徴だ。
もうひと工夫欲しいエンジン
試乗する前に、エンジンのスペックを確認すると、最高出力 115kW(156ps)/6,300rpm、最大トルク190N・m(19.4 kg・m)/5,100 rpmを発生。最近のトレンドは、いかに低回転でトルクを出し、早めにシフトアップし、高いギヤを使い燃費をアップさせる手法がとられている。
しかし、この2L直4エンジンの最大トルクは5,100回転で発生。今時、数少ない高回転型だ。そのため燃費は良くない。JC08モード燃費で10.5km/Lという数値になっている。最新のマツダCX-5の燃費が16.0km/Lである。スペック的には、まだまだ努力が必要なエンジンといえる。
低速トルクが細いことは、スペックから分かっていたので、走りにはあまり期待はしていなかった。ところが、アクセルを軽く踏み込むとグイっとクルマが予想以上に元気よく走りだした。組み合わされるジヤトコ製CVTは、まずエンジンの回転が上がる少し古いタイプのようで、イッキに回転を上げてトルクを出す。そのため、意外と元気がよく感じると評価できる。2Lエンジンなので、頭打ち感も早く、元気よくスピードが乗る速度域は80km/hくらいまでといったところ。
高速道路などでアクセルを踏み込むと、CVTゆえエンジンの回転が先に上がりガーガーする感じがあるが、一般道などでは、無駄にアクセルさえ踏み込まなければ、低回転域でスピードを上げていくのでエンジン音は気にならなかった。
低価格戦略で好調のジープ。でも、まだ高い。
安全面では、ABS、ESP(横滑り防止装置)、フロント/リア サイドカーテンエアバッグなどが標準装備されており、一部の国産車のようにオプションではなく、すべての顧客に高いレベルの安全性能を提供しているのは好感がもてる。
タイヤ&ホイールは215/55R18。少々ゴツゴツ感があるものの、タイヤそのものというよりダンパーのフリクションが大きいイメージ。もう少し距離を走れば、多少乗り心地がよくなるような気がする。
クルマの動きは、全体的にゆったりとしている。最近のSUVの中でも、ゆったり系だ。最近は、キュンキュンと曲がるスポーティ系が流行りだが、個人的にはゆったり系が好き。大きなボディでスポーティだと、常に動きに対して敏感に反応しなくてはならないので、気が休まらず疲れてしまうからだ。そういう意味では、あまりスピードを出して走るタイプの人には向かないだろう。
ドライビングポジションも、乗用車と比べると、少々高い程度で国産ミニバンよりも低い印象。セダンやワゴン、コンパクトカーから乗り換えても、すぐに慣れるだろう。また、意外と左右の見切りもいいので、全幅が1810mmもあるのだが、運転しやすいのも良かった。
このジープ コンパスの価格は298万円。レザーシートや運転席パワーシートを装備して300万円を切る価格は、輸入車としてはリーズナブル。ただし、アメリカはクルマが安い。単純比較するとアメリカでの価格は24,295ドルと表示される。1ドル80.5円で計算すると約196万円になる。まだ、ジープは良心的で、エクスプローラーのように左ハンドルのみではなく、右ハンドル仕様を用意しコストはかけている。
アメリカの自動車メーカーは、TPPで軽自動車規格を廃止しろと圧力をかける前に、日本で売れるクルマの開発や価格設定、仕様をもっと見直すことが必要だ。実際、パトリオットのエントリーモデルは258万円という価格設定で好調だという。今後のジープの価格戦略に、さらに期待は高まる。
<ジープ・コンパス価格>
・Jeep Compass Limited :¥2,980,000
・Jeep Compass Limited (パワー ガラスサンルーフ付1):¥3,080,000
代表グレード | Jeep Compass Limited |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,460×1,810×1,665mm |
ホイールベース[mm] | 2,635mm |
車両重量[kg] | 1,450kg |
総排気量[cc] | 1998cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 156PS(115Kw)/6300rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 190(19.4)/5,100rpm |
ミッション | CVT |
タイヤサイズ | 215/55R18 |
JC08モード燃費 | 10.5km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 2,980,000円 |
発売日 | 2012/3/3 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部 |
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