トヨタ アルファード/ヴェルファイア(ガソリン車)試乗記・評価 徹底したマーケットイン視点で作り込まれた究極の日本人的視点のミニバン
強面フェイスの分かりやすいデザインが人気
上級ミニバン 市場を席巻するトヨタアルファード /ヴェルファイア がフルモデルチェンジを受けた。上級ミニバンの市場は、元々は日産のエルグランドが切り開いたものだが、トヨタは初代アルファードの登場で首位の座を奪取し、2代目ではヴェルファイアを分離独立させて、これも大ヒットした。現在では、競合車を圧倒して、ほとんど市場を独占するような形になっている。
新型アルファード/ヴェルファイアの外観デザインは、それぞれに個性的な顔つきのモデルとされている。いずれも威風堂々といった感じの迫力ある外観を作っている。気弱な性格の人では、これだけ強面なデザインのクルマは、気恥ずかしくて買えないようなデザインだ。しかし、世の中にはこれが良いと考える人がたくさんいて、トヨタはそれを分かっているから、このようなデザインを採用している。
旧型モデルでは、アルファードよりもヴェルファイアのほうが、顔つきの迫力というか悪そう感というかが強かったが、今回のモデルでは逆にアルファードのほうが迫力のある顔になっている。ヴェルファイアの大きく広がるメッキグリルもそれなりの迫力だが、アルファードのほうが分かりやすい迫力である。
インテリアは、外観以上に高そう感、偉そう感が表現されている。本革と木目調コンビしたステアリングホイールやシート表皮、インパネ、ドアトリムなど、高級感が上手に演出されている。木目調パネルはグレードによって3種類のカラーが用意される。
LEDのルーフカラーイルミネーションは、16色で4段階の調光を可能とし、インテリアの雰囲気を盛り上げている。またメーターパネルは、4.2インチの液晶画面が配置され、さまざまな情報が表示されるなど、機能的にも優れた仕様をそえている。
日産エルグランドの失敗から学んだボディサイズ
新型アルファード/ヴェルファイアのボディサイズは、全長や全幅、ホイールベースが拡大して、全高がわずかに低くなったが、全体的なパッケージングは従来と変わらない。思い切り背の高いミニバンである。わずかに全高を低くしているものの、高めに位置する運転席から周囲見下ろすことが、アルファード/ヴェルファイアがウケている点であるため、基本的にはそれを維持している。
ライバル車だったエルグランド が、北米のクエストと姉妹車にした関係で全高を大きく下げた結果、あまり売れないミニバンになったことも、アルファード/ヴェルファイアで高めの全高が維持されることにつながったのだろう。
エルグランドは、全高を下げたためにアルファード/ヴェルファイアのライバル車ではなくなってしまったし、同様に全高を抑えたパッケージングが特徴だったホンダ のエリシオン も、オデッセイ に吸収される形でモデルそのものがなくなってしまった。結果として、上級ミニバン市場で一人勝ち状態にあるのがアルファード/ヴェルファイアである。
アルファード/ヴェルファイアは、こうした徹底的にマーケットイン視点で作り込まれたミニバン。ある意味、日本人の好みを凝縮したモデルといえる。売れれば勝だが、クルマはとても高額な商品であることを考えれば、トヨタが考える日本のミニバンはこうあるべきというプロダクトアウト的技術やデザイン、装備などがもう少しあったらと感じる。
旧型だが、3.5Lは余裕たっぷり。2.5Lは優れたCVTの効果もあり2トンを超えるボディでもスムースな走りを実現!
室内は、7人乗り仕様と8人乗り仕様が設定されている。7人乗りを中心にしたバリエーション設定で、8人乗りは例外的に用意されるような形になっている。やはり2列目に独立したキャプテンシートを持つ7人乗りが豪華な仕様となる。
エグゼクティブラウンジシートを筆頭に、エグゼクティブパワーシート、リラックスキャプテンシートが用意され、いずれもラグジュアリーさとロングスライドなど、アルファード/ヴェルファイアならではの仕様が用意される。8人乗りの2列目には6:4分割チップアップシートが設定されている。
アルファード/ヴェルファイアの車両重量は相当に重く、3.5L車は2t超、2.5L車2tに近い重量がある。これだけの重量を走らせるのは用意ではないが、従来のモデルからキャリーオーバーされた3.5Lエンジンなら余裕十分の実力でぐいぐい引っ張っていく感じだし、ベースエンジンとなる2.5でも必要十分な性能を備えている。
新型のアルファード/ヴェルファイアで売れ筋になるのは、2.5Lエンジンの搭載車。このエンジンを搭載したモデルは、動力性能の数値は最も低いものの、実際に走らせて物足りなさを感じるシーンは特になかった。もちろん3.5Lエンジンほどの余裕は感じられないものの、日常シーンでは市街地走行から高速クルージングまで過不足なくこなせるエンジンだと思う。
乗り心地の向上も新型アルファード/ヴェルファイアの特徴となる部分だ。後輪のサスペンションがダブルウィッシュボーン式に変更されたことで、従来に比べると乗り心地が格段に良くなっていた。
また、操縦安定性の向上もポイントで、わずか全高を下げると同時に重心高を低くし、しかも前側の重心をより低くすることでコーナーでの安定性を高めている。アイポイントが高いので運転していると、コーナーでのロールはそれなりに感じられる。ロールそのものは、穏やか感じで、従来に比べるとロール量自体も抑えられている。
高級ミニバンなのに安全装備は物足りない! トヨタ セーフティセンスPが装着された後が買い時だ!
新型アルファード/ヴェルファイアで物足りなかったのは、安全装備だ。今回のモデルでは、シースルービュー機能を備えたパノラミックビューモニターなど、新しい安全装備が採用されるなど、進化した部分も多々あるのだが、肝心のプリクラッシュセーフティシステムが物足りない。従来からのミリ波レーダー方式にとどまる上に、レーダークルーズコントロールと合わせ、最上級グレードのエグゼクティブラウンジだけに標準装備でほかのグレードにはオプション設定にとどまっているからだ。
トヨタは昨年、ミリ波レーダーとカメラを組み合わせた最新のトヨタセーフティセンスP(TSS-P)を発表しているのに、それが採用されなかった。採用された従来からのプリクラッシュセーフティシステムは、人間を見分けられないのが欠点である。恐らくは1〜2年のうちにマイナーチェンジでTSS-Pが搭載されることになるから、それまで待つのもひとつの方法である。
価格は「小幅な」引き上げと説明されている。でも本体価格自体が相当に高いクルマである上に、多くのグレードでカーナビがオプション設定とされていて、これが50万〜70万円と極めて高い設定である。単にカーナビだけでなく、いろいろな機能や仕様が付加されているためだが、いずれにしても相当に多くの予算が必要になるのは間違いない。
トヨタ ヴェルファイア(VELLFIRE)/アルファード(ALPHARD)価格
■トヨタ ヴェルファイア/ヴェルファイア ハイブリッド価格
●2.5L FF車
・X 8人乗り 3,197,782円
・Z 7人乗り 3,578,727円 8人乗り 3,537,491円“A エディション” 7人乗り3,754,473円 “G エディション” 7人乗り 4,173,709円
・V 7人乗り 3,995,018円 8人乗り 3,953,782円
●3.5L FF車
・ZA 7人乗り 4,145,237円 “G エディション” 7人乗り 4,585,091円
・VL 7人乗り 4,842,327円
・Executive Lounge 7人乗り 6,522,218円
●ハイブリッド車
・X 7人乗り 4,155,055円 8人乗り 4,113,818円
・V 7人乗り 4,775,563円 “L エディション”7人乗り 5,356,800円
・ZR 7人乗り 4,919,891円 “G エディション”7 人乗り 5,501,127円
・Executive Lounge 7人乗り 7,036,691円
■トヨタ アルファード/アルファード ハイブリッド価格
●2.5L FF車
・X 8人乗り 3,197,782円
・S 7人乗り 3,578,727円 8人乗り 3,537,491円 “A パッケージ” 7人乗り 3,754,473円 “C パッケージ” 7人乗り 4,173,709円
・G 7人乗り 3,995,018円 8人乗り 3,953,782円
●3.5L FF車
・SA 7人乗り 4,145,237円 “C パッケージ” 7人乗り 4,585,091円
・GF 7人乗り 4,842,327円
・Executive Lounge 7人乗り 6,522,218円
●ハイブリッド車
・X 7人乗り 4,155,055円 8人乗り 4,113,818円
・G 7人乗り 4,775,563円 “F パッケージ” 7人乗り 5,356,800円
・SR 7人乗り 4,919,891円 “C パッケージ” 7人乗り 5,501,127円
・Executive Lounge 7人乗り 7,036,691円
トヨタ ヴェルファイア(VELLFIRE)/アルファード(ALPHARD)燃費、スペックなど
定員[人]7人
代表グレード | トヨタ ヴェルファイアZ Gエディション |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,935×1,850×1,880mm |
ホイールベース[mm] | 3,000mm |
車両重量[kg] | 2,010kg |
総排気量[cc] | 2.493cc |
室内長×幅×高[mm] | 3,210×1,590×1,400mm |
最高出力Kw[ps]/rpm | 134(182)/6,000 |
最大トルクNm[kg-m]/rpm | 235(24.0)/4,100 |
JC08燃料消費率[km/L] | 12.4km/L |
価格 | 4,173,709円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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